優しい街、上野

友達と二人で上野のムンク展に行ってきた。

美術館にはよく行くが、正直、アートについて深い理解があるわけではないので、「なんとなく良かった」というような感想で終わることも多い。

ただ、作品を感じ取るために、自分の労力が必要なのが良い。これだけ世界中で長い間多くの人に評価されてる作品が理解できないとしたら、それは自分の感性が足りないのだという感じで、チャレンジ精神が湧いてくるのだ。そもそも頭で理解したり、繰り返し鑑賞することで良さがわかるというものでもないかもしれないが。

そしてその後は「ROUTE BOOKS」というカフェに来た。

駅から少し離れた町工場が集まる路地の一角にあり、中には本や観葉植物が並び、家具の工房も併設されているようなカフェだった。まさしく隠れ家的な空間と呼べるような、センスが良く、心地よい空間だった。

しばらくすると、カフェの中で音大生のフルート生演奏会みたいなのが始まった。15分ほどの短い時間だが、とても濃く感じられた。音色が美しい。特にチャージなんかはなかったが、投げ銭でもしたいくらいだった。

そして、友達と今後何を作っていくかといった作戦会議を終えたあと、カフェの隣にあった展示スペースのような所に立ち寄ったら、佐佐木實さんというアーティストの展示会が開かれていた。そこにご本人もいらっしゃり、作品の解説なんかも直接してもらった。モチーフに込められた意味も深くて面白かった。

恥ずかしながら自分たちが作ったアプリも紹介してみたら「いいね〜!!」と言ってもらえて、嬉しかった。「自分たちで考えて、何かを作るってこと自体がもうアートだよ。君たちアートしてるよ」みたいなことも言ってもらえて無駄にテンションが上がってしまった。僕たちアートしてたんだ。笑

そんなこんなで帰路につき、ふと思ったのが、「上野ってなんかいいなぁ」ということだ。アート作品を見たときに抱く様な感想を、上野の街全体にも感じた。

なんとなく、多様な文化を許容してくれる懐の広さというか、自分なりの表現をするのが当たり前かのような空気感がある。

思い返すと、大学四年生の冬に一度だけ、ギター弾き語りの路上ライブをしたときも、上野だけは優しかった。原宿では誰も振り向かず、新宿では開始3分で警察に怒られ、トボトボとお開きにしようとして最後に挑戦したのが上野だった。他の街と同じ様に歌っていただけなのに、そこそこの人が立ち止まってくれて、投げ銭も2千円くらいいただいた。ベタだが「ちょっと貸してみろ!」とギターを奪ってビートルズを弾きだす陽気なおっちゃんもいた。

いい街だ。上野。

何かに挑戦するにしても、この街なら、誰かが足を止めてくれる気がする。ワクワクすることをしよう。

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