パワーリフティングへの招待状 – 基礎から競技まで、強さの探求
ターゲット読者
● パワーリフティングに興味を持ち始めたばかりの方
● パワーリフティングの競技について詳しく知りたい方
● 試合を目指した日々のトレーニングの方向性を知りたい方
● いまさら人に聞けない基本知識を知りたい方
はじめに
「パワーリフティング」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか? 一部の限られた人だけが挑戦する、特別な競技だと思っていませんか? 実は、そんなことはありません。パワーリフティングは、誰もが始められる、そして、奥深く追求できる、魅力あふれる競技なのです。
基本となるのは、ウエイトトレーニングの代表格である、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目(BIG3)。これらの種目は、全身の筋肉を効果的に鍛え、基礎体力を向上させるため、多くのトレーニーに親しまれています。普段のトレーニングでBIG3に取り組んでいる方なら、パワーリフティングの世界へスムーズに足を踏み入れることができるでしょう。
パワーリフティングの魅力は、何と言っても、自分の成長が「数字」として明確に表れること。目標設定がしやすく、達成感を味わいやすいので、モチベーションを高く保ちながらトレーニングを続けることができます。また、年齢や性別に関係なく、幅広い層が楽しめるのも特徴です。ジュニアからマスターズまで、年齢別のカテゴリーが設けられており、それぞれのレベルに合わせて競技に参加することができます。
この記事では、パワーリフティングの基礎知識から、各種目の正しいフォームつくりのヒント、競技ルール、さらには試合での心構えまで、幅広く解説していきます。初心者の方でも安心して始められるよう、丁寧にナビゲートします。
さあ、あなたもパワーリフティングの世界へ飛び込み、強さの探求を始めましょう!
目次
1. パワーリフティングとは? – その魅力と可能性
2. パワーリフティングの競技ルール – 3種目の詳細解説
3. スクワット – キング・オブ・エクササイズを極める
4. ベンチプレス – 上半身の骨格基盤を作る
5. デッドリフト – 全身のパワーを引き出す
6. いざ、試合へ! – 競技会参加の準備と心構え
パワーリフティングを、もっと楽しむために
1. パワーリフティングとは? – その魅力と可能性
パワーリフティングは、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目で、それぞれどれだけの重量を挙げられるかを競う競技です。シンプルながらも奥深く、単なる力比べではなく、技術、戦略、そして精神力が試されます。
パワーリフティングの魅力
● 成長の実感: 記録が数値で明確に表れるため、自分の成長を実感しやすい。
● 目標設定のしやすさ: 具体的な目標重量を設定しやすく、モチベーションを維持しやすい。
● 全身運動: 全身の筋肉をバランス良く鍛え、基礎体力を向上させる。
● 年齢・性別不問: 幅広い年齢層、性別を問わず、誰でも楽しめる。
● 達成感: 自己ベストを更新した時の達成感は、格別。
● コミュニティ: 同じ目標を持つ仲間との交流が生まれる。
ワンポイントアドバイス:パワーリフティングジムや、競技会を見学してみるのも良いでしょう。実際に競技に触れることで、パワーリフティングの雰囲気を肌で感じることができます。
2. パワーリフティングの競技ルール – 3種目の詳細解説
パワーリフティングの試合では、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの順に試技を行います。各種目3回ずつ試技を行い、成功した中で最も重い重量が記録となります。3種目の合計重量(トータル)で順位を競います。
試技の判定
各試技は、主審1名、副審2名の計3名によって判定されます。審判は、選手のフォームや動作を厳格にチェックし、成功(白)または失敗(赤)の判定を下します。3名のうち2名以上が白判定を出せば、その試技は成功となります。
各種目のルール
● スクワット
1. 準備: バーベルを肩に担ぎ、ラックから2~3歩後ろに下がります。足幅やバーベルを担ぐ位置は、自分に合ったスタイルで構いません。
