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2023年間ベストアルバム

と言うわけで2023年間ベストを決める時期となりました。

今年も色んな音楽に手を伸ばしながら記録、記憶していく毎日でした。生活を歩んでいく中でたくさん聴き込んできたなあと言う思いです。サブスクで今の音楽を追うことに慣れたここ数年間でしたが、その向き合い方…と言うか音楽といい感じのお付き合いを続けていく為には何をすべきか?を特に考えた年でした。

そうして毎週色んな新曲を聴いていくと辿り着く真理の扉には「もっと色んな過去の音楽やルーツに触れよう」と記されていました。だからこそ史上最も2023年の音楽からある意味では遠のいたかもしれない…そんなことを考えてました。
しかし音楽は生活であり歴史です。どんな風に辿っても今に繋がる。そんな気持ちにさせてくれた10枚のアルバムの話をこれから始めようかと思います。

よろしくお願いします。



今年のベスト10

⑩生活の設計/季節のつかまえ方

ー季節の移ろいをささやかな音楽と共に生活に刻む為に

Spotify新譜プレイリストから知ったのがきっかけ、東京を中心に活動するバンド“生活の設計”の1stフルアルバム。
どっちがバンド名なのかよくわかんねえなと言う第一印象から聞いていくとフォーク由来の安心感あるサウンドから渋谷系などの空気を匂わせるサウンドまで披露する振り幅が心地よくて上半期よく聴かせてもらった。

かの小西康陽が「今7インチレコードで欲しい曲第1位」と太鼓判を押した“むかしの魔法”を筆頭に失われゆく季節の移ろいをしっかり33分に刻んでいく構成と音楽性が見事だったと思う。今後どのような進化を遂げるのか期待。

⑨Night Tempo/NEO STANDARD

ーシティポップのその先、踊れる音楽と僕らの本質

シティポップブームを牽引、ブチ上げた重要人物の1人である韓国のDJ:Night Tempoの2ndアルバム。一切ブレずに自身の趣味と愛、実績を積み重ねてきた数年が呼び寄せたのは小泉今日子、早見優、中山美穂、野宮真貴、土岐麻子など錚々たる面々。そこにシティポップライクな音を纏わせるのではなく、どちらかと言えばクラブ色の強いサウンドをしっかりコーティングしたことでまさにネオスタンダードと呼べる手触りを実現させている。

約1年前に本人発信でこんな投稿があったわけで、時代を読み取るアンテナが改めて鋭かったんだなと思った。それと同時に彼って別にシティポップだけじゃなくて、80年台全体の文化やクラブミュージックが好きであることが土台にある方なんだなって印象は最初からあって…その辺りを整理して本作を2023年に改めて打ち出したと言う意味は非常に大きいと思った。
おすすめは早見優さんをフューチャーした5曲目“shampoo”。34分ずっと心が躍りっぱなしの傑作です

⑧思い出野郎Aチーム/PARADE

ー音楽と僕らの日常、その連続性を謳歌するための
ソウルミュージックが街を突き抜けて世界に染みる

09年に多摩美術大学にて結成されたソウルバンドの4thアルバム。17年リリースの“ダンスに間に合う”を一聴した時から気になってはいたけど遂にアルバムとして聴き通せる完成形に辿り着いてくれたなと言う超好印象でした。

ソウルと言う音楽の楽しさを手に取りやすい形でポップスのように提供しつつ、音楽が一人一人の暮らしの中に存在していることを連続性を持って証明しているのが最大の魅力である。そして何よりマコイチ氏のボーカルから溢れ出す強さと優しさ、切なさと真摯な言葉が胸を打つ

俺たちは耐えるためにこの街にいるんじゃない 絶えず鳴り続ける音楽で踊るためにここにいるんだ 
距離なんか問題じゃない 
音速で飛んでくリズム 仕組まれた分断よりも早く届けるラブソング 
小さなタブレット 集めればサウンドシステム 街はまるで巨大なダンスホール 
どんなに離れていても俺たちはいつだって同じフロアで踊ってる

独りの夜は終わりさベイベー 
君がどこにいても 今夜一緒に踊らないか 
それぞれの場所で 独りの夜はもう終わりさ 
レコードは回り続ける  
離れ離れの夜を包んで 
俺たちがもう一度踊るために 
独りの夜はもう終わりさ スピーカーの向こうに君を感じる 音楽は全ての壁を突き抜ける

