車椅子ユーザー炎上について
ご無沙汰しております。色々あって久しぶりの更新となります。
今回は「JRに乗車拒否された」旨のブログ記事が炎上した車椅子ユーザーの件について考察したいと思います。
この記事をご覧下さっている方は、既に経緯をご存知かと思いますが、
炎上の発端となったブログのリンクを貼っておきます。
投稿者の伊是名夏子さんはコラムニストとして活動されており、また、社民党の常任幹事もなさっているそうです。
ブログには伊是名氏が4月1日にお子さんとヘルパーさんを伴って熱海に旅行した際、無人駅である来宮駅までのサポートを駅員さんに依頼したところ断られた、という経緯が綴られています。
この件についての伊是名氏の当時の行動および主張が批判を受けています。
批判意見を一部抜粋します。
・JR側の「事前連絡の協力」のお願いを無視し当日突撃している。
他の車椅子利用者にも迷惑だ。
・どうして下調べをちゃんとしておかないのか。
・乗車拒否ではないし、物理的に無理なものを駄々をこねている。
・クレーマーの世話をさせられた駅員が気の毒だ
・100kg近くある車椅子を当日いきなり運ばせようとするのは非常識。
まず、本件の伊是名氏の主張に対する個人的な見解を述べたいと思います。
「車椅子ユーザーが健常者と同じように何処へでも出かけられるよう、交通インフラも対応をして欲しい」
当事者である彼女のこの願いはもちろん否定しません。そうあるべきだと思います。
これは誰にとっても無関係の話ではありません。今は健康で、自分の足で何処へでも行ける立場であったとしても、一生そうだという保証はない。
自分も障碍者という立場になる可能性もあるのです。そしてそれは何時訪れるか分からない。
今、自分が健常者であっても決して関係無いと思わず、身近な問題として考えなければならない事だと思います。
しかし今回伊是名氏がとった行動と、ブログでの主張に手放しで賛同は出来ない、というのが私の見解です。
伊是名氏の「願い」と「手段」
ブログ公開直後に、対談形式での動画配信で伊是名氏は「申し訳ないけど何度でもこういう事をしないと真剣に考えて貰えない」旨の発言をなさっています。そして、今回のトラブルが起こった日は改正バリアフリー法の施行当日です。もし仮に、伊是名氏が故意に事前連絡をしないで、当日対応が可能かを確かめる為に今回の行動を取ったのだとしたら。
それでもその意図には理解の余地はあります。「現状を確かめ訴える」ことは彼女にとっては正当かつ必要な行為だったのでしょう。もし法改正が名ばかりで現実には何も改善されていなかったとしたら、その現状を変える為の行動が必要だという考えに至ったのかも知れません。
しかし対応した駅員さんはやはり大変だったでしょう。もしかしたら伊是名氏は「面倒だから断られた、面倒だから対応してくれないんだ」と解釈なさっているかも知れませんがそんな事はないと思います。対応したくても現実問題そこにリソースを割く余裕がない。そんな理由で断るのはとても心苦しいものです。誰だって困っている人を助けられるものなら助けたい筈です。決して意地悪で断っている訳ではないと思います。
「リソースが足りなくて対応出来ない」は現場で働く人々のせいではありません。その人達には仕組みを変える権限もなければ力もない。変えられるのは組織の中枢、上層部です。そこを動かさないと意味がない。現場の人達に訴えるよりも直接そこへ働きかけた方がいいと思います。伊是名氏は社民党の幹事をなさっている事ですし、名もない一般市民よりも企業を動かせる発言力はお持ちでしょう。
また、本件では結果的に望んだ駅で乗降出来ていますので、「拒否された」という主張は不当であると考えます。記事のタイトルや最初のSNSでの主張は恣意的なものです。JRが最初から最後まで一貫して伊是名氏の要望をつっぱねたかのようにも捉えられる表現です。
JRからすれば無理をして要望を受け入れ対応したのに、「断られた」と吹聴されるのは不名誉なことでしょう。