2. 合図: 主審の「スクワット!」の合図で、しゃがみ始めます。
3. しゃがみの深さ: 太ももの付け根(ヒップジョイント)が、膝のお皿の上面よりも低い位置までしゃがむ必要があります。
4. 立ち上がり: しゃがみ込んだ状態から、止まらずに立ち上がります。
5. フィニッシュ: 完全に立ち上がり、静止した状態で、主審の「ラック」の合図を待ちます。
6. ラック: 合図に従い、バーベルをラックに戻します。
○ 主な反則:
■ しゃがみが浅い(規定の深さまでしゃがんでいない)
■ 立ち上がりの際に、バーベルが一旦下がる(ダブルモーション)
■ フィニッシュの姿勢が不十分(膝や腰が伸びきっていない)
■ 審判の合図を無視する
● ベンチプレス
1. 準備: ベンチ台に仰向けになり、バーベルを握ります。握り幅は、人差し指が81cmラインの外側に出ない範囲と定められています。
2. スタートポジション: 頭、肩、お尻をベンチ台に、両足を床にしっかりとつけ、肘を伸ばした状態でバーベルを保持します。
3. 合図: 主審の「スタート」の合図で、バーベルを胸に下ろします。
4. 胸へのタッチ: バーベルを胸につけて静止します。
5. プレス: 主審の「プレス」の合図で、バーベルを押し上げます。
6. フィニッシュ: 肘を完全に伸ばしきり、静止した状態で、主審の「ラック」の合図を待ちます。
7. ラック: 合図に従い、バーベルをラックに戻します。
○ 主な反則:
■ バーベルが左右に大きく傾く
■ 押し上げの際に、バーベルが一旦下がる(二段モーション)
■ 頭、肩、お尻、足のいずれかが、ベンチ台または床から離れる
■ 肩のより肘が下りない(2023年から施行)
■ 審判の合図を無視する
● デッドリフト
1. 準備: バーベルに対して足幅は自由に構えます。
2. リフト: 合図はありません。自分のタイミングで、バーベルを引き上げ始めます。
3. 引き上げ: バーベルを床から引き上げ、膝を伸ばし、体をまっすぐにします。
4. フィニッシュ: 腰を前に出し、肩を返して、完全に直立した姿勢で静止します。
5. ダウン: 主審の「ダウン」の合図で、バーベルを床に下ろします。
○ 主な反則:
■ フィニッシュで肩が後ろに引けていない(直立できていない)
■ 引き上げの際に、バーベルが一旦下がる
■ フィニッシュで膝や腰が曲がっている
■ バーベルを揺すって反動を使う
■ バーベルを途中で落とす、または手を離す
■ 床でバウンドするほど雑に下ろす
■ 審判の合図の前にバーベルを下ろす
ワンポイントアドバイス:日本パワーリフティング協会のホームページで、最新のルールブックを確認しましょう。ルールは変更される場合があります。
3. スクワット – キング・オブ・エクササイズを極める
ここからはルールではなく、日ごろのトレーニングに役立つビッグ3のフォーム作りヒントを中心に解説していきます。最初はスクワットです。スクワットは、「キング・オブ・エクササイズ」とも呼ばれ、全身の筋肉を効果的に鍛えることができる、非常に優れた種目です。パワーリフティングの競技種目であるだけでなく、あらゆるスポーツのパフォーマンス向上、さらには日常生活の動作改善にも役立ちます。
スクワットのポイント
● 担ぎ方:
○ バーベルと自分の体が一体化する場所にしっかりと乗せます。
○ グリップは、手首や肘、肩に負担がかからない範囲で少し狭く握ります。
○ バーベルと足の間に自分の骨格が入るようにまっすぐ担ぎます。
● スタンス:
○ 足幅は、自分が一番楽に深くしゃがめる幅にします。
○ つま先の向きも楽にしゃがめる向きにします。
○ 重心は、足裏全体にかかるように意識します。
● 動作:
○ 股関節と膝を動かしやすい順番で、しゃがんでいきます。
○ 太ももの付け根(ヒップジョイント)が、膝のお皿の上面よりも低い位置まで、しっかりとしゃがむ意識を日ごろから持ちます。
○ 体幹部は極端に丸めたり反らしたりせずにまっすぐな状態をキープします。
○ 膝が多少つま先よりも前に出たり膝が内側に入っても人によっては気にしなくていいです。
○ しゃがみ込んだ状態から、滑らかにリズムよく立ち上がります。