音楽はすべての壁を突き抜ける…突き破ったり壊すのではなく突き抜ける。これ本当に教科書に載せたいと思いました。素晴らしい。

⑦cero/e o

ー情報が渋滞する砂漠のような現代、
その余白に流れ込む純水のような音を求めて

アルバムを出すたびに数多の音楽好きが騒ぎ始めることで有名な東京発ポップバンド:Ceroの5枚目のアルバム。
初期でこそ「なんかオシャレな音やってるし好きな人がカッコつけて聞くだろうな」などと思ってたけど3rdの“Obscure Ride”あたりから無視できなくなって聞く人も語る人も爆発的に増えたと思う。この最新作なんてもう何やってるわかんねえけどすごいことになってる(語彙喪失)

前作よりもテンションやリズムは落としてる作品なので大衆向けからは少し遠かった。しかしだからこそボーカルも含めたそれぞれの音がしっかり鳴り響く余韻を感じられた。ミニマムに削ぎ落とすほど本質だけがしっかり残るような音楽体験は、聞けば聴くほど奥深い世界に僕らを誘うし心と身体が踊り出す傑作だった。国内ではGRAPEVINEくらいには人気を保ち続けて長年僕らを魅了していく存在になる…既になってるかもしれないと思った。

そもそもこの作品を音楽的に説明できるほどの知識をかき集めることも理解することも僕の中では難しく、言葉にすることも何だか気が乗らない所もある。
ただひとつ言えるのは数ヶ月前に買い替えたスピーカーで聴いた時に1番音の鳴りが良かったこと、1枚の中で音のグラデーションはあるにしても急に景色が変わるような構成ではなく音色の統一感が凄まじく強かったこと、忙しい時でもじっくり聞き込めるような設計であったこと。

あとライブもすごく良かったんですよね

ここでしか飲めない水を求めて再び明日もぼーっとしながら公園でも歩きながら聞くと思う。

⑥.ENDRECHERI./Super funk market

ーイノセントワールドに憧れた少年が磨き上げたファンクパワー大爆発+自身のルーツを辿る2部構成に涙涙涙

近年ではサマーソニックなどへの出演、冠音楽番組の放送開始(来年は自身が主催する音楽フェスも開催予定!)などを受けて音楽ファンから更なる信頼と期待を寄せられている.ENDRECHERI.こと堂本剛さんの最新作。

ファンクと言う音楽ジャンルだけが持つグルーヴや楽しさを追求しつつも、作品を重ねるたびにメロディラインやエロいボーカルが非常に聞きやすく大衆的になった印象である。
同じことやってるようでいて決してそうでもなくて、2曲目“LOVE VS. LOVE”はバラードのリズムから始まってどんどんエグい楽器の音が絡んでしっかりファンクしていく構成が面白いし、4曲目“pretty phantom”のようなナイアガラ系イントロから始まる曲も新鮮だった。

そしてアルバム後半は基本的にピアノ一本で堂本剛名義の曲も含めてのセルフカバーを披露していく訳だが、とにかくこのゾーンがヤバい。ヤバい。

ファンクのファの字も知らない頃から彼の声や人間性に内包されてる色気とか抜け感に惚れていたファンとしてはこのバラード連打はやばいんだよなマジで。街、ORIGINAL COLORなど何度もカラオケで歌った。て言うか選曲めっちゃ好みだったから3回くらい最初聞いた時に涙溢れた無理。

きっと病気のこともあったから歌い方を模索したと聴いたし、堂本剛初期とは音楽性もどんどん変わってるから正直こんなにじっくりバラードを歌い上げる彼の歌声はもう聞けないと思ってた。本当に綺麗、素晴らしいボーカリストだと思う。歌う為に生まれてきた人。

あの日イノセントワールドに憧れた少年がこの国でファンクを掲げて音楽好きを唸らせ、一方では心に染みるバラードを歌っている。この二面性に痺れる。レインボースターですよ。
堂本剛は全部叶えた。夢物語の証明に最大限の拍手を送ると共にもっと多くの人に届けと今日も願う。

