みんながGOODなスライド資料をつくれる仕組みづくり
📌この記事を読むのがオススメかもしれない人
・事業会社のデザイナー
・スライドデザインで悩んだことがある人
・コミュニケーションデザインに関わる人
はじめに|これはなに
こんにちは。あるいは、はじめまして。KyashのDesignOfficeでコミュニケーションデザイナーをしているのむらです。社内ではkanaさんと呼ばれています。
さて、この記事は「社内のみんながGOODなスライド資料をつくれる仕組み」をつくった話をします。社内ではこれをKyash Slide Kit PRJと呼んでいます。
なぜやるのか|背景
数年前に制作されたスライドテンプレが存在していましたが、スライドのルールは明確ではなく、ヒアリングをしたり現場のスライドを見るに、活用されているとは言えない状況にありました。
最近は法人営業の社員が増えてきたこともあり、日々の業務の中で資料作成の機会は増えていました。
現場の資料を見るにスライドに関して困りごとがあるのではと思い、急遽ヒアリングした結果、他部署からスライド資料の属人化・デザインにばらつきがあるとの指摘があったこと、加えて営業に関わる社員から直接のスライドに関する現場の課題の共有があったことを鑑みて、早く取り掛かったほうが良いと考えました。
私が入社した時点で既に決まっていた今期のチームOKR(チームの目標)には無い課題ではありましたが、ヒアリング結果と共に今期早々に取り掛かる問題としてチームに提案し、着手に至りました。
出てきた課題
デザイナー視点
テンプレートがアップデートされていない印象で、Kyashのブランドを毀損している
不本意ながらデザインに力を入れていない会社と判断されてしまっている(その可能性が高い)
スライド作成者・ノンデザイナー視点
「そもそも現状のテンプレを知らない」という社内浸透していない問題がある
故にスライドのデザインは属人化している
ノンデザイナーの割合が多いスライド作成者が、表層のデザインにリソースを割いていおり、本質的なスライドの内容にさけるリソースが減る
デザインを調整するのがめんどくさい
ヒアリングから抽出・要約した課題
まずテンプレの社内浸透がされていない
テンプレの場所や使い方が浸透していない
テンプレがどこにあるのかの案内もなかったアクセスが悪い
あってもどこにあるのか知らなくて、探して探して見つけた
属人化している
作成者によってデザインが違っている
ページタイトルすら位置がバラバラ
テンプレの存在を知っていたとしても独自でつくってしまう
著作権まわりのリテラシーの低さ
フリー素材を会社の資料に使ってしまう
「Kyashのブランドイメージと異なるものは使用しない」ということが理解されていない
出典の記載のない素材の添付もある
Kyashの資料として内外に発表するのであれば、色・フォント・その他素材などの表現については一貫性をもたせるべきというのが理解されていない
どうやるのか
上記のように出てきた課題から、以下のことを行う必要があると考えました。
スライドのルール策定・テンプレデザイン集・素材集の入ったキットの制作
キットの社内浸透の仕組みづくり|スライドのことならここに行け!というポータルサイト(kibelaを活用)をつくる
Slackのカスタムレスポンスも活用し、いつでもポータルサイトを呼び出せるようにする
社内浸透の仕組みづくり
みんながGOODなスライドをつくれるように勉強コンテンツを制作
そのコンテンツを勉強会の開催というかたちで社内に浸透
その勉強コンテンツを動画にして、入社オンボーディングに組み込む
Kyash Slide Kitとは
まずこのプロジェクトの要であるKyash Slide Kitについて説明します。
Kyash Slide Kitとは、Kyashで働くみんながGOODなスライドをつくれるように設計されたキットのことです。
ツールは全社員が共通して使用しているスライド作成ツールである「Googleスライド」です。Kyash Slide Kitはこの「Googleスライド」の社内共通のテンプレートに登録されたデータを指します。
キットの中身は以下の通りで、大きく3つの要素で構成しています。
