
手袋してたら、しなくていい傷
事業は、自分という人間を拡張させていく感覚がある。
商品には僕らしさがいやでも滲み出てしまうし、逆に売り方への批評は自分に向けられていると感じてしまう。「アドバイス」をいただく機会が増えてより実感している。
「アドバイス」は、軽いものから重いもの、短いものから長いもの、求めたものから与えられたものまで幅広く示される。そこには、受け入れたいものと受け入れがたいものの違いもある。
たとえば、こちらから相談を持ちかけた酒の席で、他の飲食店オーナーも加わり、重厚に話を聞いていただく機会があった。飲食店オーナーは事業計画上の数字の穴を、その場で計算して指摘する。その時の顔は得意げで、その算数の結果は自明なものであった。
自分が既に考えていることをなぞって指摘されると、受け入れがたい。その時は、先輩経営者に向かって「承知の上で事業を行う定性的な理由」を述べて、その場は白けた。
「アドバイス」をする前に、「相手はどこまで考えられているのか?」を聞いた方が良さそうだ。
たとえば、ゲストハウスで働くひとからは超実践的な「アドバイス」をいただける。「コミュニケーションをもっと増やすべきだ」「こういう動線がいい」など。暗に指摘されたそういう点は、すべてその通りではあるのだが、同時にすべてが労働者目線であり、それもまた受け入れがたい。その時は、「そうできていない理由」を説明することはやめて、有り難く頂戴した。場は保たれたが、モヤモヤは残った。
これも似ていて、「自分が感じたことを相手は一度も感じたことはないのか」という疑問を持つと良さそうである。

じゃあといって、思いつきのアイデアをたくさんいただくのも、困ってしまう時がある。当然、頭の中ではいろんなことができる。それを考えるのも言うのも自由ではあるが、ものごとには順序があり、それを飛び越えられると「ちょっとまってくれ」となる。
こちらの意思を無視してなされる「アドバイス」には、遊びをもとうぜ、と思う。一方で、ジャストアイデアの洪水には、遊びでやってるんじゃないんだよ、と思う。
なんと生きづらいことか。
しなくていい傷を負い、その傷をいままさに抉っている。

2月のテーマかのようにこのことを考えていたら、ドングリFMで華麗に模範が披露された。
16分30秒あたりのナツメグさんの発言。narumiさんがチョコザップの良さを熱弁するのに対して発した質問がそれである。
ドングリチョコザップやります。なに置く?
おもえばドングリFMではよく聞く質問である。あなただったらどうする?
つまり、アドバイスは、「あくまで僕があなたの立場ならこうする、なぜなら、、」と続くのが良い。
僕はこれからは「あなたならどうされますか?」と相談を求める。そしてもし一方的に「アドバイス」が始まったら、「あなたならそうされるんですね」と返すだろう。
素手でやり合うのはやめよう。

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