⑤KIRINJI/Stepp'in Out

ーシティポップの源流と現代音楽の在り方に
J-POPを添えて今を生きるサウンドトラック

新しい感覚と懐かしい感覚の反復横跳び(あんまり無理しない程度で良いよ)、少しばかりの刺激と何処かで聴いたことあるような安心感…軽やかで爽やかなくせにズッシリとくる音が最高にクールである。優しく残酷でチルな堀込さんのボーカルには全ての情念を預けることができる。そして思わず熱い涙が流れそうな言葉選びにもやられる。

シティポップ的(ここの表現はあえて曖昧でいい)な音楽をいくつも遡って聴いてきた数年間であるが、そのほとんど全て…と言うか大人が本当の意味でマイペースに楽しめる音楽を長年トレンドに関係なくKIRINJIがやってるかもしれないと気づいてしまった。年を取ってしまうと良さがわかるのかもしれない。今までの自分が知らない世界。なんとなく今まで聴いてなかった意味が本当にわからないくらいハマってしまった。

特に本作は完璧に練り上げられていて、物語を少しずつオープンにして盛り上げて閉じていく構成が上手かった。

都市部の森林伐採問題に触れる1曲目“Runner's high”から駆け出し“nestling”で加速を図るもののリスナーを放置することはない。再びテンポを落とし中指立てるよりパチンと音鳴らそうぜと歌う3曲目“指先ひとつで”には坂本九の影すらチラつく。「説き伏せてくれたら俺はやれる」とけだるげに歌うノリが最高な“説得”やアダルトなインストを挟んでトー横キッズとそれに群がる氷河期世代を歌う7曲目“I ♡ 歌舞伎町”の着眼点に心を鷲掴みにされてから、「死は優しくおごそか」と歌う“不恰好な星座”に今年旅立ってしまった無数のミュージシャンを重ねてるうちに最後の曲が始まる。
聴き終わった後には雨上がりの街に繰り出す僕が主人公になっている。とても綺麗な物語、それを40分弱の尺で描いているサイズ感に感服する。

KIRINJIというスタイルが今自分にものすごくハマる理由、無我夢中で色んな音に触れてきた今だからこそ納得できる。最高のご褒美を今日も堪能する。

④Cornelius/夢中夢

変わり続ける時代、環境と心理、
反省と贖罪の上に成り立つ人間を描く傑作

一言で語れば本当に素晴らしい音楽作品でした。何もなければ1番に挙げていたかもしれないくらい何度も聞いた。

Corneliusがどんな人間であるかをここで議論する気は毛頭ないんだけど、結局全てが正しい人もいないし全てが間違ってる人も居ないという前提をいつも考える。誰が彼に石を投げられるのか?それを問う日々である。
東京五輪の一件なんて今の今まで忘れてるくせに常に叩く存在を探してる人のがどれだけ罪深くて悪魔なのか…少し考えればわかる。

人はいつも過去と未来に思いを馳せて今を生きていくしかないし、自分が積み重ねてきた罪や功績にどれだけまっすぐ向き合えるかに人しての価値があると僕は思う。これを聞いて誰かが何かを許すとかじゃなくて、音楽とは結局自分の為に作るものである。CorneliusはCorneliusの為にこの作品を作ったと言えるのではないだろうか。
とにかく1人のシンガーソングライター、人間が自分を限界まで努力して見つめた作品だと言うことが全曲から伝わってきた。(それでも何か違和感がある方は以下の謝罪文を読んで下さい)

彼にだけ鳴らせる繊細な音、余白に満ちた1曲目からその世界に引き込まれながら…聞いてる自分の人生や行いすら「果たして誰かを非難できるほど正しかっただろうか?」と自問自答が続くほどリスナーを追い詰めてくる。天から雨が降るように自然に紡がれた言葉が涙に変わる時、その感情に寄り添うようなインストがいくつも収録されているのがまた心地良い。言葉と音をブツ切りしたような構成、余白は僕らの生活音が埋めることで連続性を生み出すよなトリックを仕掛けるのが本当に彼は上手い。そしてこの世界は言葉と音で出来ているんだなという奇跡が全身を駆け巡る46分の体験は何物にも代え難いのである。

