野窓 礼峰
瞬間を切り取る。
夢のような時間のこと。
「九死に一生を得たんやから...」 僕の心に住んでいるやさしい言葉 優しさという花に囲まれているにもかかわらず 曇り空ばかりの日々 次第に雨が降る あまりにも速く通り過ぎる雨粒ひとつひとつ 地に砕けて消え去る 消えたと思ったそれらは空へ空へ 吸い込まれてまた地を濡らす 濡れた唇で囁かれる甘い物語 急須から注がれる熱いお湯 緩やかな時間の流れが あなたと私をただよう
──腐った死体って、腐った魚の臭いだよね。 誰かがそんな事を言っていた。その時その言葉は正確である気がしたものだ。だが腐った魚というのを実際に目にした機会はないはずだ。そういうものを扱う業者、漁師は別である。スーパーの魚は冷やされて新鮮であるし、寿司なんかも新鮮でなければ提供できないはず。だがなんとなく腐った魚のイメージができるのは何故だろう。漁港のあの独特の匂いだろうか。どこか甘ったるくそれ故に不愉快な。思えば何故良い匂いと嫌な匂いがあるのだろう。 ──この度は誠に
雨の降った駐車場 地面が空を映す 逆さまになった夜空は オレンジ色の看板やヘッドライトで賑やか 砕けた思いや 滲んだ後悔 悲しい記憶がないまぜに 花火のように打ち上がる 今日も嫌な日だった! なんて惨めったらしい人生だ! 明日もこんな日を迎えてしまうのだろうか 昨日もこんな日だったかもしれない けど もしかしたら 明日は素敵な日になるかもしれない もしかしたら 昨日は良い日だったのかもしれない あまりにも儚い願い しかしそれが明日と今日と昨日を繋げている
田村隆一のエッセイが面白い。少しクスッとするような場面がチラホラ。遠藤周作もそうだけど笑える文章を書く人が本物だと思う。悲しい話なんて人殺せばそれっぽくなる。本屋に行って「余命〇〇」など切なそうなタイトルを見ると一気に白けた気持ちになる。どうせお涙頂戴ものだろ、と。私はそんな稚拙な妄想話に付き合ってはいられない。一時期流行った「君の膵臓を食べたい」もしょうもなかった。特に最後の主人公の名前がわかるシーン、寒かった。 登場人物死ぬような話はもう使い古されている。だから新鮮味
どんなに美しいものにも 終わりは必ずやって来る 僕はそんな事を気にかけず 美しい世界に飛び込んだ 思いがけず 熱くなる心が 夢中になって 目の前で踊り狂う 本能だけの世界 美しいものだけが絶対で 醜いものは無かった そんな馬鹿げたお祭りが終わり まだ刺激を求め続けた ある日のこと なにげない 当たり前の日常、会話に触れた時 それ以上のものは要らない と誰かが教えてくれた すると あの狂乱の日々が嘘のように 醜くなり 鬱屈した思いも 未練も無くなった 美しい物
業務責任者ほど心臓に悪い業務はない。朝は眠く、時間が経てば経つほど集中力、判断力が低下する。あと4、5人居れば悩みも解決するのだが、どうにもならない。人手不足の会社なんてごまんとあるだろう。要は慣れればいいのだろうがまだそこに達することができない。 上司がみんな可哀想である。客に頭を下げて、より偉い人に怒られ...。彼らは何をモチベーションに生きているのだろうか?家族?出世? とにかく業務責任者の間は神に祈ったり、マザーテレサを本をカバンに入れたりしている。実にみっとも
風呂に落っこちた虫を助けようと 手で掬ったら指を噛まれてしまった 助けてやろうとしたのになんと恥知らずな奴 それが私の驕りなのだろう それが私の物の見方なのだろう それが私の全てなのだろう 必死さを嘲り 己は努力を怠り 現在がある 歪んだ脂肪のかたまり どこに何が垂れ下がろうとも 掴まる気力がない
