過去を振り返れない男
一般ダメ大学生の朝は遅い。
今日はたまたま十時半頃と早めに起きられたが、長時間腹痛に襲われてトイレに拘束されてしまった。
不覚。
起きたばかりから天気も悪く、なかなかやる気が出ないという言い訳のもと、まるで祭りの夜に屋台の電球へと群がる虫のように、体はブルーライトに惹きつけられていった。
本日は主戦場ではなく、Extra Stageで誘惑と戦っていた。
今日の難敵はデスクトップPCである。
PS4にはない雑多なゲームを取り揃えている、ハイパフォーマンスな、鈍い黒色に輝く鉄の要塞は、課題の期限をぶっちぎってしまいたくなるほどに魅力的に見えた。
冷蔵庫から飲み物と、カントリーマームも携帯した俺には、既にゲームをする以外の選択肢はなかった。
気づいたら四時になっていた。
ゲームでもこっぴどく負けた俺は、考えを改めて、主戦場へと戻った。
負けた後、少しの空白の時間があるたびに、刻一刻と迫る課題の期限を思い出しえては自責の念を抱いた。
居たたまれなくなった俺は、ようやくいつもの場所に腰を据えて、課題の宝庫である、ノートパソコンに向き合った。
既にまじめに課題を消費しようと決めていたのだ。
そんな俺の視界に、PS4のコントローラーがちらついた。
それから、脳内にはあらゆる理由がでっち上げられた。
負けた後に課題をするのは気が進まないとか、一戦するだけならダメじゃないとか。
だが、既に言い訳を考える時間ももったいないほど、鉄の要塞との戦いで時間をつぶしてきてしまったので、すぐにでも決断をしなければいけない。
俺は、一戦だけやって終わることに決めた。
結局主戦場でも誘惑に負けた。
まだ、真面目な大学生としての一途をたどるには早かったみたいだ。