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のくも短編集 蟲
爬虫類、虫などが題材の短編集。のくも作品「幼老蝉」「五郎太の城」「あおいしっぽ」を収録。
■作品紹介■
「幼老蝉」(ようろうせん)
ある森に、年老いたセミの幼虫がいた。羽化をむかえる若いセミの幼虫がいた。
それを、一本の大樹が見守っていた。ある夏の日の物語。
(以下本文抜粋)
森のまんなかに、一本の大きな樹があった。
夏になると、何百というセミがその樹に集まり、けたたましく鳴いた。いつしかその樹は、誰からともなくセミの樹、「シカダの樹」と呼ばれるようになった。
シカダの樹の大きな根の間に、ぽっかりと穴が一つ開いていた。
その穴に、一匹の年老いたセミの幼虫が住んでいた。
名前を「ヤシ」といった。
「五郎太の城」
『城だ。ここはおれの城なんだ』
この小屋は、まさに五郎太の城だった。
その日から、五郎太は、この小屋の王様になった。(本文より)
あるプレハブ小屋に住みこんだアオダイショウ。プレハブ小屋はとてもいいすみかだった。
しかし、ある日・・・。
「あおいしっぽ」
「あの滝を登れば竜になれる」そう信じたトカゲだったが・・・。
竜にあこがれた小さなトカゲの冒険物語。
小学生、中学年高学年、中学生向け短編。
(以下本文より)
「もう少し、近寄ってみるか」
トカゲは走り出した。
トカゲは、こうして走っているときが一番好きだ。とりわけ、全速力で走ったときに耳をかすめる、ヒュンヒュンという風音を聞くのが好きだった。
もうすぐ滝に着く。すぐ向こうで、大きな水音を立てているのがそれだ。にぎやかにリズムを刻む滝の音が、のんびり寝ていたトカゲを冬眠から叩き起こしたのだった。
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