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選択肢たった一つを選ぶこと|日向坂46 9thシングル『One choice』収録曲感想

進んでもよい それから 進んではいけない



こん…アロハ〜!

はい。ゴキゲンな挨拶の通り、私は最近ハワイアンタイムな過ごし方をしています。だからこうして公開から1ヶ月ぐらい経った楽曲の感想だって平気で投稿できるんですね。本来こういうのはペッと1ツイートで済ませればいいと思うんですが、バカンス気分で将棋の観戦記みたいにじっくり書いていくのも良いんじゃないかと私は思います。

ハワイアンタイムって本当にあるんですか?




1.One choice

・健気なハッピーオーラや「いいこと思いついた!」の遊び心がステキな丹生ちゃん(丹生明里)が初センターを務める、9枚目シングル表題曲。

・MV公開に先立って『One choice』イントロ部分のみのティザー映像が公開されたが、フラメンコっぽいギターやバイオリンが特徴的なラテン系のサウンドだったので、ここから乃木坂のよくあるアンダー曲みたいな湿っぽい雰囲気の曲になるのかなぁと思った。実際の曲は湿っぽそうで湿っぽくない、すこし湿っぽいぐらいの感じだった。

・MVはコメディ/ミュージカル映画風の作りで、個人的にここ数年の日向坂作品の中では割と一番レベルで好き。大変!センターの丹生ちゃんがMVの撮影日にうっかり寝坊しちゃった!から始まる紋切り型なストーリーではあるけれど(そう?)、人の沈んだ気持ちをむりやり引き上げられるのがコメディで、それが日向坂さんのブランドミッションである「ハッピーオーラで見る人を幸せに」的なやつの一手段であるからこそ、表題曲MVでコテコテのお間抜けユーモアをやってくれたのが嬉しかった。
 ミュージカル映画の方はあんまり知らないけどたぶん部分的にそんな感じでしょう。

・ちなみに『One choice』のMVを観て私が想起したのがカリフォルニア出身のシンガーソングライター・Ginger Rootの『Lonliness』で、そっちのMVは80年代?90年代?が舞台で、音楽番組への出演を予定してた日本のアイドルの子が楽屋から出てこなくなっちゃった!という、Mステのアレみたいなストーリーがコミカルなタッチで描かれていて、もちろん楽曲も素晴らしくて良いんですね。

>マネージャーさんそっくり。なんかアス比の感じも似てますね。『One choice』のはなんとなく記録用のデジカメ映像みたいなニュアンスなのかしら。

・齊藤京子の変なリハ着。色づかいだけじゃなくてビスチェみたいなやつも絶妙に面白い。

>リハ着かと思ったら2サビはみんなそういう衣装で踊ってるのでなんか難しい(MV内でのMVと実際のMVは結構内容違うんじゃないかと思ってます)。

・パート終わりに用意されてる小粋な音ハメポーズ嫌いじゃない。

2サビの振り付け(というか構成)が一番好き。日向坂メンバーがチームに分かれてジャンルの異なるダンスを五月雨式に繰り出してくる感じが日向坂らしいと思う(「日向坂らしさ」みたいなワードはこういうときに使いたい)。待機メンバーがワイワイしてるのも良い。

>特に後半のバレエ組が出てくるタイミングなんかはなぜか曲もめちゃめちゃ良く聴こえる(音ハメ重視の振り付け(1番もだけど)が気持ちいいのか、総力戦の感じとG♭7(Ⅲ7)→AM7(ⅣM7)の流れに心が熱くなるのか、なんでですか)。バレエゾーンが〈ずっとかかと上げたまま〉に対応してるのも良い感じ。

