おすすめ本紹介:「ノマドのマドvol.37」より
ノマドプロダクションのメンバーが、ノマド界隈の皆様におすすめしたい情報を紹介していくシリーズ。今回は12/12に配信したメールマガジン「ノマドのマドvol.37」より、2冊の本をご紹介します。
ハーモニー
2020年、思えばずっと、この小説のことが頭の片隅にあった気がする。
2009年に夭折した作家が「病が駆逐された世界」を描いた本書。
体内に仕込む医療分子によって身体の健康がコントロールされ、「政府」ならぬ「生府」によって、生活も、娯楽も、全てが「健康」の名のもとに管理される社会。そうした社会に違和感を覚えながら生きる主人公が、突如世界を襲った混乱の渦中に巻き込まれていく物語である。
考えざるを得ないのは、執筆時、すでに病床にあった作家が、「病なき世界」のグロテスクさを描いていること。本書の中で、人々は、優しく調和した社会で生きるために、自らの身体を管理する権限を、社会に明け渡している。
コロナに限らず、私たちの社会は、常に「病」とともにある。そのことを思うとき、本書の中の一節は、とても重い。
—しかしまさに、この苦痛が生きているということの証であり、命というプロセスの一部なのだ。(p324)
(西田祥子)
生きながらえる術
今も活きている昔ながらのデザインの発想術を振り返る第一部、暮らしの中に求められる技法について語る第二部、生きることに立ち返る芸術についての第三部、そしてさまざまな思想家による考える術を知る第四部。結論や提言といったまとめのような記載はないが、この中に収められているデザイン、芸術、技法、思想を多角的に掘り下げた文章には、今の自分たちのコロナ禍の生活を、なんとか生き抜くためのヒントが詰まっているように感じる。目の前の事象に簡単に左右されないよう、物事を見つめる解像度を高めたいと思わせてくれる一冊です。
(田村悠貴)