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あまちゃん…de妄想 ③
アキとユイは
スキゾ VS パラノ…?
私が『あまちゃん』にこだわる理由のひとつに、主人公である天野アキの性格がよくわからないから、というものがある。
いや、本当は「よくわからない」ということすらわからなかった。
でも、だんだん何がわからなかったのかが、見えてきた。
のん(能年玲奈)さんが演じたアキちゃんは、とても可愛い。
可愛いけれど、何を考えているのかよく分かりにくい…
むしろ足立ユイの方が分かりやすい。
「東京行って、アイドルになる」
という明確な目標。
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アイドル全盛時代は過ぎていたみたいだが、方向性が直線的でハッキリしている。
それは「アイドル需要を供給する役割を担う」…という恐るべく覚めた自信に裏打ちされている。
ところがアキの場合は、方向性や最終目標が読めない。
悪く言えば、思いつきというか、何でも手当たり次第、という印象すらあるが、アキの決めぜりふのひとつに
やってみなきゃわかんない
というのがあって、ドラマの中で何度か出てくる。
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アキの瞬発的な行動力というのは、この台詞とセットになっているようだ。
やってみなきゃわかんない
それは、自分自身を鼓舞するために言っているかのようだ。
以前の〝弱気だった自分〟に戻ってしまわないように、弱気の虫が顔を出してくる前に〝思い付いたら行動を起こそう〟としているようにも見える。
兵は拙速を尊ぶ…(孫子)なのか?
ユイとアキ、このふたりの性格の対比自体が、ドラマに意図されていたのかどうかはわからない。
この考察も私の悪いクセ…、パラノイア(妄想癖)のひとつだ。
「東京行ってアイドルになるの」
と呟くユイを、アキは聞こえないフリを装ってシカトした。
しかし、次の瞬間
トンネルに向かって叫ぶユイ
アイドルになりた~い!!
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パ、パラノイア(偏執狂)…?!
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ドえらいヤツと親友になってしまった!
と、アキは一瞬引いたかもしれない…
しかし、トンネルに消えてゆく、ユイが乗ったディーゼルカーを見送りながら
「カッケー」と、つぶやくアキ
アキはそこで自分の〝路線変更〟を考えたかどうかはわからないが、やがて海女や潜水士から、ユイの〝アイドル路線〟に乗り換えてゆくのだ。
「そんなことは、やらなくてもわかってるよ」と、理屈で考える観念的なユイに対して、「やってみなけりゃわからない」という行動主義のアキは、ユイ路線に参戦する…というよりも、はからずも独りでアイドルを目指す〝孤独な旅〟が始まるのだ。
それは「行動主義」というよりも、何にでも飛びつく…、何かに飛びついて、動き続けなければ止まってしまう。以前の動かない自分には、戻りたくないから…
ひたすらこぎ続ける自転車のように…
アキの言った「帰りたくない」とは、東京に帰りたくないのではなく「以前の弱い自分には、戻りたくない…」という意味だったのかもしれない。
だから、強くなったアキは、再びトウキョウに挑戦するのだ。
ところで、ユイがひとつの目標に固執するパラノ的ならば、生き方の方向性すら読めないランダムな動きのアキは、スキゾ的と言えるだろうか?
上記、『哲学の練習帳』さんのNOTE記事『パラノ的感性とスキゾ的感性』より、引用の許可をいただいた。
以下引用
「パラノ」と「スキゾ」というかつて一斉を風靡した言葉あります。この用語は、ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの共著「アンチ・オイエディプス」のなかで用いられ、これをバブル直前の1984年、浅田彰氏が「逃走論」の中で紹介したことがきっかけで、やたらと流行りだし、その年の流行語大賞の銅賞にも選ばれました。
引用おわり
たしかに昔、『スキゾ』という流行語があったのは記憶にあるが、当時はドゥルーズ、ガタリの名前すら知らなかった。
こういう混沌とした時代こそ、スキゾ的な考え方は、役に立ちそうな気がするのだ。
以前、東京と北三陸、アキとユイの関係を似たような角度で見たことがあった。
それは、ニーチェの『悲劇の誕生』のなかに現れる、アポロンとディオニソスの関係だった。
ノマディズムや、スキゾとパラノの関係は、ディオニソスとアポロンと相関関係にあるようにも思えるし
ドゥルーズ&ガタリの『アンチ・オイエディプス』は、親子関係や、その呪縛を解く鍵になるかもしれない。
『あまちゃん』を題材に、いろいろ掘り下げる妄想(パラノイア)もオモロいのだ…
トップ画像は
観光協会がある…?久慈駅前デパート
やん(矢野達也)さん
鉄印帳旅(あまちゃん) #236 より