対応して貰った事に感謝せず、相手に後ろ足で砂をかけるような言動は健常者、障碍者関係なくすべきではありません。
企業姿勢に問題があるかどうかは別として、対応してくれた現場の駅員さん達には感謝をし、決して貶めるような発言をしてはならないと思います。
これに対し伊是名氏は補足の記事で以下のように仰っています。
歩いている人たちが、毎回電車を利用するたびに、「駅員さん、ありがとうございます」と思っていても、それを言葉でわざわざ言うことはないように、障害のある私も同じ状況になるといいなと願っています。
健常者であっても、こちらから声をかけて何か対応して貰った時はその都度「ありがとう」と言います。当たり前の事です。しかし、次のような声も上がっています。
これについては健常者の私には分からない障碍者の方の苦労があるのだと思います。「ありがとうを言いたくないなんて傲慢だ」という声も聞かれますが、自分には分からないから否定するのではなく、分からないからこそその思いを尊重する姿勢が私達健常者には必要なのではないでしょうか。この社会は「健常者基準」で作られているから、その基準に含まれない人達には配慮をして然るべきです。基準に合わない人が生きられないような社会にならないために。
あくまでも彼女の願いは否定しません。しかし、やり方は肯定できない。これが私の考えです。
…という事を述べた上で、それでも私は伊是名氏をこれ以上叩くべきではないと主張します。
人格否定の為の粘着行為はすべきではない
既に批判が殺到しており、それに乗じた伊是名氏に対する人格攻撃や誹謗中傷なども多数発生しています。それを理解していながらこの状況においてもなおこれ以上彼女を叩こうとするなら、それは意図的なリンチであり、伊是名氏を迫害しようとする明確な意思があるものと言えます。
自らが本件に抱く考えが害意のない批判であると思うのなら、否定的な意見は状況を見て控えるべきです。
既に氏の過去の投稿を遡り、新たな批判材料を堀り起こして拡散しようとするユーザーも現れています。炎上が収束しないように燃料を追加してやろうという意思が見てとれます。
本件の伊是名氏の行動や主張についての批判ならともかく、過去のものを掘り返して炎上の最中に投下する行為は氏の人格そのものを攻撃し否定しようとする目的であり、これは到底容認できるものではありませんし、このような粘着加害は即刻やめるべきです。
そもそも批判的感情に基づいてログを遡り相手の過去を詮索するような行いはストーキングと紙一重の異常行動であることを自覚した方が良いでしょう。
また、これ以上炎上が持続・拡大すれば、本人のみならず顔が公開されている伊是名氏の家族やヘルパーさんが嫌がらせに遭う恐れもあります。お子さんが学校でいじめに遭ってしまうかも知れません。こういった加害者の背中を押すのは炎上によって生み出された「叩いてもいい風潮」です。批判には責任が伴いますので、もしこのような最悪な事態が発生した場合、批判をした全ての人に「風潮を作った責任」が生じます。
私達は昨年、炎上が人の命を奪うことを思い知った筈です。どのような形であれ炎上に加担するのであれば、人を殺すかも知れない覚悟、人を傷つける覚悟をして然るべきなのです。自由に、無責任に、感情にまかせて、好きなだけ批判をして良い訳ではありません。
そして、基本的に健常者に合わせて作られたこの社会で、体にハンディキャップを抱えながら生きている人を迫害するような事は決してしてはいけません。(こんな事をいちいち言わなければならない事がそもそもおかしいのですが)健常者として恥ずべき行いであることを自覚すべきです。
炎上発生から10日以上経過し、バッシングは今なお続いています。
これ以上伊是名氏及びご家族が苦しめられることの無いよう、新たな火種が投下されない事を願うばかりです。
炎上・ネットリンチを無くす為の署名活動を行っています。
是非ご協力をお願いいたします。
http://chng.it/h8qqzZWcLy
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