・ラスサビ前に一瞬挟み込まれるマネージャーさん含めた撮影チームのカット、何回噛んでも味がする。裏方の人が言ってるタイプの日向坂だ。

・終盤の〈一択だ〉以降のステップがすごい好き。てかそもそもパンツ組とスカート組の2チームに分かれたスタイリングが完璧。メンバーには金属のイオン化傾向ならぬパンツ(スカート)化傾向があると思うけれど、そのような分かりやすく個人のキャラクターに合わせたスタイリングがやっぱり嬉しい。なおみくにん(小坂菜緒・髙橋未来虹)とか。きくとしちゃん(佐々木久美・加藤史帆)がどっちもパンツスーツなのはちょっとだけ分かる。
 ここのステップは色も形も違う衣装を着たメンバーが一緒に楽しくダンスしてるのが心地良いんだと思う。影ちゃん(影山優佳)がラジオで語っていたようにこの曲では振り付けがこれまでの寄りで映えるような顔周りの動きが多いものではなく下重心のステップを主軸としたものになっているが、それが一番活きているのがこの場面だと思う。

・ラストの全員での「にぱー」はさすがにやりすぎてるようにも思えてしまう(あの時間やたら長く感じる)。「にぱー」の軌道が読めすぎてるからなのかもしれないけど。

・ちょこちょこ台詞が気になるとこがあったりもするけど結局よく分かってない。最後の丹生ちゃんの「今日はしっかり寝ます!」はフラグ(この場合は伏線か)だったりするのかな。

テレビサイズでは見たいところだけが的確に省略されているためかなり厳しめ。2サビがないのは当然として、アウトロの好きなやつもほぼ確でギュっとされてる。歌番組で同じようなサビを3回もやってるのもったいなく感じちゃう。

・基本どのアイドルもMVの衣装で出てるっぽいVenue101はちゃんとパンツ&スカートで映え映え。

・フルサイズ披露が日常のあらゆる疲れに効くCDTVライブライブは咀嚼が難しい衣装と龍のように動くカメラワークがちょっと惜しかった。

・歌詞はほとんど左へ受け流されちゃうけど、一応まごまごした主人公が一貫して「君のことが好きすぎて辛い笑笑」と言っている。サビで「僕がいけないんだ」みたいな自責の念に苛まれて最後にナウなヤングが使う言葉(今回は「One choice(「○○一択」の一択)」)をフックにしてポジティブに締める定番の構成。

>過去の表題曲では『こんなに好きになっちゃっていいの?』『君しか勝たん』『僕なんか』が同様の作りになっており、歌詞の構成に加えて、具体的な情景描写が少ないために感情移入に至るまでの共感のイメージを膨らませるのが難しいところも共通している(上記の楽曲群はとり立てて歌詞の評判が良かったわけではないと思うのですが)。

恋愛ソングのくせに〈君〉のことが何一つ書かれていないので、良く言うと設定における余白の多さから多様なシチュエーションに合わせやすいのかなと思う。

・選択肢がたくさんある中でたぶん直感を信じて一括入力で選択を済ませている主人公の姿勢はつい効率なり損得を考えちゃう現代人にとって意外と重要なのかも?

・歌詞に出てくる人の人間性の良し悪しと歌詞自体の巧拙の評価がイコールの関係ではないことは前提としてあるけれど、個人的には歌詞にいまいち深みを見出せていなくて、丹生ちゃんとのシナジーも薄いのかなぁと思っています。

>なっちょさん(潮紗理菜)が自身のラジオで、センターの丹生ちゃんについて、笑顔/ハッピーオーラの裏にある、身体のことで思うように動けなかった時期を乗り越えてきた芯の強さやその葛藤から来る切なさが彼女唯一の表現としていいんじゃないか、みたいなことを言っていたんですけど、やっぱり丹生ちゃんの遊びのアイデアやデキる後輩ムーブ、またツッコミ志向であることなどを説明するのに必要な思慮深さが楽曲には欠けているように聞こえてしまう(あとその放送回でも軽く言及されていた楽曲制作における不和がキツい)。この曲、乃木坂46『きっかけ』の主人公が聴いたら卒倒しますよ。

>しかしながら、実際丹生ちゃんのパブリック(というか村外からの)イメージは出力結果である元気!ハッピー♪だろうし、日向坂のクリエイティブの魅力と一般的に考えられているものの一つが「メッセージ性が希薄であること(その時間だけ楽しければいい)」だとも思うので、こういうバランスに落ち着いたのも自然だったのかなと考えています。
 ただやっぱり日向坂ファンとしては選択に至るまでの過程の部分にも目配せしてほしかったなぁと思ってしまうかも。

