30年弱ぶりにギブスンを読むー「クローム襲撃」
ウィリアム・ギブスンの短編集「クローム襲撃」を、多分最後に読んだのが18か、19歳の時なので、30年近くぶり(!?)にKindleで再読。
今回は「サイバーパンク」的文体のパロディでお送りしますw
ギブスンって、サイバーパンク運動(ムーブメント)の中心的作家なんだけど、その核にあるのは「今」(=当時だから80年代)という時代への時代性であって。だからその後は「猥雑(ジャンク)な近未来」ではなく、「現代小説(メインストリーム)」の形式(スタイル)に移ってしまったのだなあと思った。
彼がクロムメッキされた、ミラーグラスの近未来を描くことは二度と無いだろう。
それは収録作「ガーンズバック連続体」のように「ありえたかも知れない、しかし訪れる事の無かったもう一つの現実」になってしまったからだ。
そしてギブスンの作品は、基本的には「感傷的物語(メロドラマ)」でもある。
ゴテゴテとした、細かな細部(ディティール)に彩られ、幻惑されるが、根幹に流れるのは哀しき人々の「悲喜劇(トラジコメディ)」だ。
テクノロジーが、人の在り方を強制的に、サイバーパンクのもう一人の騎手であり名付け親でもあるブルース・スターリングが言うところの「肌の下に浸透」して書き換えてしまった世界の「個人の物語(ドラマ)」、それが彼の本質だと感じた。
ティーンエイジの頃には、目を輝かせて夢中になった小説を、アラフィフの枯れた目線で読み直すと、新しい発見や、気づき(アウェアネス)があり、なかなか面白い体験だった。
今度は〈スプロール〉三部作(「ニューロマンサー」「カウント・ゼロ」「モナ=リザ・オーヴァードライブ」)も読み返してみようかな?
きっと、前とは違った肌触りで楽しめる気がするのだ。