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実食と安心感


私は数年前から、カップスターに浮気している。
思い返すと、カップラーメンといえばほぼ日清のカップヌードル一択だと思っていたし、もし「好きなカップラーメンは?」と聞かれたら、きっと「カップヌードルのシーフードのやつ」と答えていたし、実際にカップヌードルミュージアムに行ってオリジナルのカップヌードルを作り、空気がパンパンに詰まった例の袋に入れて持ち帰ったこともあった。
そんな風に、カップヌードルに対して自分なりに愛情を注いでいた私が、ここ数年でカップヌードルに代わって専らカップスターを選択するようになってしまった。

このカップ麺の乗り換えの理由が、数年前から始まったカップスター/和ラーの乃木坂46との大規模タイアップであることは、私が乃木坂ファンであることを踏まえると自明である。テレビCMの放送に加え、YouTubeやInstagram等の媒体でも大々的に展開されたステキPRコンテンツ群の波状攻撃によって、まんまとサンヨー食品の掌の上で踊らされてしまった。

様々な媒体でタイアップが展開されている中で、私は特にYouTubeのサッポロ一番公式チャンネルでの映像コンテンツに魅了されている。
乃木坂46 1期生の齋藤飛鳥が後輩の4期生たちを引率して各地方の郷土料理をめぐる和ラーのスペシャルムービー「あすさんぽ」や、“そこにいる”乃木坂46メンバーを一人称視点で味わうことができる“帰ってきた”人気シリーズ「ウチの彼女は、最高かよ!」、私たちの日々の暮らしにそっと寄り添ってくれるようなカップスターすすり映像「そのとき、カップスター」などなど、コンテンツが潤沢に供給されておりアソートパックのようになっているため観ていて飽きることがないのだが、中でも私は、シェアハウス・ノギ荘で繰り広げられる“カップスターコメディ”「乃木坂毎月劇場」と、その続編である広告会社・ノギアドを舞台とした“カップスターコメディ”「しゃべる奴らは、ハラが減る。」が大好きだ。乃木坂46×東京03という組み合わせの“どこかの日常"感溢れる演技を噛みしめながら、ゆったりと笑って観ていることができるシリーズで、以前、気分が下がっていたときに公開分を一気に見返して元気を貰っていた。

カップスターコメディの、動画全体が穏やかさで包まれているような雰囲気が観ていてとにかく幸せな気持ちになれる。
たとえコント内で角田さんが声を荒げていても、“怖い”といった感情ではなく“面白い”や“微笑ましい”といった感情が先行するし、演技経験が豊富なメンバーに混じった中、アドリブパートで素の感じが見え隠れするような遠藤さくらちゃんもとっても愛らしい。

カップスターコメディは、基本的に前半のコントパートと後半の実食フリートークパートに分かれており、前半パートで心地良いシットコムを堪能した後に、後半パートで乃木坂46と東京03がカップスターを食べながらその味やコントの感想を語り合う様子を観て愉悦することができるような構成をとっているのだが、私はこの構成がとても好きで、さらに、後半の実食フリートークパートで人一倍ほっこりしていると感じる。

コント終わりの乃木坂46と東京03が、カップスターをお供に余韻に浸りながら仲睦まじく談笑している、それだけで十分ほっこりするに値すると思うのだが、それに加えて、「ノギ荘/ノギアドでの出来事は全てフィクションで、乃木坂46も東京03も現実の世界にいる」という当然の事実を確認できたことでさらにほっこりしている自分がいることに気付いた。
画面の中にいる乃木坂46や東京03を“ノギ荘の住人/ノギアドの社員”と認識している状態から、“私たちが今いる場所と地続きのどこかにいる乃木坂46(アイドル)や東京03(芸人)”と認識している状態に移ることで自分の中で緊張と緩和が起こり、本来実食フリートークに期待されているであろう量の何倍もの“ほっこり効果”を勝手に感じているのではないかと思った。
そして、このことは私が小説よりもエッセイを、コントよりも漫才を、ドラマよりもバラエティを好む傾向にあることにも確実に繋がっていると思った。もちろん、物語に入り込みその世界観を堪能するのも楽しいことではあると思っているのだが、ある種の安心感を伴うような「リアル」なコンテンツが自分には合っているのかな?と思う。

本来、実食フリートークは動画の締めとして商品の宣伝を兼ねたコントのアフタートークをするために設けられた時間だと思うのだが、私にとってその宣伝効果は絶大で、欠かすことができないものになっている。
(また、ある程度それぞれのキャラクター性に合わせた台本になっているため、アフタートークによってコントの世界観を損なってしまうようなことも起こっていない)

先日、たまたま好きなCMについて考える機会があったのだが、そこで私が思いついたのは「Close to you」のカバーが使用されたグリコのCMや、薄暗い部屋でチル系の音楽をバックにただ漫画を読んでいる漫画アプリの広告だった。私一人に限ったことではないとは思うが、無駄に騒がしい広告よりも、落ち着いた雰囲気で心のすき間にうまくフィットしてくれるような広告が好きだと感じる。

ブルーな気分の人がその広告をたまたま見かけた際に、その人の沈んでいた気持ちをほんのりと浮つかせ、あれよあれよという間に実食に向かわせてしまうようなものが良い広告なのではないか、とカップスターコメディを観て思った。


〜余談〜
カップスターコメディのエンディング曲は、どちらのシリーズにおいても大沢伸一が手掛けた齋藤飛鳥と遠藤さくらのハミング曲なのだが、穏やかな雰囲気で本編との相性も良く、私がカップスターコメディシリーズを好きな理由のひとつとなっている。ラララ〜。


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