・楽曲を聴いていくと、イントロに続く頭サビで〈神に選択肢与えられて〉との仰々しい詞が耳に残る。サビはJ-popらしいオーソドックスなコード進行とメロディ(コードの根音に対して七度の音が多め)で、『こんなに好きになっちゃっていいの?』や櫻坂46の『桜月』と非常に似ている(『桜月』はキーも同じ(Eメジャー))のはわざとなのだろうか。
 まぁそれくらいは考慮のうえで制作が行われているだろうから別にいいとして、例えばサビの8つ目のコードのG♭7のコードチェンジのタイミングが一拍早かったり、〈いつだって僕は〉の所では一瞬サブドミナントマイナーっぽい響きが入ってたりして、そういう微妙な味付けがこの曲における主張の一つなのかなぁと思います。

・チャンチャン♪で半ば強引に半音上転調して、AメロはFメジャーキーで進行。サウンドが4つ打ちキック、キーボード、ギターだけでほぼ構成されているので結構あっさりしている。セブンスコード多めでちょっとオシャな中で、メロディにも程々にノンダイアトニックの音が入っていてロマンチック仕立て。

>ここら辺のアレンジにはフロント(クセ強め3人と愛しのとしきょんちゃん)の歌唱を味わいたくなる(当たり障りのない歌詞がもったいない気もしますが)。歌メロで印象的なノンダイアトニックの音が出てくるのはAメロ前半だけなのでちょっと攻めた歌割り。
(余談ですがフロントの3人の組み合わせでプロモーションとか出てるけど結構面白いバランスの3人なんじゃないかと思います)

・2番Aメロでは普通にベースの音が入っていてより自然な感じ。歌詞も2Aのが大袈裟で耳に残りやすいために満足度はそっちの方が高そう。

・BメロはBメロすぎる。絶対PPPH入れられちゃうんだろうなー(私はコール文化あんまり好きじゃないので…)と思いつつ、途中でシンセが入ってくるまで音数が少なくてわびさびを感じる。

・〈恋とは麻疹だ〉とかいう嫌〜なフレーズ(フックと言いたくない)。

・〈言われたけれど〉の「ど」はロマンチックなD7(Ⅵ7)の第3音に対応する♯ファの音なんだけど、コードチェンジより先に歌い切るので少し違和感を感じるところ。なんかフック感よりシンプル違和感の方を強めに感じる。

・(TwitterでABメロが乃木坂46の『Out of the blue』(4つ打ち名アイドルディスコ)っぽくて好きみたいなこと書いたんですが両者を比べてみたらOne choice聴く気なくなっちゃったのでその辺の比較や検討結果の詳細は書くのやめときます…)

・(コードとメロディは似てるけど華のあるアオブルのサウンドに軍配が上がる)

・浮遊感のあるE♭(♭Ⅶ)を機に転調する飛行技雲パターンのやつ。その後、例のラテン調ストリングスでEメジャーに転調。こういう半音下転調ってなんか地に足着いてる感ないですか?

>浮ついたロマンチストが歌い上げるちょっとレトロなサウンド(ABメロ)から相対的にちょっとリアルな感じ(サビ)に非連続的に切り替わるので、転調にタイムスリップ感がある(ヒゲダンの『Cry Baby』みたいな)。

・サビのコード進行は、細かく見ると一般的な4536進行ではなく4436の形(Ⅳ Ⅳ Ⅲm Ⅵm)をとっているので穏やかな感じ。歌メロの動きが少ないこともあって、人によってはサビ単体で聴いたり弾いたりすると物足りなく感じてしまうものの、実際は転調のインパクトがある程度余韻として残っているのもあってそこまで気にならない。
 そういえばすーじー(富田鈴花)がshowroomで弾き語ってたときは普通に4536進行だった(全然違和感なく聴こえる)。