○ 立ち上がる際は、しゃがんできた軌道と同じ軌道を戻って立ち上がります。
● 呼吸:
○ 重量に応じた呼吸を心がけて極端に体を固める呼吸は避けましょう。
○ しゃがんだボトムポジションで呼吸を吐いたり吸ったりするのはやめましょう。
● 目線:
○ 目線は、基本的に水平方向ですが人によってやや上や下を向きます。
○ 目線はどこか一点を固定してみるのではなく全体をぼーっと見ましょう。
ワンポイントアドバイス:撮影できる環境なら、動画を撮影して客観的にチェックするのも効果的です。
4. ベンチプレス – 上半身の骨格基盤を作る
ベンチプレスは、大胸筋を中心に、上腕三頭筋、三角筋など、上半身の筋肉を総合的に鍛えることができる種目です。厚い胸板、太い腕を作るだけでなく、上半身の骨格基盤を作るイメージで行うと効果的です。
ベンチプレスのポイント
● グリップ:
○ バーベルの握り幅は、人差し指が81cmラインの外側に出ない範囲で、自分に合った幅で握ります。
○ 手首は自然に寝かせて、バーベルが手の中でずれない位置にホールドします。
● ブリッジ:
○ 肩甲骨を安定させ、背中にアーチを作ります(ブリッジ)。
○ ブリッジを作ることで、肩関節への負担を軽減し、腕の通り道が出来て、より安全に高重量を扱うことができます。
● 動作:
○ バーベルをラックから外し、肘を伸ばした状態で保持します。
○ 足を踏ん張りながらバーベルを下ろします。
○ バーベルを切り返す場所や深さは人によって違うのでやりやすい場所で良いです。
○ ボトムからスムーズにリズムよくバーベルを押し上げます。
○ 肘がロックするところまでしっかりと伸ばします。
● 呼吸:
○ バーベルを下ろす前や下ろす瞬間に息を吸い、止めながら下ろします。
○ 回数を行う際は、息を止め続けることにより力を発揮しやすくなります。
● 目線:
○ バーベルを見る人もいればあまり見ない場合もあります。
○ 目線を動かしすぎると不安定になるので注意が必要です。
ワンポイントアドバイス:ベンチプレスは軽い重量で正しいフォームを習得することが大切な種目です。常に高重量ではなく軽い重量の技術練習も意識しましょう。
5. デッドリフト – 全身のパワーを引き出す
デッドリフトは、背中(脊柱起立筋、広背筋など)を中心に、脚、臀部など、全身の筋肉を動員する、非常にパワフルな種目です。全身の筋力アップ、基礎代謝向上、姿勢改善など、さまざまな効果が期待できます。
デッドリフトのポイント
● 準備:
○ バーベルに対して自分に足幅に合った前後の距離で構えます。
○ いきなりバーベルを握りにいかずに安定した姿勢を作ります。
○ バーベルに対してまっすぐ身体を沈めて握りに行きます。
● グリップ:
○ バーベルの握り方は、オーバーハンドグリップ(順手)、オルタネイトグリップ(片方を順手、もう片方を逆手)、フックグリップなどがあります。自分に合った握り方を選びましょう。潤手の場合はストラップ必須です。
○ 手幅は、基本は肩幅程度で、そこからやや広めややや狭めが一般的です。
● 姿勢:
○ 背中をまっすぐに保ちます。
○ 股関節と膝をバランスよく曲げます。
○ 肩の力を抜き、腕もリラックスさせます。
● 動作:
○ バーベルは引きつけるのではなくまっすぐ床から引き上げます。
○ バーベルは身体に近づきすぎず離れすぎず、体に沿わせるように、まっすぐ上に引き上げます。
○ 股関節と膝を伸ばし、体を直立状態にします。
○ フィニッシュでは腰を前に出し、肩を返します。
○ コントロールしながら、バーベルを床に下ろします。
● 呼吸:
○ バーベルを引き上げる際に息を吸い、動作中は息を止めます。
○ 回数練習をする際は、息を止め続けるか、素早く呼吸をする事により力を発揮しやすくなります。
● 目線:
○ 目線は、前方やや下から正面を見るようにします。
○ 引き上げていく中で自然と目線は正面から上に向く感じになります。
ワンポイントアドバイス:デッドリフトは、腰が丸くなると負担が大きい種目です。正しいフォームを習得し、無理のない重量から始めることが重要です。
6. いざ、試合へ! – 競技会参加の準備と心構え
パワーリフティングの競技会は、自分の実力を試す絶好の機会です。日頃のトレーニングの成果を発揮し、自己ベスト更新を目指しましょう!
