ワインのアサンブラージュの基礎知識!理由もしっかりと押さえよう!
ワインの原料はブドウですが、1本のワインに複数のブドウ品種が使用されていることも珍しくありません。
例えば、1本の赤ワインにカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、プティ・ヴェルドが、白ワインにソーヴィニヨン・ブランとセミヨンといったかたちで、複数のブドウが使用されたワインが多く見られます。
複数のブドウを混ぜる工程はアサンブラージュ(ブレンド)とも呼ばれており、産地や生産者、ヴィンテージによってその品種や比率に違いが見られるのが特徴です。
ここでは、ワインにおけるアサンブラージュについて学んでいきましょう。
アサンブラージュとは?
アサンブラージュは、ブレンドを意味する言葉です。
ブレンドと言うと、“混ぜる”をイメージする方も多いですが、アサンブラージュは、“集合または組み立てる”といった意味を持っているため、若干ながら意味に違いが感じられます。
さらにワインにおけるアサンブラージュは調合を意味しており、ただワイン原酒を混ぜ合わせて1本のワインを造るというよりは、「理想的なワインにするために原酒を調合し、組み立てていく」といったニュアンスで捉えると良いでしょう。
例えば、緑色を作るためには単純に青色と黄色を混ぜれば良いわけですが、一流のアーティストが理想の緑色を表現する場合、さまざまな色を何度も塗り重ねることで、“複雑な緑色”を生み出します。
ワインのアサンブラージュは芸術的なアプローチと捉えることもでき、ただ混ぜ合わせるだけではなく、生産者が理想とするワインの完成形を目指してさまざまな調合が行われる工程なのです。
アサンブラージュが行われる理由
上記でアサンブラージュは芸術的な工程とお伝えしました。
たしかにアートのようなワインを生み出すための工程である一方、一般的にさまざまな理由からアサンブラージュが行われています。
アサンブラージュが行われている主な理由を下記の内容にまとめました。
品質を一定に保つため
味わいのバランスを調整するため
タイプによって飲み頃を調整するため
ワイン法に合わせるため
メゾン(ワイナリー)の哲学を表現するため
それぞれ解説しましょう。
品質を一定に保つため
ワインの原料はブドウであり、ブドウの出来栄えはヴィンテージによって大きく左右されます。
ブドウの生育期に好天が続き、平均気温がやや高めの乾燥した気候条件のヴィンテージはブドウの糖度も上がり、健全であることから優れたヴィンテージになることが少なくありません。
一方、平均気温が低く雨量が多い、台風などの自然災害にも見舞われたといった場合、上記ヴィンテージと同じ品質のブドウを収穫することは困難になるでしょう。
さらにブドウ品種によって最適な気候条件に差異があったり、同じヴィンテージであってもブドウが栽培されている区画によっても出来栄えに違いが見られます。
一部の世界的トップ生産者であれば別ですが、ひとつのワイナリーが販売するワインの品質に毎年大きな差があることは問題です。
とくに大手ワイナリーの定番銘柄の場合、飲み手の多くは、“その味”を期待して購入するため、“このヴィンテージはどうか?”といったギャンブルのような売り方では顧客をキープすることができません。
そのためアサンブラージュによって、ブドウ品種を変えたりブレンド比率を変えたり、ストックしていた原酒を組み合わせることで厳しいヴィンテージであっても一定品質を保つことができるのです。
栽培のリスクも軽減できるため、ワインの安定供給にもつながります。
味わいのバランスを調整するため
ワインの生産者の多くは、理想の味わいを目指してアサンブラージュを行います。
例えば、生産者がまろやながら力強く、熟成能力の高い赤ワインを造りたいと考えてみましょう。
カベルネ・ソーヴィニヨンは香り豊かでタンニンが強く、長期熟成タイプのワインにはもってこいのブドウ品種です。
しかし、それだけだとタンニンが強くパワフル過ぎて飲みにくいワインになる可能性があります。
