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「広く浅く」だから見えることもある

先日、京都で参加した「都市と循環」。

「循環」というひとつのキーワードを元に、様々な分野の識者たちが集うイベントでした。

後日、ある友人と会ったとき、このイベントの話をすると、友人がこう聞いてきました。

「『都市と循環』っていうテーマを見て、なんで参加しようと思ったの?翻訳の仕事と全然関係ないでしょ?」

私が「最近、まったく関係ないことに興味があるんだよね」と答えると、友人はこう言います。

「でも、普通そんなイベントを見つけたとしても、わざわざクリックして内容を読もうなんてなかなか思わないよ」

「なんで?」と私が聞くと、友人は、「専門じゃないから」と。

なるほど。これは新鮮な驚きでした。

確かに、専門を深く追求している人ほど、異なる分野に興味を広げることはなかなか難しいのかもしれません。

現に、この友人は、ある分野でPh.D.(博士号)を持つ「専門家」です。現在もその分野を追求しています。

それに対して、私はというと、「広く浅く」派です。
(まあ、といっても、最初から「広く浅く」を目指したわけではなく、結果的にそうなっただけのことではありますが(笑))

これまで、ファイナンシャルプランナーの資格を取ってみたり、いろんな分野の翻訳の仕事をしてみたり。翻訳の仕事を始める前は、出版社で参考書を作っていたこともあります。

そして、今の特許翻訳の仕事でも、日々触れる情報の振り幅はなかなかに大きいです。

特許翻訳者は一般的に、「化学」、「電気」、「機械」のいずれかの分野で登録し、その分野に関連する仕事を翻訳会社から引き受けます。

私は、「機械」の分野で登録してはいるものの、引き受ける案件はかなりバラエティに富んでいます。

コーヒーメーカーの案件を受けて、頭の中がコーヒーの知識でいっぱいになった直後に、医療機器の案件に取りかかり、心臓について調べる。そんな日常です。

「専門家」とは真逆の生活かもしれません。

でも、このような生活の中で、不思議と、「コーヒー」と「心臓」がリンクする瞬間を感じることがたびたびあります。それは仕組みだったり、概念だったり。たとえば、心臓のポンプ機能を考えるときに、コーヒーメーカーの案件で調べた液体の流れや圧力の仕組みがふとつながる、という具合です。

別の例を挙げると、先日、抽象画家の松谷武判さんの美術展で、ミュージアムショップに並んでいた『センス・オブ・ワンダー』という本を購入して読みました。自然への驚きや感動を心に留め、次世代へ伝えることの重要性を説いたエッセイです。文章も写真も素敵な作品です。

そして、後日、『暗闇の効用』というまったく関係のない分野の本を読んでいたところ、文中に『センス・オブ・ワンダー』の作者である「レイチェル・カーソン」さんの名前が登場し、この2つがつながったことに驚きました。

考えてみれば、『暗闇の効用』は、大まかには、「人工の光が生態系に及ぼす影響を明らかにし、失われた闇を取り戻す重要性を訴える」という内容なので、作家であり、同時に海洋生物学者としても活躍していたレイチェル・カーソンさんの名前が登場するのは不思議なことではありません。

でも、この2つが結びついた瞬間は、私にとって新しい発見でした。

このように、異分野に触れる中で「つながり」を感じることは一度や二度ではありません。すべての分野はどこかでつながっているのではないか、と感じることさえあるほどです。

分野の表面を見ると異なるように見えても、引いてみれば、実は同じものの別の側面を見ているだけなのかも。

こうした「つながり」に気づく瞬間はとても楽しいです。だからこそ、これからも引き続き、多種多様な分野に積極的に触れていきたいと思っています。













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