スライド資料とはそもそもどんなものか?という観点から、今回作ったKyash Slide Kitの位置づけを説明した図が以下です。こうしてビジュアルも含めた説明をすることで、社内で共通認識を持てるようにしています。
Kyash Slide Kitの目的
以下の目的を定めて制作しました。この目的もKyash Slide Kitの中に記載されています。
Kyashのすべてのスライド資料が一貫性を保つため
Kyash Slide Kitに用意された様々な素材をコピペすることで、ノンデザイナーがデザイン(スタイリング)を考えるコストをかけることなく効率的にスライドがつくれるようにするため
スライド作成者がコンテンツ作りに集中しやすくするため
スライド作成のルールを定める
Kyash Slide Kitの3つの構成要素のうち、まずはじめに着手したのが「ルール」です。
ルールは細かすぎると覚えることで疲弊しますが、ルールが無い場合は道に迷い、あらゆる場面で逐一選択をし続けなければならず大変です。
そのため、Kyash Slide Kitでは一定の「スライド作成時に迷わないルール」を定めました。
大切なことは大きく3つです。
大きな3つのルールの各項目の中身も基本的な選択肢は3つ、というようにとにかく覚えやすく、忘れてもまたインプットに時間のかからないようにしています。
もちろん基本の3つ以外にもルールはありますが、そこまで多くありません。
①余白を確保する
②フォントを統一する
③文字と色は基本3択から選ぶ
レイアウトパターンを想定してデザインする
ルールを定めたら、次はそれに沿ってスライドのレイアウト集をつくるため、各ページのデザインをしていきます。
まず、現場ではどのような内容のスライド資料が作られているか、社内のスライド資料を調べました。資料の内容やデザインの傾向からレイアウトパターンを分類して、レイアウトパターンをデザインしていきます。
そうすることでスライド作成者は「レイアウトを考える」のではなく、「レイアウト集の中から選ぶ」ことになります。そのため、できる限り資料をデザインするコストをかけることなくスライド作成ができるようになります。
特に力を入れてデザインしたのはスライド資料の要になる本文ページです。
本文ページは、ついつい要素が多くなりすぎたり混沌となりやすい傾向にあった為、以下のように「カラム(段組み)」の考えを導入・共有しました。
上記の画像のように、ページの中で均等な余白を取りテキストや図などの要素を1〜3つのかたまりに分けることで、要素を整理しやすくしています。
加えて、これらのテキストはプレースホルダーを使用しているので、1カラムから2カラムの変更もGoogleスライドの機能「レイアウトを適用」でサクッと変更することができます。
また、ロゴや各種写真素材はGoogleDriveを活用し、そこにブランドリソースを格納しています。社員がいつでもアクセスできるように、そのリンクをポータルサイトやキット内に配置しています。
社内浸透の仕組みづくりいろいろ
スライドのテンプレート集や素材集などを制作しただけではKyash Slide Kitは機能しません。Kyashの社員がこのキットをインプットし、日々の業務の中で活用することではじめて存在する意味が出てきます。
過去のスライドテンプレがあまり活用されていなかったことや、テンプレの存在すら知らない社員がいたことは、社内浸透がうまくされていなかったことが原因だと考えられます。
そのため、本プロジェクトはキットの設計と同等にこのキットの社内浸透が重要でした。
スライドのポータルサイトをつくる
まず、存在を知ってもらうこと、そして、どうしたら迷わずに社員が一貫性を持ってスライドをつくることができるか?を解決するために、ポータルサイトをつくることにしました。
当初は新規でWebサイトをつくるか迷ったのですが、KyashはもともとKibelaを使って様々な情報共有をしているので、社員がツールに慣れていアクセスしやすい為、Kibelaにポータルサイト「Kyash Slide Kit Portal」をつくることにしました。
サイトの構成要素は以下の通りで、ここに来たら既存社員でも新入社員でも「Kyashでのスライド資料作成について何でもわかる」を目指して制作しています。
Kyash Slide Kitとは?
