たいせつなひと
あなたは
とてもかわいい幼い子どもに出会いました。
どうした運命のいたずらか
その子の面倒を、
すべてあなたが
みなくてはいけなくなりました。
ワガママも言うけれど
あなたの言うことをよく聞く子どもです。
悪口も言いますが
あなたのことを心から信頼しています。
あなたは
その子のことを良く知っています。
あなたが必要とされていることも
あなたは知っています。
あなたが笑うと、その子は笑います。
あなたが泣くと、その子も泣きます。
あなたと同じものを「おいしい」と言い、
同じものを「いやだ」と言います。
あなたは
その子が大切な人間だという事を知っています。
あなたがいないと
その子が生きていけないことを知っています。
あなたは
知っています。
その子が
あなた自身だということを。
あなたはよく
その子だけに我慢をさせていました。
あなたはよく
その子が傷つくことを平気でやりました。
その子さえ
我慢をすれば丸く収まる。
そう思ってその子に
ムリをさせていました。
そのうち
それが当たり前になり
ひどいことをしていると思わなくなりました。
「もうダメだ」
あなたは言いました。
あなたはとても疲れていたのかもしれません。
「死んでくれないか?」
その子に、頼んでみました。
その子はあなたの気持ちを理解しています。
あなたの言葉に逆らいません。
命を奪うことは簡単です。
その子が大切な一人の人間だという事を
あなたは知っています。
「他に方法はないのか?」
あなたは考えました。
考えることが出来ないほど、あなたは疲れていたかもしれません。
本当にどうしようもないくらい
追い詰められていたのかもしれません。
何もかも、どうでもよくなっていたのかもしれません。
今のあなたはどうですか?
とても疲れていますか?
だけど
少しなら
その子に目を向ける時間がありますか?
もしあるなら
あとほんの少し、その子のことを考えてみてください。
本当にその子は、ここで死ぬべきですか?
その子には、生きる権利はありませんか?
その子に未来はありませんか?
死んでもかまわない子ですか?
あなたの巻き添えになって、死ぬ予定の子ですか?
そうではありませんよね。
あなたがどうしようもなく疲れていても
その子は生きてもいいはずですよね。
手段さえあれば
まだまだ生きられますよね。
逃がしてあげましょうか。
一人でダメなら誰かに託しましょうか。
宝くじが当たれば解決することですか?
そうかもしれませんよね。
誰も知らない場所に行けたら解決することですか?
そうかもしれません。
責任がなくなれば解決することですか?
そうかもしれませんよね。
その子を
どこかに逃がしてあげられませんか?
明日になれば、救助隊が特効薬を持って駆けつけて来ると
わかっていたらどうですか?
今、あなたが無理をして、その子の命を奪う必要がありますか?
寝ている間に
世界が変わってしまう事なんてよくあることです。
大切なその子の未来を奪いたくないと
心のどこかで思っていませんか?
それでも
今は、未来に期待が持てませんか?
大丈夫です。
あなたにできないことは、その子がやってくれます。
その子を守る方法は必ずどこかに転がっています。
あなたにしか守れない大切なその子に
今は、少しだけ
目を向けてあげませんか?
イラストは イラストAC おきあみさん