自分に向き合うのが怖くなった時にきっとこの音を思い出すだろう。彼を追い詰めた悪魔がいたからこそこんな作品が生まれたのなら感謝すら申し上げたい。僕はCorneliusとこの音楽を支持する。

③odol/DISTANCES

何気ない日常を飾らずに丁寧に語りながら鳴らす時、
僕の情緒はぶち壊れる。

14年に東京で結成された3人組バンド:odolの5枚目のアルバム。初期はあくまで邦楽ロックバンドの域にあったが少しずつ変化を重ねていく中で言葉にフォーカスを当てた前作から無視できない存在感を放っていた。

サカナクションやcero以降のリズムアンドベースや音色を軸にしつつ、小田和正のような切なさを同居させた王道的な歌メロを得意とするバンドに急成長した印象が強く、まさにありそうでなかった質感を実現した楽曲が壮大な物語を描く。

たまには贅沢をして
いつもは節約をして
何を貯めているんだっけ?
何かを残せるかとか
自信なんてないんだけど
僕にだって見つけられたら良いだろうな

今日も僕らは忙しい/odol

何気ないことを何気なく歌ってくれるバンドは安心感があるけど、やっぱり地味で引っかからない。このバンドは何気ないことの一歩先に少しだけ踏み込んだリアルを言葉に落とし込むことを重ねて、それを邪魔しない音を丁寧に紡いでくれたのが素晴らしかった。

そこに鳴ってる音と歌声以外何も空気を震わせる要素がないってくらい澄み切ったこれなんて良いバラードすぎて感動しましたよねマジで↓

そしてこんなにもピュアな言葉を真っ直ぐに歌っているバンドですら本当に伝えたいことは伝わらなくてもはや解釈を君に託すしかない…と歌う終盤の大名曲“DISTANCES”に込められた想いは音楽やコミュニケーションにとっての永遠のテーマのように思える。アジカンが「繋いでいたいよ」と叫んだあの日から少なくとも何も僕らは変われない。

なんとなく生きてたらなんとなく傷つかずにやっていけるだろう。だけどやっぱり退屈する。何気ない毎日の中に少しだけの刺激、変化、伝えたいのに伝わらないと言うもどかしさが発生する時にこそ生命を感じてしまう。直に刺さる言葉と音を気にながらぶち壊れていく情緒にこそ感じてしまう。きっと彼らが伝えたいことはそれなんだと思う。

時代が変わりゆく中で失われるつつある古き良き音楽、言葉の本質に本作は接近している。それがとても悲しくて嬉しさに満ちた名盤の誕生を目撃した。

②伊藤美来/This One's for You

ーレトロから現代に受け継がれるダンスとJ-POPへの
リンク性を唯一無二の歌声を通して再考する1枚

1曲目、第一声から時が止まったと思うくらい引き込まれた。「ズレたままがいいの」と囁くように歌う声が沁みる。今日も明日もズレたまま踊り続けるであろう僕らの気持ちに寄り添う。
本当の意味で歌手になったと上から目線ながら思います。

声優アーティスト音楽の雑食性の高さを証明した作品には水瀬いのりさんCTR、上坂すみれさんのノーフューチャーバカンス、降幡愛さんのmoonrise、DIALOGUE+など…沢山の名作が近年はあったわけだが2023年は本作で間違いないと僕は考える。

もうとにかく色んな音楽が詰め込まれているくせに完成度の高いミュージカルを見た時のような満足感を46分の中に閉じ込めていると言う事実、楽曲の並べ方が凄まじい。縦ノリとそれに呼応するコールによって成り立つことを基本とする文化とは別物であり、横の動きが強いのが大きな魅力となっている。
そして何より舌足らず、どうしてもメロディから浮いてしまうが声質だけは最高に初期から魅力的だった(正直に書いています)伊藤美来さんのボーカルを4枚のアルバムと言う時間をかけてオンリーワンの価値まで引き上げたことに拍手を送りたい。もはやこの声と歌い方じゃなきゃ安心できない。