改善要望の窓口案内
Kyash Slide KitのDL方法
スライド資料をつくる上でのルールの紹介
GOODなスライドの10箇条
ブランドリソースの紹介
勉強コンテンツ
勉強会のスライド資料
勉強会の動画
また、ポータルサイトは「SlideKitくれ」など特定のワードを打ち込むとbotが返信するよう設定しSlackで呼び出せるようにしています。
勉強コンテンツをつくる
スライドについて困っていることはないか?と有志の社員にヒアリングした際、わかりやすいテンプレやルールがほしいという要望以外に「そもそも良いスライドって何?というのをデザイナー視点で教えてほしい」というものがありました。
Kyash Slide Kitの説明をするだけではトップダウン感というか、「これは決まりなので守ってね」という話に終始してしまい、興味を持ってもらうことは難しいと思っていました。そこで、ヒアリング時の意見を参考に、このキットをもとにした勉強会ができれば実りある機会にできそうだと考えて、勉強会の為のコンテンツづくりに着手しました。
スライド作成者のほとんどはノンデザイナーです。そのため「デザインの話」にしないように、できるだけ現場に即した内容にすることを意識していました。
制作したコンテンツは以下の通りです。
こだわった点としては、スライドの見た目の作り方だけではなく「GOODなスライド資料とはなにか?」というWhyからはじめること。そして、スライドのデザインに着手する前段階の部分を丁寧に伝えることです。
また、現場での「あるある」などが想像しやすいように、社員のつくったスライド資料を見て「困っていそうなポイント」から逆算してGOOD・BADの例を出したコンテンツを制作。これには参加者から共感するような反応がありました。
スライド勉強会を開催・新入社員オンボーディングに組み込む
勉強コンテンツができたら後は、勉強会に向けて台本原稿をモリモリと書いていきます。
最終的に勉強コンテンツは177ページになりました。もちろん1ページにかける時間はそれぞれ異なり、サラッと流すページも多いとはいえなかなかのボリューム。
情報の共有は長い時間をかけてやればいいというものではなく、全ページ網羅しながら、かつ、できるだけ飽きずに参加してもらうためには60分が適当と考えて台本原稿を書きました。
(当時、参加者に飽きられた瞬間にこの会はオシマイだ…と私のネガティブモードが発動していたので、台本書きつつ実際に喋りながらセクションごと細かくリハーサルし、通しリハを行い、当日は龍角散を喉にぶち込んで発声練習をして挑みました。)(結果、質疑応答も含めて60分以内におさまって一安心。)
勉強会開催のポイント
Kyash Slide Kitのプロジェクト概要記事を社内公開
勉強会の1,2週間前に全社会議で予告
いきなりカレンダーの予定を押さえるのではなく、事前のコミュニケーションで何をやろうとしているのかを伝える
2回に分けて開催
できるだけ全員が参加できるように
スピーカー1人・質問を拾うサポーター1人の2名体制で開催
役割を分けることで進行がスムーズに
参加者が会の途中でも質問をしやすい環境をつくる
録画の活用
後に録画動画も公開することで、参加できなかった人へサポート
動画は勉強会後に入社した人へのオンボーディング資料としても活用
勉強会の終了間際にアンケートへ誘導
振り返りがしやすくなる
アンケートでは「Kyash Slide Kitの目的認識が合っているか」「実際に使いやすそうか」などを中心に聞きましたが、9割以上の社員から良い回答を得ることができました。
以下、寄せられたコメントが主催側としてはとてもありがたいものでしたので一部引用します。
アンケート結果に社員のみんなのある程度の「腹落ち」が見えたことが最も良かった点だと思っています。納得して使ってもらうのが一番良いので。
さいごに
このKyash Slide Kitはver.1.0としてリリースしました。これは「社内のみんながGOODなスライド資料をつくれる仕組み」なので改善を前提としています。
Kyashには「動いて風を知る」というVALUEがあるのですが、それを体現している人が多いためこうした取り組みに対して社員の中にフィードバックを送ってくれる方がいます。そのおかげで、現在のバージョンはver.1.1であり、今はちょうどver.1.2への更新に向けて動いています。
この記事が、今日もどこかで奮闘しているインハウスデザイナーや、スライド資料で困っている方のヒントになりますように!
Kyashでは全方位的に一緒に働く仲間を募集しています。
Design Officeでは、現在デザイナーの採用を強化しています。
今後、できれば数十人規模まで拡大していきたいと思っています。
プロダクトデザインリード
プロダクトデザイナー
UXデザイナー
上記以外にも
アートディレクター
デザインプログラムマネージャー
こちらも現在はまだ募集はかけていませんが、今後ぜひ我こそはいう方はぜひお声がけください!