・サビの結びでは『月と星が踊るMidnight』 と同じくCdim(♯Ⅴdim)を挟みつつコード高揚させていく方式が採用されている。『One choice』の方は前述の通りほのかなSDMの響きでちょっと切なめ。

・2サビからボーダレスに思いがけないラララ♪なCメロに入る(言いたいこと特になかったんかい)。そこからFメジャーに半音上転調してラスサビへ。主人公くんは直感や初期衝動を大事にしているので結局〈始めから決まってた〉し〈一択〉らしい。もう選ばないことを選んだんですね。相変わらず胆力だけはすごい。

・坂道楽曲は少なくとも曲先(表題曲はコンペ?)で作られていたと思いますが、この曲は全体を通してトラックの主張がそこまで強くない分、いかにソリッドな表現で調理(作詞)していくかになりそうなところで、割と無難な言葉が紡がれている。
 これがどういう計算のもとで行われているのか私には解き明かせなかった。

>個人的に表題曲にしては淡白だと感じているのですが、パフォーマンスを見るときはメンバーの一挙手一投足や表情のニュアンスの細かい変化など、そういう他の人が見てなさそうなところに着目してTwitterとかでこれ気づいたの自分だけですよ〜でもやっていればどうせそれなりに楽しいと思うので、結局いつもと大して変わらない(変われない)んだろうなぁと感じます。諦念すな



2.恋は逃げ足が早い

・シングル選抜全員参加のカップリング曲。作編曲は『キュン』や『ドレミソラシド』でお馴染みの野村陽一郎さん。

・海の中から水面へと上がっていくような爽やかイントロから頭サビ→間奏チュルルル→Aメロと初っ端から展開がめまぐるしい。リズムの取り方も変わってくるのでいきなり消費カロリーが高め(野村さんの楽曲はそういうポップをポップでとじたようなハイカロリーポップなところが好き。なんか日向坂はそうあってほしい)。

>その一方、サウンドは軽快なので意外とそんなに食べてる気はしない(ボディーがプリティーになってっちゃうやつだ)。Aメロで絶えず繰り返されるキーボードのフレーズも良い疾走感。

・チュルルルもクセになるけど歌うのめっちゃ難しそう(ドンキーコングのBGMみたいな意外とマイナーっぽいメロディ)。2番Aメロは長さが1番の半分かつ四つ打ちキックoutエレキギターinでより軽量化されている。
 Bメロもポップネスが光るサビに向けて音数が絞られていて本当に仕事ができる。

・〈市営プール〉の絶妙な野暮ったさがすごいリアル。情報が詰まりすぎてるいいワードだ。
 あと英語の語順自体がそうではあるんだけど、〈I can’t stop〉〈loving you〉〈in my heart〉と並ぶことで「君」を心の中だけで想っていることが印象に残っていい感じ。行動に移せてなさそう。

サビメロがヨナ抜き音階主体で動きも大きく聴き心地抜群(One choiceに欲しかった快楽)。ここでコード進行はA・B・E/G♯・C♯m→A・B・E・E7の形でちょいエモ王道ポップな感じ。同じく野村さん作編曲の『ホントの時間』サビも大まかにはそんな感じで、過ぎ去った時間をポップかつノスタルジックに切り取るような詞との相性がよさそう(こっちは鍵盤のフレーズやなんやで主音が鳴ってる時間が多くを占めていて気持ちまろやか)
 サビ後半はE/G♯のとこがG♯mになってる気がして(ノーマルな4536進行っぽい)、コードチェンジのペースも上がって前半よりそわそわな感じ(挨拶代わりの頭サビはこの部分から始まってたので余計に景気良く感じた)。サビに聴き入っていたらなんかバイト辞めてる♪

・Cメロの素朴な〈会いたいな〉が弱っちくて結構良い(フレーズが属音(シ)終わりなのも淡めな願望に合ってたりしそう?)。落ちサビの寂しい感じにも繋がってる。

・ラスラビ(通常サビ後半のみ)でEメジャーからFメジャーと半音上に転調。最後は歌メロに合わせてパン…と終わって逃げ足が早い。歌詞も〈早い〉〈くらい〉〈欲しい〉とリズミカルで末脚が良い。