決して急かすことなくジャジーにじっくり攻めていくリズムと富田ラボ的なアプローチで色気と切なさを見せる1〜2曲目の現行ポップス感→オールディーズ的な空気が強いジャズやスウィングをアレンジ〜90年台や00年台も含めた踊れる音楽を史実的に並べたアカデミックな3〜7曲目→音楽知識など皆無だからこそ作れたに違いない予測不可能な展開を見せる伊藤美来さん自作曲“パスタ”や川本真琴さん作の大正義ポップス“青100色”で駆け抜ける終盤の清らかさ、その全てをエンドロール的に受け止める“La-Pa-Pa Cream Puff”に至るまで…何やねんこのアルバム楽しすぎやろ!!とキレそうになるくらい楽しい。すごい。

声優アーティストを取り巻く状況は特に昨年くらいから一変して、アイドル声優性かアーティスト性を追求していく二極化が進んだ印象である。この傾向が加速すればするほど声優アーティストの存在意義があやふやになるだけでなく一般リスナーとの壁は高くなる…と僕は思うばかりである。

本作はその状況に軽く警鐘を鳴らすような楽曲が並ぶ。おそらくその目的は、声優アーティストを通して様々な音楽を見つめ直す重大性を今一度伝えること。
この難題に対して、時代と共に変化する音楽へのリンク性や踊る楽しさを2023年の音楽に残しつつ伊藤美来さんの歌声にフォーカスを当てることでアンサーを返すことに成功している。

繰り返しになるが、どうしたってメロディから浮いてしまう彼女の歌声がまるでひとつの楽器のように機能することで、スタンダードなジャズやR&B、ポップナンバーに新しい風が吹いている。これに気づいた時全部の曲がもっと楽しくなる。前作“BEAM YOU”からその片鱗を感じさせてはいたが遂に1枚のマスターピースとして形になったと言う印象を受ける。

アーティスト的になりすぎず、かと言ってアイドル声優と見間違えるほどのそれでもない仕上がり。伊藤美来さんは今のベストアンサーを手に入れたと言って良いだろう。

秋にリリースしたシングルでは積極的に電子音やボサノバを取り入れている。

次の進化にどの様に繋がるのか期待を込めつつ今は本作をリピートしていく。

①Mr.Children/miss you

ー不安や迷いと無二の親友になって
みんなで歩く終わりなき音楽と人生の旅2023

この国で最も成功したロックバンドのひとつ、Mr.Children。今なお、と言うか今きっと1番良いので今聞いて欲しい。

僕自身が20年くらい彼らのファンであると言う事実はあるにしても年間ベストの1位に挙げることはおそらく長年なかったと思う。だからその辺りは抜きにしても圧倒的でした。

SNS上の毎週狂ったようにサブスクで音楽追ってる方々が何人も絶賛してたのが本当に嬉しかった。僕自身も所謂激しいロックサウンドから今年は本格的に離れてしまった中で様々な音楽を模索している所にちょうどフィットする音だったから最高に楽しめた。桜井和寿はいつも俺のこと全部わかってて怖い。

バンドとしての終活を受け入れた先に彼らが選んだ最新作に込められたのは、人間にとって避けようのない孤独感と本当に君に伝えたい歌の行き場が現代になくなってしまった悲しさ。老いていく体と感性、時代から取り残されたような錯覚の連続…だからこそ諦めの先に歌わければならないと今日も真っ直ぐに向き合う姿勢を背中で語ってくれた。

今日の日を這いずり
窓から空気吸って
似てる仲間が
ここにもいるよ
互いの背中讃えながら行こう

ここに2023年の音楽を1番強く感じた。

前作でサイモンホールと共に作り上げた美しいストリングスやネオアコースティック的なアプローチを軸にトレンドにも向き合い…あくまでバンドスタイルに拘らない音楽を模索したことでパーソナルに暴かれた桜井和寿のエグくて暗い感性が爆発している。

昔から聞いてる人ならわかると思うが深海やDISCOVERY、シフクノオトで歌ってたことの方がまだ救いがある様に見えるくらい。おとなしい音がメインではあるけどバンド形態に拘らなければ現代的にそれを好感触と捉えられる人も多かったのがファン外の音楽好きに刺さった最大の理由であろう。僕自身もそう思う。

