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コンセプトとは、ゲストハウスのこたえ
いまさらな話ではあるが、宿のコンセプトを考える。これが難しい。
これまで勤務した会社にもミッションビジョンバリューという社是のようなものがあったし、僕自身、自分の人生にすこしの指針は持っている。だから大事なのはわかる。
難しさはいくつかある。まず、誰に対してのコンセプトなのかが定まっていない。ホテルではフロントの人としか話をしないし、カフェでは店員だけ、バーではオーナーとよくて常連。その点ゲストハウスは、旅人、オーナー、ヘルパー、地域の方が入り混じる。だから、宿を探す一般の方に対しては、「ゲストハウスです」が通じればそれだけで説明になっているのではないかと思う。
ここで困るのは、「ゲストハウスです」が通じない場合が多いことだ。『ゲストハウス』には定義がなく、そもそもその言葉自体が知れ渡っていない。
僕が具体的に『ゲストハウス』を説明するなら、ゲストとオーナー、ゲストとゲスト、ゲストと地域住民が自然に交流をする宿、となる。交流は放っといて生まれるものでもないから、宿にその志向があり、可能にする間取りになっていて、それを好む人が集まってくる必要がある。
(ビジネスモデル上、どうしても)ゲストに100%向きあっている宿は意外と少なくて、その意味でも、この説明とともに「ゲストハウスです」が通じれば、十分に区別された理解になるのではないか。
一方で、「ゲストハウス好き」は到底これでは満足しない。各地にある『ゲストハウス』は、建物やオーナー、サービスに特色があり、それが魅力になっている。この場合、「ゲストハウスです」ではわざわざ来る目的にならないのだ。この方々に訴求するのであれば、もう一段階潜ったコンセプトが必要になる。
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ゲストハウスは儲からない。その分、なぜやるのか、なにを実現したかったのか、が原色のまま現れて、生活の提供を生業にすることとあいまって、オーナーの想いが濃く出る。ここにヒントがある気がする。
僕は『ただ、いる』場所を創りたかった。
交流を可能としながら同時にマストとしない環境。大した目的がなくても、来て自由に過ごし、気が向いた時にお喋りができる、オープンでフラットで互いの存在を尊重している空間が大好きなのだ。
ヨーロッパをバックパッカーとして廻っている時、仕事でうまくいかなくてなにも考えたくない時、垣根なく過ごせるこういう場所が前向きにしてくれていた。
僕は高崎に自信をつけたかった。
故郷である高崎は、帰省するたびに「つまらない」「中途半端だ」といわれていた。そのように言う人は、たしかにつまらなそうな時間を過ごしていたし、「ゲストハウスをします」と言えば「高崎にひとなんて来ない」と否定をした。
人を呼びソトの目線を知り、ソトの見方で高崎を見れるようになることで、この哀しく悔しいマインドを変えたい。
僕は古いモノの価値を再発見したかった。
スクラップアンドビルド- 日本での建物に対する考え方である。使いにくくなったら捨てる、壊す。ほしいのものは買う、建てる。ひと知れずに失われていくものがあり、失ったら二度と戻ることのないものがあるのにも関わらず。
建物にもモノにも歴史があって、僕はそこに価値を感じていて、その良さを発信していきたい。
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長々と綴ったが、はたしてこれはコンセプトなのか。
やっぱり難しい。
ただ来て、ただ居て、ただ帰る
カラスのように、一羽一人でも、自由気ままに好奇心旺盛に過ごしてほしい
正直にいって、いまはこれが胸を張って伝えられる土台である。ここまでしか重い想いを昇華できていない。
形にしながら考え、考えながら形にすることで、いつか見つかればいいなと思っている。
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