・歌詞を読んでいくと、とにかく奥手な主人公のひと夏の片想いが描かれている。日焼けなんてちょっとしたら自然と元に戻ってしまいそうで儚い(日焼け止めは絶対塗った方がいい)。
 連絡先すら聞けてなさそうなので、この〈バイト辞めてた〉のは「君」の方だったりもするのかしら。

>個人的に野村さんの作品はただマックで駄弁ってた時間を懐かしむような、いい意味で軽薄なポップソングとしてピカイチという印象を抱いている。社会的な正しさや大人たちからの評価から離れた、身にならないジュブナイル的な空気感が良い。

・MVの内容もまさに回顧主義的な感じで横浜スタジアムに立つまでの動く日向撮みたいな仕上がりになっている(東京ドームなどなかった)。過去画像とのコラージュは自然光じゃない屋内のは割と自然に見える。
 なんとなくひらがな時代にいなかった3期生の出番少なくなるのかな〜と思ってたら初めの方でちゃんと出てきて安心した。

・屋内/屋外の薄暗めな画が4分弱ぐらい続くので、その分ラスサビの青く青いハマスタが綺麗。

例えば外でもめちゃ曇り

・ラスサビの前髪流れ丹生ちゃんの妙。「覚醒後」のキャラデザみたい。

・丹生ちゃんがベルクのラジオで言ってたけど、提出した過去動画にある動きをもとに作られた振り付けもあるらしい(TAKAHIRO先生は特に何も言ってないけど)。野外で映えそうな腕をブンブン振り回す振りが多い印象だけどすなわち動画内で暴れまくってたってことなんだろうか。

・月並みどころか週並みなこと言っちゃうけど表題こっちで良かったな…



3.愛はこっちのものだ

・あゃめぃちゃん(高本彩花、東村芽依)がWセンターの1期生曲。ジャズ・ファンクっぽい曲が来るのは意外だったけど、やっぱり間違いないなと思う(例えば『誰よりも高く跳べ』はその路線の良曲ですよね)。センターが二人とも英語できなさそうなのは少し気になるところ。

歌唱では京子さん(齊藤京子)が頭ふたつ抜けている印象。これには〈キスをしないか〉みたく、フレーズ終わりをビブラートで育てるのではなく吐息でサッと切り上げてしまうちょっとセクシーな歌い方が単純に楽曲ジャンルに合ってるのもあると思う。
 でも逆に〈夏の星を思い出したんだ〉でのシンプルなみーぱん(佐々木美玲)の歌唱も良く感じたりするので、その辺はよく分からない。

・Bメロ部分での〈Yeah〉の合いの手や、サビでより雄々しくなる〈Everybody〉が爽快。〈Baby〉なんかも1期生のおふざけの延長ですよね。

>日向坂になってからこれまで頑なに無視され続けてきたイッキサンのバイブスがようやく楽曲に落とし込まれていると感じた。この曲は初めて聴いたとき割と好感触だったんだけど、楽曲の質が、というよりは構想自体が優れているというイメージ。

・サビで安直な小室進行アイドルソングに収束したりしないのもかなり偉い(コードの機能としては似てるんだろうけどやっぱり6251のがちょっと洗練されてる感じがする)。サビ終わりに差し込まれる〈そばにいてよ〉のバランスもなんか好き。

・歌詞でいうとCメロの〈ごめんね 懐かしくなって〉〈悪いことしちゃったな〉→〈踊るしかない〉の支離滅裂な展開がウケる。「かない」のとこはもうオクターブ跳躍じゃなくて声の裏返りなんじゃないかと思う。