そこで、まろやかな口当たりとタンニンのメルローを加えますが、やや大味のワインとなり洗練されていない印象です。
そこに複雑性を持たせるためにマルベック、プティ・ヴェルドを加える、また別の品種を加えてみてバランスを調整していく、といった作業がアサンブラージュになります。
上記はボルドースタイルの赤ワインにおけるアサンブラージュでしたが、どのブドウ品種を主役にするか、そのブドウ品種のどの部分を生かし、どの部分を補うのなかなど、ほかの品種をブレンドしながら生産者は味わいを調整していくのです。
タイプによって飲み頃を調整するため
ワインには飲み頃があり、アサンブラージュは、その飲み頃を調整するためにも活用されています。
ワインを瓶詰めしてから2年後を飲み頃にしたい、ワインは熟成させずにすぐに飲んでもらいたい、10年以上の熟成ができるワインを作りたいなど、生産者の多くは飲み頃を考えた上でワインをリリースしています。
すぐに飲んで美味しいワインを造りたい場合、タンニンや酸味が強すぎるブドウ品種よりは、おだやかでアロマティックなブドウ品種で構成されることでしょう。
一方、数年熟成させることで美味しくなるワインを造りたい場合、熟成能力が期待できるブドウ品種を多めに使用するといったかたちです。
近年、早く飲んでも美味しく、熟成も可能というワインが増えていますが、これもまたアサンブラージュによるテクニックが反映されている結果と言えます。
ワイン法に合わせるため
ヨーロッパを中心に、世界のワイン大国にはワイン法が存在します。
とくにフランスやイタリア、スペイン、ドイツなどのワイン伝統国は産地によって厳しい規定が存在し、使用できるブドウ品種も指定されているほどです。
さらに産地によっては使用されるブドウ品種だけではなく、それらアサンブラージュによる規則が存在しており、それを遵守ためにアサンブラージュが行われていることもあります。
わかりやすい事例が、イタリア トスカーナ州のキャンティでしょう。
DOCGキャンティを名乗るワインを製造する場合、最低70%のサンジョヴェーゼ、カナイオーロ・ネロとボルドー品種を合わせて30%まで(ボルドー品種は10%まで)、また10%以内であればトレッビアーノ・トスカーノなどの白ブドウをブレンドできるとされています。
つまり、どんなヴィンテージや変化があろうが、DOCGキャンティとしてワインをリリースするためには、上記の規則を守った上でワインを仕上げる必要があるのです。
伝統的なワイン産地の場合、産地の品質維持のためにこれら規定が細かく定められています。
アサンブラージュは、産地の伝統を守るためにも活用されているのです。
メゾン(ワイナリー)の哲学を表現するため
アサンブラージュは、主にボルドーやシャンパーニュを中心に使用されています。
上記で、“アサンブラージュは芸術的なアプローチ”とお伝えしましたが、シャンパーニュにおけるアサンブラージュがそれに近しいと考えて良いでしょう。
シャンパーニュはフランス北部のワイン産地で、冷涼であることからヴィンテージによる影響を強く受けやすい場所でもあります。
そのため品質の安定化などの理由からアサンブラージュ技術がとくに発展しているわけですが、そのアサンブラージュ技術は各メゾンに哲学があり、ノンヴィンテージの定番銘柄の比率などを非公開にするメゾンも少なくありません。
ブドウ品種の違いはもちろん、区画、畑、ヴィンテージ違いの原酒を組み合わせ、そのメゾンの顔となる1本を生み出します。
シャンパーニュのメゾンにとって、アサンブラージュは品質調整のブレンドという枠を超えた、まさにアートクリエイションと言っても過言ではないのです。
アサンブラージュの世界を知ろう
近年、ブルゴーニュのように単一品種で造られるワインも多いですが、世界的に見るとアサンブラージュによって造られるワインが多い傾向です。
アサンブラージュの基本を学ぶことにより、1本のワインにどのブドウがどういった影響を与え合ってこの味わいに仕上がっているのか、少しずつ理解することができます。
専門的な知識が必要になるアサンブラージュですが、まずは基礎をしっかりと押さえ、産地によるパターンなども覚えられるようにしておきましょう。