私が「デニール」の意味を知ったきっかけ
とある水曜日の夜、「乃木坂46のオールナイトニッポン」を聴いていると、ゲスト出演していた乃木坂46メンバーの早川聖来さんが、
「kiki vivi lilyで、『80denier』。」
と可愛らしい声で曲紹介をしていた。
癒される声だなぁ〜などと呑気に思いながらも、初めて聞いたアーティスト名&曲名に私は少し困惑して、
「ききびび…?一体どんなアーティストなんだろう…?」
「デニール…デニールは確かタイツの単位長さ当たりのあみあみの数、的なやつ…?」
「タイツを歌に落とし込む…どんな風に…?」
といった具合に、不安げな3点リーダー疑問符が次々と脳内に浮上してきた。
しかし、曲が始まりキキビビリリーが歌い出すと、今度は私の頭の中に
「甘い歌声に心地良いトラック…良い…」
「デニールを恋心に喩えたおもしろい歌…」
「これは好きな曲に出会えたぞ…」
と、とろけ絶賛3点リーダーが充満していった。
その後、私はYouTubeやApple Musicで「キキビビリリー」と検索して、彼女の他の作品をチェックするようになった。過去のインタビュー記事なんかも読んだりした。kiki vivi lilyの音楽にめでたくハマってしまったのである。
このように、私の場合、自分が知らないアーティストに出会い、能動的に楽曲を聴くようになる(=ハマる)きっかけは、好きな芸能人(特にアイドル)のラジオであることが多い。実際、The 1975を聴くようになったきっかけはあの人のラジオだし、Lolo zouaïを聴くようになったきっかけはあの人のラジオだし…
内向的な性格が音楽の聴き方にも反映された結果、同じアーティストの曲を繰り返し聴いてしまいがちな私は、放っておけばじわじわと狭まっていってしまいかねない自分の音楽体験の幅を何とかして広げていかねばと常に葛藤している。もちろん、特定のアーティストだけを聴くというのも一つの立派な「聴き方」だとは思うのだが、心のどこかで、様々な音楽を気負わずにムシャムシャ聴けるような人への憧れを抱いているのだ(ないものねだりの類いの面倒くさい感情である)。
何も考えず画面をタップするだけで簡単に色んな人の音楽に触れられる時代なのに、エイヤと思い切ることができず、画面の前でもたついてしまう。アーティストに対して「はじめまして」と言う際に、一定のエネルギーを消費して壁を越えないといけないタイプの人間なのである(これはテレビやラジオ、YouTube等においても共通する悩みである)。
そこで有効だと考えたのが、自分が好きな芸能人(アイドル)の、ラジオという媒体における楽曲のレコメンドである。なんとびっくり、億劫な「はじめまして」は向こう側から言ってくれる!リスナーである私は紹介された曲をただ受動的に聞いていればいいし、壁を越えるエネルギーを消費せずに済む。このことに気づいてからは(もっと早くに気づきたかった…)、ラジオで紹介された中で良いなぁと感じたアーティストをどんどん掘り下げていくようになった。
しかし、出会いたてホヤホヤのアーティストを掘り下げていくときにさえ、私はまだある程度のエネルギーを要してしまう。また、楽曲がおすすめされる媒体はラジオだけではない。ブログやインタビュー記事内でお気に入りの音楽を教えてくれることも数多くある。そのような場合には「はじめまして」はこちら側から言うことになり、自分の背中を押してくれるようなエネルギーが必要となってくる。これらの場合にはどうすれば良いのだろう。
その答えとして私が考えたのは、バラエティに富んだ音楽体験をしてみたいという気持ちを、好きな人と音楽を共有したい、その人がどんな音楽を聴いているのか知りたい、パーソナルな部分を知りたいといったピュアな下心で梱包して、「はじめまして」の壁を通り抜けるという方法である。私の場合、開き直って「好き」と直結した好奇心を原動力にすることで、まごまごすることなく画面をタップし、音楽を再生することができた。こうして、私は自分の中の音楽の世界を(少しずつではあるが)拡大させていくことに成功した。
やっぱり、きっかけは「好き」がいいと思う。
ちなみに、私のkiki vivi lilyさんはじめまして楽曲となった「80denier」は、
そうきっとデニールの意味さえ
分かってないくせに
という、少しドキッとさせられるような歌詞で終わる。デニールの意味はなんとなく理解しているつもりだった私が、少しのドキッをしずめるべく後日きちんと調べてみると、デニールとは単位長さ当たりのあみあみの数のことではなく、タイツを編んでいる糸や繊維の太さのことであると分かった。けど、これはきっとデニールの定義を知ったというだけの話であって、「80denier」の意味はまだ分かってないんだろうなぁと思った。
多分、3denierぐらいしか理解できていない。