・音源よりかはライブで体感したい。今後のライブ披露への期待も膨らんで良いと思います。



4.You’re in my way

・河田さん(河田陽菜)がセンターの2期生曲。なんか2期生ちゃんの歌はシンセが忙しなくないといけないみたい。

・サビの途中で半音上に転調するのが印象的。マイナーキーでかつベースラインが転調のちょっと前から半音ずつ下降していくので別にすごい明るくなったような感じはしない。

・Cメロのピアノソロが2期生の楽曲では新鮮でいい。こっち主体がよかった(ワガママすぎ)。

・ひらがな時代を含む2期生曲の歌詞に出てくる奴だいたい同じな気がする(特に成長もしてなさそう)。年2回のシングルペースならもうちょっとメンバーの成熟に合わせて内容を濃くしていってほしい感がある。

>ただ個人的に2期生が持つ特有の空気感を音楽としてどう作れば良いのか全く思いつかないし、いくら考えても分からないので、まぁなんか色々難しいんだろうなぁと思う。



5.パクチー ピーマン グリーンピース

・フォーメーションが変な3期生曲。

3期生ちゃんの集合写真はずーっと良い
(フォーメーションじゃなかったです)

・個人的にこれまでの3期生曲や今作の他の期別曲の評価が高めなので、この楽曲には相対的に全くハマれなかった。(『この夏をジャムにしよう』についてはnoteで書いていないが、強烈なテーマパーク的アレンジやコードワーク、メロディに七度の音が効果的に出てくる独特なBメロにボカロP・Mitchie Mさんの作品のような奇妙なノスタルジーを感じて、それが特にひなのちゃんの(途中参加)王道アイドル属性と共鳴してるような気がして良く感じる。夏ジャム良い曲です。『ゴーフルと君』については前に記事で書いたが辻村有記&伊藤賢コンビの楽曲の中でもかなり好き。『Right』はそんなにハマれてねぇ)

>「3期生曲はこんな感じ」みたいな志の低いノリを感じて、それが苦手なのかもしれない。可能性を狭めて遊んでるように感じちゃう。

・〈悪いのは僕なんだ〉とか言ってるけど多分1ミリも自分が悪いとは思ってなさそう(てかこの人もララララ言ってる)。

>個人的に、3期生のちょっと拙めな歌唱と主人公の幼稚な精神性が色濃い歌詞と組み合わさることで、サウンドが「軽快」ではなく「軽薄」に聴こえてしまっているような気がする。



6.シーラカンス

・選ばれた女こと、しょげこ隊員(正源司陽子)がセンターを務める4期生曲。情報ダンスだ!

一回も転調しないのに満足感たっぷりで、個人的に今作ではこの曲が一番だと思う。冒頭のオルゴールサウンドからもう一味違うというか、音楽やりまっせ!の気概を感じる(屋烏の愛でしかないけど)。

・イントロ〜Aメロあたりはトラックを緩急自在に支配するキックの音やベースの動きに乗せた裏拍を感じるメロディが軽やかな印象。傘を後ろから差し出された場面に誘導するピアノのフレーズも爽やか。
 それに続くBメロはふわっと浮遊するようなD♭(♭Ⅶ)コードに始まり「名前も知らない君」を求めて記憶の深海に潜っていくようなパートになっている。音数が一気に少なくなって、ピチカートがちょっと不気味。
 ゆっくりと迫ってくる何か途轍もなく大きなもの(〈君〉の正体→〈ずいぶん前の恋(する痛み)〉=〈シーラカンス〉)に畏怖してしまいそうな中で、細かいベースの動きは次々と光りだすシナプスみたい。

・Bメロの詞は乃木坂46『他人のそら似』っぽさもあり、昔Twitterで見た「『他人のそら似』はグループの新メンバーに卒業生を重なるファン心理を歌ったものなんじゃないか」みたいな解釈は割とこの曲でもそのまま通りそう(グループの状況が違いすぎるけど)。

