AppSheetでできること①80万円の在庫管理システムが8万円でできた話
GoogleのLooker(旧データポータル)を使って業務改善を色々やっているという話をこれまで何回かしてきましたが、最近はこれに加えてAppSheetというノーコード・ローコードツールを使って色々な業務システムを構築しています。
「AppSheetって何?」「どんな風に始めればいいの?」という文脈ではこちらのツギノジダイさんの記事に詳しく書かれていますので気になる方は読んで頂ければと思いますが、僕自身は「KintoneのGoogle版」と考えています。
Kintoneはうちの会社でも導入しています。外部IT企業さんに依頼して購買承認ワークフローを構築してもらい、元々紙でやっていた承認を全部デジタルに切り替えました。出張中だろうがなんだろうがネット環境さえあればすべて承認できるので大変重宝しています。ただうちはKintoneをそれ以上広げるよりも自分達の手で何か作るにはAppSheetを使うことにしました。なぜかというと元々Lookerを使っていたのでGoogle Sheetsにデータが溜まっていくAppSheetとの親和性が非常に良かったからです。
我が社でのLookerの使い方は直感的なビジュアル重視の綺麗なレポートを作るというより、Google Formと連携させることで「現場が紙でデータを記入→エクセルに入力→グラフにする」という流れを変えて「現場がフォームで入力したらグラフで一気に見える化される」という紙とエクセルの集計作業を撤廃する性格のものが多かったのですが、Google Formはアンケートツールのため一方的な入力しかできず変更が効かないとか承認というプロセスを噛ませられないとか制約がかなりありました。
そんな悩みを持っていた昨年末、GoogleのスペシャリストであるStreet Smart社長の松林さんからAppSheetのことを聞いた僕はこれまで多くのLookerツールを作った立役者であり我が社が誇るITスペシャリストのJames君に「こんなのあるぜ!!触ってみようよ!!」とけしかけてみました。
そこからかれこれ8か月くらいでしょうか。試行錯誤を重ねた末、開発中のものも含めて現在こんなアプリがあります。
チューブ在庫管理アプリ(QR入力対応→Lookerで結果を可視化)
カイゼン活動アプリ(Lookerと連携)
仕様書作成アプリ
残業申請・承認アプリ
生産実績管理アプリ(開発中)
勤怠管理アプリ(開発中)
外部開発で80万円と見積もられた在庫管理システムが8万円で
今回は1のチューブ在庫管理アプリをご紹介します。うちの会社は家電や自動車のワイヤーハーネスに使われる保護チューブを押出成形で製造しているのですが、材料や仕様、サイズや色が多岐に渡り、在庫管理が非常に煩雑です。
元々バーコードによる在庫管理システムは外部に依頼して作ってもらったものが存在していたのですが、スキャナーのOSがWindows Embeddedでマイクロソフトがサポートを打ち切ってしまったためにハードウェア側の更新ができなくなり困っていました。そこで再度外部の在庫管理システムを検討していたのですが、「AppSheet使えば自社開発できるんじゃない?QRサポートしてるでしょ?」ということでJames君が試行錯誤の末に作り上げてくれました。
AppSheetはQRコード対応(Coreユーザー以上のみ)という強みがあり、これを最大限生かしたものです。またAppSheet単独では弱いデータの可視化をLookerで補っています。
これでスキャンイン(入庫)とスキャンアウト(出庫)をしていくのですが、アプリとしてはこれだけです。中身のレポートはLookerを使っています。
この在庫管理ツール、外部にシステム開発依頼した際の見積はソフトとハード(スキャン端末)で15万~20万バーツ(60万~80万円)というものでした。それが社内開発によりスキャン端末費用の2万バーツ(8万円)のみで済んでしまいました。携帯やタブレットのカメラでスキャンもできるものの、まとめてスキャンできなかったり作業性に問題があるので端末だけは専用のものを調達しました。
もちろん外部のプロに依頼したらもっと良いものができていた可能性はありますが、自分達で作ったもので必要十分ですし、今後のメンテナンスも自社でできます。
このチューブ在庫管理アプリは比較的単純なものでしたが、もうひとつの主力製品である冷蔵庫ドアガスケットは通いの台車を使っていてこの管理が手作業では難しいため、GPSにも対応しているAppSheetの強みを活かして通いの台車の居場所をトレースできるものを作りたいと思っています。
とりあえず一例をご紹介しました。他のツールも今後紹介していきたいと思います。
なおKintoneも含めて「ノーコードツール」と呼ばれるものですが、いきなり高度な業務アプリが作れるかというと全然そんなことはないです。AppSheetに関する書籍やチュートリアルはちょこちょこ存在しており、僕もそれを見ながら何度も手を動かしたのですが、ハッキリ言って想像よりはるかに難しいです。
Relational DBの基礎知識やAppSheet関数という独特の関数の使い方をもっと覚えないとJames君みたいに色々なものを作ることはできない状態ですので、独学で覚えてくれた彼から今後教えてもらいスキルを少しでも吸収しなければと。
それに現在はJames君依存度が高すぎて彼がいなくなったらどうしようと戦々恐々としているのも事実です。せっかく始まった新しい試みをサステナブルなものにするのは経営者の務めですので頑張りたいと思います。
最後にこういったデジタル業務改善ツールを外部の会社さんに提供する事業も始めています。「こんなことできない?」というご相談がありましたら喜んでお話させて頂きますのでお申し付けください!