試合前の準備
● ルール確認: 競技ルールをしっかりと確認し、反則にならないように注意しましょう。
● 持ち物:
○ シングレット
○ Tシャツ
○ 各種シューズ
○ ベルト
○ リストラップ
○ ニースリーブ
○ ソックス
○ ハイソックス(デッドリフト時に着用)
○ 滑り止め(液体チョークなど)
○ 霧吹き(背中に吹いて滑り止め)
○ シッカロール(デッドリフト時に大腿部に塗り滑りをよくする)
● ウォーミングアップ: 試合当日は、ウォーミングアップが込み合う可能性が高いです。計画的に行い、体の状態をベストに持っていきましょう。
● 食事: 試合前は、消化の良いものを食べ、エネルギー切れを起こさないように注意しましょう。また、試合中もこまめな栄養補給と水分補給をしましょう。
● メンタル: 緊張しすぎず、リラックスして試合に臨みましょう。
試合当日の流れ
1. 受付: 会場に到着したら、受付を済ませ、試技カードなどを受け取ります。
2. 検量: 決められた時間内に、体重測定を行います。
3. コスチュームチェック: 競技で使用する服装や道具を、チェックしてもらいます。
4. ラック高さ申請:スクワットとベンチプレスのラックの高さを事前に申請します。
5. ウォーミングアップ: 指定されたウォーミングアップエリアでおこないます。
6. 試技: 自分の順番が来たら、プラットフォーム(試技を行う場所)に上がり、試技を行います。
7. 試技が終わったら次の申請重量を1分以内に受付に申請します。
8. 結果発表: 全ての試技が終了した後、表彰式が行われます。
ワンポイントアドバイス:試合会場では、他の選手のペースに巻き込まれないように、自分のペースを守りましょう。また、試合後は他の選手と交流したりするのも良い経験になります。
7. パワーリフティングを、もっと楽しむために
パワーリフティングは、単なる筋力トレーニングではなく、自分自身の限界に挑戦し、成長を実感できる、素晴らしいスポーツです。ここでは、パワーリフティングを長く続け、さらに楽しむためのヒントをご紹介します。
目標設定
明確な目標重量を設定し、計画的にトレーニングに取り組みましょう。短期的な目標(例:今月の自己ベスト更新)と長期的な目標(例:1年後の大会で入賞)の両方を設定すると、モチベーションを高く維持できます。目標は、具体的であればあるほど効果的です。「BIG3の合計を500kgにする」「ベンチプレスで100kgを挙げる」など、数値目標を立てるのがおすすめです。
記録をつける
トレーニング内容(種目、重量、回数、セット数)や、その日の体調、気づいたことなどを記録しましょう。記録をつけることで、自分の成長を客観的に把握でき、トレーニングの改善点を見つけやすくなります。手書きのノートでも、スマートフォンのアプリでも、自分に合った方法で記録を続けましょう。
フォームの改善
正しいフォームを習得し、維持することは、怪我の予防と記録向上のために非常に重要です。定期的に自分のフォームを動画で撮影し、客観的にチェックしましょう。経験豊富なトレーナーや、パワーリフティングの仲間にアドバイスを求めるのも良い方法です。
変化を取り入れる
いつも同じトレーニングメニューばかりでは、体が慣れてしまい、成長が停滞することがあります。定期的にトレーニングメニューに変化を加え、新しい刺激を与えましょう。例えば、以下のような方法があります。
● 種目のバリエーション: スクワットなら、ハイバースクワット、ローバースクワット、フロントスクワットなど、バリエーションを取り入れる。
● 補助種目の追加: BIG3だけでなく、ボディメイクトレーニングなど、個別の筋肉を鍛える補助種目を取り入れる。
● セット数・回数の変更: 毎回同じセット数・回数ではなく、周期的に変化させる(例:高重量・低回数、低重量・高回数)。
● トレーニング頻度の調整: 週3回のトレーニングを、週4回に増やしたり、逆に週2回に減らして休養を増やしたりする。
休息もトレーニング
筋肉は、トレーニングによって破壊され、休息によって回復・成長します。十分な睡眠と栄養補給を心がけ、体をしっかりと休ませましょう。オーバートレーニングは、怪我のリスクを高め、成長を妨げる可能性があります。
コミュニティとのつながり
パワーリフティングジムに通ったり、SNSで情報交換をしたりすることで、同じ目標を持つ仲間とつながることができます。仲間との交流は、モチベーションを高め、トレーニングの楽しさを倍増させてくれて良い刺激になります。
情報収集
パワーリフティングに関する情報は、書籍、雑誌、ウェブサイト、動画など、さまざまな形で入手できます。常に新しい情報を収集し、自分のトレーニングに取り入れてみましょう。ただし、情報源の信頼性には注意が必要です。
コーチングを受ける
専門的な知識を持つコーチから指導を受けることで、フォームの改善、トレーニングメニューの作成、試合に向けた戦略など、さまざまな面でサポートを受けることができます。自己流で伸び悩んでいる場合は、コーチングを検討してみるのも良いでしょう。
大会への挑戦
自分の実力を試すために、定期的に大会に参加することをおすすめします。大会は、目標達成のモチベーションを高め、さらなる成長のきっかけとなります。最初は小さな大会から始め、徐々にレベルアップしていくと良いでしょう。
何よりも楽しむこと!
パワーリフティングは、長く続けられるスポーツです。記録更新や大会での勝利も大切ですが、何よりも「楽しむこと」を忘れないでください。自分自身の成長を喜び、仲間との交流を楽しみ、パワーリフティングのある生活を満喫しましょう!