・サビも魅力的。パーンと弾けるスネアとともに表拍主体で平坦なメロディに変化し、さらにサビ2回し目では歌メロがアウフタクト(小節の途中からフレーズが始まる)ですらなくなる(純粋に⦅ンタタタ⦆が⦅タンタタ⦆になる)ため、ともすると鈍重にも聞こえてしまいそうなところだけど、間違いのないコード進行や、マメに運動するベースの音、加えて悠久の歴史をその身に刻んでそうなシーラカンスが主題であることもあってか、半ば例外的にバランスが取れているように感じて面白い。坂道楽曲恒例のコーラスが2拍目で差し込まれてるのも絶妙な推進力で、サビの締めの愚直なメロディもユニークで良い。

・よく歌詞における〈エモい〉というワードの是非が問われているけれど、個人的には全然アリというか、むしろ「シーラカンス」というタイトル並びに物語自体がこの〈エモい〉を成立させる構想で作られたものなんじゃないかなぁと考えています。
 まぁ前提として、私の場合、歌詞を読むまで(読んでも)〈こんなエモい瞬間〉を「こんなでも一瞬か」みたいな感じだと思っていたので、音としてそこまで違和感を感じてないからOKな部分もあるんですが、〈君〉に会って、心奥で化石のように長年埋もれていた感情が動いた(蘇った)、まさにその刹那を切り取った言わば「比喩の比喩」としてこの〈エモい〉が面白く感じますね。シーラカンスを経由していることで、市井の「エモい」にはない時間的な重みが付与されているのが良い主張だと思います。

>「『エモい』のワンランク上の使い方を教えてあげますよ」という啓蒙的な意味合いもありそう。秋元先生のやる気(比喩パワー)を感じる。

・1番Bメロ〈君は誰ですか〉や、サビ〈話しかけようとしたら〉のとこで出てくるA♭m(Ⅳm)の響きが、しょげこちゃんの纏う、酸いも甘いも知らない清純派ヒロインのような空気感をより引き立てている気がする(歌詞は少なくとも大学生以上な感じがしますが)。
 2番ではこのサブドミナントマイナーが出てこないなどトラックが色々と変化している。Bメロもよりドラマチックで、サビの入りはパーンだったところがGmで繋がれているためヌルッとした展開になっている(個人的にはこっちの方がややちょうど良いと思う)。

・2サビ終わりの〈ミステリー〉に酔いしれるハミングのお時間がいい味。

・〈シーラカンス〉〈氷河時代〉〈自然淘汰〉あたりは歌詞で頻用されていない言葉だが、割と違和感がなくて面白い(音韻が優秀な気がする)。

・4期生の歌唱をそこまで聴いたことはないけれど、ユニゾンになったときのざらつきが結構クセありだなぁと思う(エフェクト強めで正直あんまり分からない)。あとソロ歌唱あんまりなかった気がする。

・でかした陽子!となるMV。透明感と思索の表情が素晴らしい(そういえば声も透明度高い)うえに、ダンスにおいてもひな誕祭で感じたサッカークラブ小学生男子ばりの躍動感があって選ばれた理由が分かる。

・全国日向坂46化計画の青い鳥。最後はピニャータみたいに散っていく。

>(ピニャタ坂…)

・〈ずっと忘れていたよ〉のところの個性のダンス好き。ひらほちゃん(平尾帆夏)には性懲りもなく朗らかにひら砲撃ち続けててほしい。

・MV衣裳は乃木坂の衣裳も多数手掛けている尾内さんが担当。どちらも可愛い子をより可愛く見せるうちゅくちい衣裳で、しょげこちゃんセンターにも合っていると思う。

(『シーラカンス』良い曲だけど4期生ちゃんに関して私は源平コンビや小西さんぐらいしかちゃんと見れてないので結局そこまで聴かなそう…)

(曲全く関係ないけど豊島将之九段を美少女化したらりなし(渡辺莉奈)になると思ってます)



7.友よ 一番星だ

・インスタのフォロワー数がずば抜けてる影ちゃん(影山優佳)がセンターの楽曲。こんな卒業曲の形があったのか!Let the good circles roll。

・スタジアムに大層合いそうなアンセム風イントロで開始のホイッスルがどうたらこうたら。

・とにかく(Tony)転調が印象的な楽曲。1番AメロがE♭メジャー、BメロがCメジャー、サビがEメジャーと、雰囲気がパートごとに明確に分かれていてなんか分かりやすい。転調は、コードを階段状に登っていってそのまま、あるいはドミナントからピョンと行われている。あと特徴的なところとして、1番サビから転調せず2番Aメロに突入するため、2Aは1番と違いEメジャーで進んでいく(Bメロへの転調の感じも変わってる)。

