#2獣医「心エコーが診断を変える」
[プロフィール]
佐藤琴美 Sato Kotomi
・東京農工大学 農学部 共同獣医学科 獣医外科学研究室
・神奈川総合高校卒業
研究内容
―――どんな研究をしているのですか？
研究内容のテーマは、「心臓の拡張能の新しい指標」を見つけることです。 簡単に説明すると、心不全を早期に発見するために心エコーを使った新しくて簡単な方法を模索しています。これまで心不全では収縮の方が大事と考えられていたのですが、今では拡張も大事ということが分かっています。拡張能の機能が落ちてから収縮能が落ちるということが分かりました。それで拡張能に目を付けました。拡張能を調べる方法はこれまでは麻酔をかけて心臓にカテーテルを入れなければ確認できませんでした。心エコーを用いた新しい方法が確立されれば、起きている状態でエコーを当てるだけで診断が出来ます。
―――どうやって実験を進めるのですか？ 心機能に影響を与える薬剤を犬に投与します。それで投与前と投与中と投与後に計測をします。３種類の計測方法で心エコーで行い、それと麻酔を打った後に心臓にカテーテルを入れる方法を比較して、拡張能の新しい指標を探しました。
―――どんなことが分かりましたか？ 薬により心機能が変化して拡張能が落ちるというデータが集まってきていて今データをまとめている最中で、詳しくはまだ言えませんが学会で発表する予定です。
―――新しい手法が確立されたらどんなことが出来ますか？
まずは病気の動物の負担が減ります。これまでは心臓が悪くなってから、しか診断ができなかったのが、新しい方法が確立されれば、より早く診断出来て治療を行うことが出来るかもしれません。ゆくゆくは人間にも応用できると思っています。
この分野に進んだ理由
―――何でこの分野に進もうと思ったのですか？
動物が好きだからです。そもそも動物のお医者さんになりたくて、外科に興味があったので今の研究室を選びました。外科の研究室は循環器の研究をメインで行っていて、元々循環器に興味があったわけではないですが先輩の実験の手伝いという形で携わらせてもらってます。 私が動物を好きなのは小３ぐらいの時で、物心ついたときから好きなので好きになったきっかけとかは覚えてないです（笑）。それで動物の治療ができる獣医ってすごいと思って動物のお医者さんになろうと思いました。
―――ずっと獣医になろうと思ってたのはすごいですね、ほかのものに興味はなかったんですか？
実は受験に失敗して、専門学校に行った後、楽器の輸入代理店で働いてました。でも、そこで私のやりたいことが見えなくなってしまって、やっぱり本当になりたい獣医になろうと思いました。それで再受験して農工大に入れました。
問題意識
―――何か問題意識があれば教えて下さい。
獣医という視点から見たときに、2つのことが考えられました。1つ目は、ペットについてお金にならない動物の行方についてです。お金にならない動物っていうのは、生まれたときから奇形があったり病気を持っている動物たちです。その子たちはそのまま販売できないため処分されたり、シェルター（動物の保護団体、里親団体）が引き取ったりすると聞きました。中には治療すれば治せる子もいると聞き、動物の販売のあり方について問題があると思います。 2つ目は、私も好きなんですけどエキゾチックペット・アニマルについてです。未知の病気を持っていたり、分かっていない生態があったり飼い方も分かってないことがあるので売る方も買う方も大きな責任があると思います。売る側は飼育が大変な部分ももっと伝えるべきです。買う側も何にも知らないと動物も自分も幸せになれないと思いますし、もし病気になったら近くに見てもらえる病院はあるのか、費用はどのくらいかかるのか、寿命はどれくらいなのか。今ネットでなんでも調べられますが飼ってる人が少ないとその分情報も少ないので、その分思わぬトラブルがあったりするので買う側にはいろんなこと知ってほしいなと思います。
学生のうちにやりたいこと
―――学生のうちにやりたいことはありますか？
獣医になるために必要な知識をたくさん得たいと思っています。研究室に配属されてから、動物病院のお手伝いもしています。実際、実験と診療に追われる毎日で将来のためにいかに知識を得られるかっていうのを考えています。病院中心の生活を送っています。忙しいけど充実しています！ あ、バイトが出来てないので、もうちょっとお金が欲しいです（笑）。
将来やりたいこと
―――将来やりたいことはありますか？ 動物のお医者さんになりたいです！エキゾが診たいです。中でも外科が好きなので外科ができたらと考えてます。他にも興味があるのは、動物園のお医者さんです。とりあえずエキゾの病院に行ってからやりたいことを考えようと思っています。 いろんな動物に関われたら幸せで、不幸な動物がいないようになればいいと思っています。
2018年3月4日 文章： 上木康太郎
更新日：2020年4月27日