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牧瀬先生に聞く!地方創生・まちづくり・政策づくりのヒント【第4回】

教えてくれた人:関東学院大学法学部教授 牧瀬稔先生
聞き手:自治体総合ニュース 柴田

皆様は「条例」と聞くとどのようなイメージがありますか?
私は自治体職員ではないので、難しいな…という印象があります。
昨今では全国でユニークな条例が制定され、まちづくりにも様々な活用がされているようです。
今回はその「まちづくり」と「条例」について、お話をお聞きしました。

まちづくりと「条例」について考える

ーー条例ってそもそも何ですか?

 条例は、地方自治体が国の法令の範囲内において制定する「自主法規」(自治立法)です。地方議会の議決によって制定されます。
地方自治体が、住民に義務を課し、住民の権利を制限するためには、法令に特別の定めがある場合を除くほかは、必ず条例によらなければいけません。

ーーまちづくり分野での条例は、どのようなものがありますか?

 まちづくり分野においても多様な条例があります。最近の新聞報道でも、ハロウィーン路上禁酒条例(新宿区)、シニアの地域活動を後押しする条例(佐野市)、ユニバーサルツーリズム推進の条例(兵庫県)、SDGs条例(登別市)など、多岐にわたっています(検討中も含みます)。地域の実状に応じで、課題解決に向けて条例化する傾向が強まっています。

ーー条例はなぜ必要なのですか?

 条例の意義としては、以下の4点が挙げられます。
 第1に「継続性が確保」されます。
 条例がある限りは、政策(施策や事業を含む)が継続的に実施されます。首長が交代になると、政策が断絶されるケースがあります。しかし、条例が廃止にならない限りは、継続的に政策が進むことになります。特にまちづくりは継続性が重要であるため、条例化の意義は大きいと考えます。
 第2に、条例に基づく「予算の確保・拡充」があります。
 条例は予算を確保し拡充する根拠となります。予算があれば、多様な政策を展開することができます。第1の意義と重複しますが、予算の確保・拡充に基づき、政策が継続的に実施される可能性があります。政策が実施されれば、まちづくりの実効性が高まります。
 第3に、条例は「法的根拠を有する」ため、裁判に耐えうる点も意義です。
 法的根拠に関連して、条例は罰則規定を設けることができます。下記図表が条例上の罰則になります。この罰則規定により、違法行為の芽を摘みとる可能性があります。また罰則規定でなくても、条例に違反した場合、条例を根拠にして氏名公表の規定を用意することは、社会的制裁措置の意味があり、大きな効果を有します。

条例上の罰則

 第4に、条例の存在は住民の意識を変える一手段となりえます。
 条例を根拠にして、まちづくりに関する情報公開と啓発活動を進めることにより、住民の意識が触発され、行動変容が起きる可能性があります。
そのほか条例の意義は多数あると思います。まちづくりを進める上で、条例化することは、良い効果を導出するでしょう。

ーー条例の制定は、メリットが多そうですね!?

 そうですね。ただし、注意すべき点もあります。
しばしば「理念条例であるから制定してもよい」という意見があります。この考えは、私は間違いと考えています。たとえ理念条例であっても、地方自治体の持つ一定の価値観を住民に押し付けることになります。条文に書いた内容を住民に押し付ける可能性があります。その意味では、理念条例の制定でも、慎重に検討していく必要はあるでしょう。
 また、まちづくりは時代とともに変化していきます。その意味では「一度制定したら終わり」ではなく、定期的にブラッシュアップしていかなくてはいけません。制定する条例に「見直し規定」を入れておくことも一案です。条文の見出しは「条例の見直し」として、「第●条 この条例は、第1条に規定する目的の達成状況を評価した上で、この条例施行の日以後3年ごとに見直しを行うものとする」と書きます。同条文があることにより、必ず3年ごとに見直しが行われることとなります。

ーーーー地域と共に活動する行政にとって、「条例」は必要不可欠なもので、今後はより制限したり義務を課すだけでなく、様々な施策や行動につながるようなデザインや意図性持ち設計される必要があるのではないかと感じました。
皆さんのまちの条例もそうした目で見てみると、面白いものが見つかるかもしれません!牧瀬先生、ありがとうございました!