・Aメロのコード進行は乃木坂46『人は夢を二度見る』のサビと部分的に共通してるけどトリッキーな音の使い方はしていないので相対的に自然。やけに壮大なBメロを経てサビへ。

・サビはカノン進行と適度に動きのあるメロディでそりゃあキャッチー。サビの後半では一瞬丸サ進行も出てきますが、これはとりあえず丸サ使っとけばエモくてオシャレでしょ、とりゃ!Overdose 君とふたり〜的な発想ではなさそうで、強進行やマイナー(Ⅵm:絶望)からメジャー(Ⅰ:希望)への遷移による力強さが良い(結局エモはあるけど)。
 サビ頭のベルの煌めきもステキ要素ではあるが、個人的にはスタジアムに対してちっぽけに感じてしまうかもしれない。

・卒業を発表した影ちゃんが〈先にサヨナラを言わないといけない〉のは分かるけれど、歌詞の物語における理由は特に書かれていなさそう。
 歌詞は余白が多くて、申し訳程度の〈ゴール〉がウケる。

・〈一番星〉については宵の明星とか言いますし、金星(ヴィーナス)→勝利の女神まで行けたりして。

・サッカーしてそうでしてないMV(実際は分かれて試合してたらしい)。どちらかというと練習風景とか裏側の部分にスポットライトが当てられている。
 てか今作のMVやたら裏側とか懐古多い気がする。表題曲の1〜3期体制ももうそろそろ…って感じなのかな。

日向坂の「円」は円陣なんですね。例えば乃木坂46の場合「円」は、ときに外界から身を守るバリアであったり、内部で愛を反射・増幅させ続けるおそろしい機構、あるいはそういう乃木坂の精神性が受け継がれ回っていくことの表象だったりすると思いますが、日向坂では「誰も見捨てない」全員選抜制(じきに終わりそうだけど、いやだからこそ)にも通ずるような「協働」の色が強く反映されていて、確かにいつかしらの大きなライブの時の円陣がほぼ奇声ですごい良いなぁと感じたこともあったので、「円陣」に対してひとつ秀逸だなぁと感じました(たぶんサッカー寄りの円陣なんだろうけど)。

・「円には切れ目がない」は目に見える角がないってことかしら。てかユニフォームのパンツの丈短くない? こんなもん? 安心できない

・「私は蹴って」の掛け方普通にすごすぎる。

・松田さん(松田好花)がオールナイトニッポンXでこの曲をガチ友人に送っていた(歌詞がフワッとしてるとこういうのやりやすい)のが印象的。素敵やん。


Twitterでは加藤史帆1st写真集公式ツイッターの投稿をアグレッシブにいいねRTしまくってる私ですが、やっぱり写真集は海外が良いですね。

こういうグラフィティもポップで楽しいし、

オフの動画も国外ってだけで全然違う。

個人的に最近の写真集でたまにある海外の雰囲気を模した国内のスポットに限界を感じていたので(以前メモを見返してたらこさかな(小坂菜緒)がラジオで本来は写真集をアメリカで撮りたかったと言っていたのを見つけて切なくなった)、史帆ちゃんがず〜〜っと言っていたハワイ写真集が実現したのが嬉しくて、オフショ祭りなTwitterもアドベントカレンダーみたいで楽しいです。こういうワクワクが一番良いんだから。

あと、あしゅりんミュージアムも開館間近で楽しみです。結局本人の希望がちゃんと反映されてる個人仕事が楽しすぎて、楽曲でもこれをやってくれたらもっと楽しいのになぁと思います(YouTubeチャンネルなど楽曲意外は結構ワクワクな環境になってきてる)。

それでは。アロハ〜。
(〆アロハ)

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