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反動期の高校演劇

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#高校生

反動期の高校演劇 7

反動期の高校演劇 7

反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜⒎「らしさ」をなぞるのではなく、つくるために    ナオミ・クラインの最新刊『NOでは足りない』の副題には「トランプ・ショックに対処する方法」とある。トランプ大統領を生み出したアメリカ合州国は、ポーランドやハンガリーのような、事実上の独裁者が支配し民主主義が機能不全に陥った全体主義国家に近づきつつあり、「ポイント・オブ・ノー・リターン(引き返せない地点)

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反動期の高校演劇 6

反動期の高校演劇 6

反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜⒍コンクール以外の活動が開く、現在の可能性と隘路    私はこれまで、現在の高校演劇について、否定的で悲観的なことばかり書き過ぎたかもしれない。たとえば、飴屋法水と福島県立いわき総合高校との『ブルーシート』が岸田國士戯曲賞を受賞する等、プロの演劇人と高校演劇との協働はこれまでに無いほど進んでいるという見方も可能だからだ。ここで『ブルーシート』を引き合いに

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反動期の高校演劇 5

反動期の高校演劇 5

反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜⒌「らしさ」への異和を表現に高める主体    高校演劇の今昔に思いをはせたのは、『青年演劇一幕劇集【第一集】』(青江舜二郎編、未來社、1959年)の、次のような一節にたまたま目がとまったからでもある。

「ある午後」この作者(岡野奈保美氏)は三年前は高校生で、「向い風」という身売をあつかった作品を書き、それを私(編者の青江氏)が「悲劇喜劇」に推薦した。福

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反動期の高校演劇 4

反動期の高校演劇 4

反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜⒋「らしく」の道徳と「会議の精神」    政治学者の丸山真男は、「らしさ」を重視するのは近代以前の社会、民主主義や討議の精神、科学研究や人権観念等の未発達な社会の特徴だとしている(『日本の思想』)

    こういう社会(徳川時代のような社会)では、権力関係にもモラルにも、一般的なものの考え方のうえでも、何をするかということよりも、何であるかということが

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反動期の高校演劇 3

反動期の高校演劇 3

反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜⒊高校生らしさを産出するコンクールの構造    とはいえ、高校演劇のコンクールはそれ自体として、「高校生らしさ」を評価、産出、拡大再生産する構造を有しており、しかも、それは今に始まったことではなく、おそらく高校演劇の開始以来の問題であろう。そこで高校演劇コンクールの構造を分析する。

(1)上位のプロが下位の高校生を「指導・教化」するコンクール    当

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反動期の高校演劇 2

反動期の高校演劇 2

反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜⒉ 高校生らしさ、それは疑うことを知らぬまっすぐさ、ひたむきさ!    一つだけ例を挙げる。2017年の全国大会(宮城大会)最優秀作、兵庫県立東播磨高校上演の『アルプススタンドのはしの方』は、高校野球県予選の試合をアルプススタンドの端で観戦している高校生4人の話で、舞台設定の妙、巧みな導入、計算された笑いの間、後半の試合展開に観客を引き込む仕掛け等、最優

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反動期の高校演劇 1

反動期の高校演劇 1

反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜反動期の高校演劇〜「らしさ」をつくるために〜  
 目次
⒈ 高校生らしさって何だ?
⒉ 高校生らしさ、それは疑うことを知らぬまっすぐさ、ひたむきさ!
⒊ 高校生らしさを産出するコンクールの構造
   (1)上位のプロが下位の高校生を「指導・教化」するコンクール
   (2)「高校演劇と演劇は別」という差別意識
   (3)「高校生らしさ」という評価基準

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