荒川洋治の『文学の空気のあるところ』を読み始める。昭和は文学全集ブームで...。と昭和文学について話すシーンで、あぁ、もう文学なんて流行って無いんだなと思わされた。新聞かネットの記事で月に一冊も本を読まない人が6割居ることを知る。読まない事についてはいま本より面白いことなんてたくさんあるから仕方ない。それよりも流行ってないコンテンツから面白いものなんて生まれないことを悟った。散々最近の本はつまらないなどとぼやいているが、起こるべくして起きている事態なのだ。こんな当たり前のこ
石崎ひゅーいの「season2」という歌がサブスクで聴けるようになった。一回目はなんだか微妙だなと。二回目は意外と良いんじゃないか。その後歌詞を見たりして何回も聴いている。すっかり好きな歌になった。今新曲を楽しみにしているのはひゅーいくらい。 この前と友人と話してると「〇〇君(私の事)はやっぱり歌詞を重視してる感じだね」と言われた。だが最初から歌詞を見る事はまずない。曲がよければその次に歌詞を見るから、どっちがどうなんだろう。よくわからない。あまり深く考える必要はないかも
あなたがいなくなった あの日 あなたは泣いていた その涙の理由を 探そうとも 知ろうともせず 怖くなって逃げた 青空をじっと見つめていると 不意に涙が滲んだ 晴天の日の昼下がり あなたを知ろうともしなかった私は 私の事すら知らないまま 揺れる想いを じっと抱えたまま ただ なんとなく 扉の前に立っている
どんな人も生きてていい 「当たり前」 のことなんだけれども どうやらそれが否定されることも 世の中にはあるみたいだ 僕は僕自身の事が恥ずかしい 存在が 言動が 見た目が 作り上げた言葉はみっともないし 思考も幼稚 苦い過去が不意に目の前を通過する ──あんな事しなければよかったのに ──どうしてあんな事をしたのだろう ──勇気を出さなければ ──あの時勇気を出していれば ...。 僕は決して死にたいなどとは思わない けれども僕は恥ずかしい存在で ときどきどこかに消
人と人を結びつけた先に 一つの後悔が呼び起こされる スイカがごろごろと転がって... 行き着く先は真っ暗闇 心の中で別れを告げたはずなのに もう会えないとわかっているのに 傷んだ脳は後ろへ、後ろへ、後ろへ 誰かの話は退屈で 何度も聞かされて けどそんな当たり前の話が 心の中に入ってきて 苦しみも 辛さも みんな優しい思い出 スイカがごろごろ... あれは昭和の話 これは今の話 どうにもならない時間が過ぎていく
甘くもくどくもない 中間地点の無味無臭を漂う さしずめ私は陸のクラゲ
私は凶 あなたは 小吉 あらかじめ決められた運勢 私達の未来は何処にもなく 自らその縁を断ち切った
久々に書く。 6連勤して2日の休み。その休みも終わろうとしている。本屋に行って珍しく漫画を買ったりした。次の巻が楽しみ。漫画はほとんど読まないが久々に当たりを引く事ができた。 最近は特に何をする気力もなく本を読んだりしている。昨日ら福永武彦の『死の島』を途中まで。じっくり読んでいると面白い。今日は芝木好子の『冬の梅』読了。本当に味わい深い。 眠くなって横になるも急に頭が冴えてくる。読んだ本の登場人物が活き活きと頭の中で動き始める。脳味噌の中に家がある感じ。なんだか賑
胸高鳴った夏の日 どうしても手に入れたいものがあった 紅い太陽が天まで昇る ──何故? と私が呟く 羞恥とは得難い体験の一つとして 記憶とは失うことのできない存在として どこまでも付いてくる 砕けた心の一つ一つに命が宿る 見て見ぬふりできぬ光源のように 私の記憶は痺れ動けない ──いいんだ、それで ──仕方がなかったんだ、それは また私が呟く ──バイバイ ──また明日 ──それじゃ ──また今度 ──さよなら ──さよなら 同じ符号 同じ言葉が意味するもの