もっと鋭いミスチルが好きな人には下記みたいな曲もあるから楽しいと思う。

望まれたことに応えたいだけ
刺激が足りないって みんな言うから
「酷い」とか「汚い」とか「卑怯」とか
その通り それも想定内です

望まれたことに応えたいだけ
ワクワクしたいって 君が言うから
「酷い」とか「汚ねえ」とか「卑怯」とか
嬉しさに顔が歪みます

安直にセックスを匂わせて
倫理 道徳に波風を立てて
普遍的なものを嘲笑って
僕のアートは完成に近付く
大衆を安い刺激で釣って
国家権力に歯向かってみせて
半端もんの代弁者になる時
僕のアートは完成致します

アート=神の見えざる手

これは改めて作家としての桜井和寿に恐ろしさを感じましたよね。大衆からどう見られているか?じゃあ俺はどうするか?ってずっと実験してるんだなと…「ロックスターに俺はなれない」みたいなことを昔歌ってたけど、それに対して「半端もんの代弁者になる時僕のアートは完成する」って今になって返すのがやばい。大衆音楽なんて言葉がなくなった今もこんなこと考えて僕みたいなリスナーその他大勢を楽しませてくれるのがすげえなと。

↑ツアー行けなかったんですが天才が素晴らしいプレイリスト作ってくれたみたいで…やっぱりこのアルバム聴いてから聞く音楽かなり変わったと言うか関連性高いものどんどん聴いてる。楽しいね。

そんでまあ色々書きたいんですがこの間書いたブログに大体全部書いたので良かったら読んでください。

後はきっと本当に伝えたいことは伝わらない気がするからアルバム通して聞いてもらえたら解釈は君に託したいと思います。

今のMr.Children、良いですよマジで。
大好きだよ。

2023年良かった曲プレイリストの紹介

こちらはSpotify新譜プレイリストをなんとなく1年間聞いてきたのとラジオや飲食店で流れててめちゃくちゃ良いなと思った300曲くらいの中から1/10に厳選したものです。最初に並べてる曲ほど好きなんですがTOP10はかなり悩みました。 

ヒゲダンは槇原敬之みたいなズルいポップスに今風の音圧とアレンジでコロナ以降の僕らの距離感をリアルに反映させた歌詞が生活にめちゃくちゃ馴染んだ。意味不明にムカつくくらい良い。
DIALOGUE+は声優アーティストの枠組みを超えて素直にかっこいいなと…やっぱりこの曲は歌詞詰め込みすぎ高速浮遊系フュージョンの金字塔で年始から今日までずっとすごい曲だった。
ミスチルは前述の通りだけど桜井和寿のラップとは言い難い語りの様なフローが僕の捻くれた感性と共鳴しましたね。

4位以降〜GOOD BYE APRILは昨年リリースしたアルバムも良かったけど所謂“懐かしくて新しいけど良い”の先に踏み込んでしっかり踊らせてくれたナンバーです。
ガールズグループはNewjeansやXGを中心に国内外でさらに盛り上がっていて中でもFAKYが最高に夏だったね。

↑日本じゃなくて良いならこれ挙げます。こんなにワクワクする夏の曲久々聴いた。

その後挙げてる女王蜂はメフィストの前にブレイクしそうな気配めちゃくちゃ既にあったんですよね。回春マジで良いし毎年春の定番ソングにしたい。紅白まで行ったらもう最高だったんですが多様性の時代にタイアップはあれど彼らみたいなバンドが売れたのは素晴らしい時代だなと思う。King Gnu、ミセスとかヒゲダン、僕ら世代だと10-FEETなど…結局周り巡ってバンドが結構売れてる時代になってるの面白い。ドミコもここに来てスケールのデカいバラードまで出来るロックバンドに成長したことに驚きました。

時代が変わる中で音楽も変わっていくけどGADOROや思い出野郎Aチームは言葉に重心を置いてしっかり今を伝えてくれたのが良かった。日本語の音楽を母国語としてしっかり楽しめるのが今年は本当に嬉しい年でした。

