広告デザインにおける引き算の法則

私が広告デザインをする時に意識すること

私が広告デザインを考える時に、考える順番と意識することがあります。

ひとつめは「伝えたい側が伝えたいことはなにか」
ふたつめは「見る側が知りたいことはなにか」
みっつめは「見た時の感情の移り変わり」

これらは広告デザインを考えるなら当然考えることだと思うでしょうが、大事なのは考える順番情報の重要度のレベル分けだと思っています。作られた広告なりWebサイトを見ていると、これらの情報をちゃんと切り分けて順番に取り入れていっていると、見た時自然な感情の移り変わりで「なんだろう」から「ほしい」に変わっていたりする。
こういう広告を見ると「うまいな」と思います。

なんとなく見にくかったり伝わりにくかったり、内容がどうも入ってこない広告は、恐らく上記のことを情報としてちゃんと集められていなかったり、集められたとしても情報の重要度のレベル分けをしていなかったり、情報それぞれをごちゃまぜにしてしまっていたり、見た時の感情の移り変わりまで意識できていないのが原因だろうなと思います。
広告デザインスキルとして、ある程度の視覚的なデザインセンスなんていうのは、絵を書くのが好きだったり、制作ツールの使用経験があれば、それなりに見た目「おっ、きれい」と思うものは作れるが、効果があるかどうかは別ですよね。
「それらしいもの」を作るのは「小手先」でできますが、子供は騙せても大人は騙せないし、ターゲットによっては子供だって猫だって騙せません。

そこで、先の3つを広告に取り入れるためにはこんなスキルが必要になります。
「伝えたい側が伝えたいことはなにか」は問題抽出力ライティング力
「見る側が知りたいことはなにか」はマーケティング力
「見た時の感情の移り変わり」は心理学

つまり、広告デザイナーが効果的な広告デザインをするためには、ただ画力を鍛えるだけでなく、こういった勉強が重要ということですね。

ちなみに、私は先程から「デザイナー」を「広告デザイナー」と言っているのは、デザイナーも範囲がとても広いので今回の話はその中でも「広告デザイナー」に特化した話ということです。
私も、広告デザイン以外にパッケージデザインやプロダクトデザインもやるので、その時は広告デザインとはまたちょっと違う考えを持って対峙するので、今回の話には近いところはあっても同じではありません。

広告デザインってどういうものを言うの?

広告デザインとは、読んで字のごとく「広く世間に伝えるためのデザイン」ということで、その媒体は印刷物であったりWebサイトであったり、バスのシートであったりエスカレーターの手すりであったりと様々です。ターゲットの目につくところに展開するのがポイントですね。

最後の振るい「引き算をする」

先の3つでは、広告に掲載する情報を集められるだけ集め、それらをどういう順番で読んでもらうか、読む時どういう感情の動きをしてもらって最終目的の行動まで持っていくかの話でした。
で、ビジュアル的、視覚的な部分は「見た時の感情の移り変わり」の部分で必要になってくるのですが、この前に、さらに重要なことがあります。
それが、引き算をするです。

これは、広告するモノだったり、展開する媒体によって、載せないといけない情報の量載せられる情報の量をギリギリまで詰めていく作業になります。
これも順番が重要で、「載せないといけない情報の量」の中で重要度をレベル分けし、その中で「載せられる情報の量」の範囲で「載せない情報」を引いていきます。
引き方は「掲載しない」「文字サイズを小さくする」「別ページに掲載する」など様々ありますが、極力最短ルートでゴールまで行けるよう引いていきます。

クライアントとしては、伝えたいことたくさんあるかと思いますが、クライアントが伝えたいこととはもちろん最重要として、そこから見る側が知りたいことを残してそれ以外を引いていきとにかく最短を目指します。

こうしてみると、いかに広告デザイナーの仕事が感覚的なことではなく非常にロジカルな作業であることがわかるかと思います。

私が「引き算の法則」を気に入った理由

もともと、不要なものを省いていく作業は意識していたのですが、「引き算の法則」という言葉を知り、さらに「引き算」の精度が上がった理由があります。
あるクライアントさんが教えてくださったのですが、日本には随所に「引き算の法則」が使われていて、それが「日本の美」なんだそうです。さらに一番多いのが京都だそうで。

例えば「枯山水」。
「枯山水」とは「水のない庭」という意味で、日本庭園には池だったり川を実際に作って庭の中に自然を表現したりしますが、「枯山水」は「負の庭」というコンセプトがあって、あえて水を流さず、余白を作ることで水を表現しています。
これも「引き算の法則」で、あえて水をおかず水を想像することでより人の感受性に働きかけるのです。

また、もうひとつ好きなのが「京料理」。
これもまた「引き算の法則」で、素材を活かすための調理をするため最低限の味付けなので薄味です。
食べる時の見た目や雰囲気も重要にされているのですが、その盛り付けひとつひとつにも過剰でなく引き算しつくされた盛り付けで五感に訴えかけてきます。

私も性格的に、余計なことだったり回りくどいことが大嫌いなので、こうしてストレートにわかりやすく感情に響いてくることですぐに大好きになりました。

「引き算の法則」は日本デザインのいいところ

「引き算の法則」は日本のデザインが海外で通用する唯一自慢できる部分ですし、広告デザイン以外にも必要なことだと思います
さらに、情報過多な今だからこそこの「引き算の法則」は重要だと思いますので、ぜひ公開するギリギリ、最後の最後まで意識していただきたいと思います。

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池田真知子|京都のデザイン会社 nola Inc.
日々ラーメンを食べることができたらそれだけで幸せです。