他には男女問わず色んなシンガーソングライターが入り乱れてるのも面白くて、乃紫のスケバンみたいなノリと巻き舌で歌謡ロックをやり切るスタイルも良かったです。

でも1番好きなのはサブスクにはないこれなんですよね。

SixTONESは今年世間を騒がせた元ジャニーズの括りではあるんだけど、今年は特に攻めていた印象だった。世間からの目が厳しくなってもSONYチームと一丸になってやりたい音楽を貫き通したスタイルが最高でしたね。もうほとんどやれないことないんじゃないか?ってくらい本当にジャンルレスと言うか1番雑食性高くてミクスチャーだろって音楽を今の感覚で打ち出してたので面白かったです。

特にこの曲は生バンドでラップすると言う昔のリップスライムみたいなことを現代にやってきて、そのくせ往年のSMAPみたいなサビや横ノリに繋げてくる構成がヤバかった。初期から田中樹がめちゃくちゃにラップしてるしヒップホップにずっと向き合ってきた文脈の中で辿り着くべくして辿り着いた傑作だなと。熱い歌詞を絆のように繋いでいく怒涛のマイクリレー、スリリングな展開に手に汗握り涙を流して笑ってしまう。SixTONESすごいわ。

あと6人の立ち姿がどんどんカッコよくなってきてちゃんとアイドルしてるのが良い。男から見てかっこいい男であり続けてくれるのもポイント高い。さすがです。
SixTONES本当にいいですよ。

結果と総評と無駄話

①Mr.Children/miss you
②伊藤美来/This One's for You 
③odol/DISTANCES
④Cornelius/夢中夢
⑤KIRINJI/Stepp'in Out
⑥.ENDRECHERI/Super funk market
⑦cero/e o
⑧思い出野郎Aチーム/PARADE
⑨Night Tempo/NEO STANDARD
⑩生活の設計/季節のつかまえ方

11〜20位の作品
Lamp/一夜のペーソス
TESTSET/1STST
平井大/SURF & TURF
礼賛/WHOOPIE
早見沙織/白と花束
Galileo Galilei/Bee and The Whales
君島大空/映帶する煙
GRAPEVINE/Almost there
坂本真綾/記憶の図書館
SixTONES/声


こう見ると声優アーティストも少ないしギターがめちゃくちゃ鳴ってるロックはあんまりなくて、改めて自分の聞く音楽が変わってしまったことを感じる。変わり続けるのが生きていく意味です。

彼らがそんなことを歌ってた意味を今年1番強く感じた。俺も変わるしアイツもあの子もアーティストも変わってしまう。変わっちまったな…
変わることが絶対に良いとは言えないけど、やっぱり世の中が変わり続ける限りその影響をモロに受けやすい所はある。

↑これは今年の音楽じゃない曲で良いなあと思ったやつの一部なんですが数年前の自分なら気づかないだろうなって曲たくさんありましたね。最近聴いてるのこんな感じです…って言いたいけどそもそも整理できてなくてお恥ずかしいです。

そんで普通に生きてたら30超えたらもう新しいことなんて始めるのはすごくハードルが高いし、アニメ見てギター始めたけど普通に半年くらいでやめたし…新しい音楽に出会っても「こんなの昔からあるやつじゃん」で終わるんですけど…それだと老いて衰退していくだけなんですよね。ギターに関しては手を出した意味と頑張った時間は価値はあるだろうけど。

↑この間KIRINJIの堀込さんがゲストで出ていたラジオを聞いたんですが印象的だったのが「よくわからないな…と思いながら新しいアーティストを聞く」と言う話と「若い子の服しか店にないじゃんと思っても着てみたら意外とアリなものとそうじゃないものがあるんだよ」って話でした。きっとそこをわかってるから時代感覚がズレてない良いアルバム出してきたんだなと思えたし、僕もリスナーとしてそんなノリで聴いていたい。とりあえずSpotifyの新譜プレイリスト追うの疲れたし来年はもっと他に時間充てようかな。

あと話変わるけど人に期待しすぎるのやめましたね。期待して“そうじゃないもの”が出てきた時に文句吐き散らかしてるのはやっぱり今更良くないなと。誰かのファンやってると何回も出くわすし繰り返してるけどもう飽きたなって。ちゃんと離れるか、それでもちゃんと言葉にして証明してくれる人のことを理解することを頑張るのは楽しいなと思いました。
なんか違うなと思った時にYESかNOではなく「わかんねえけど理解したい」の選択肢が増えた。年を取ると「わかんない」って言うのがめちゃくちゃ恥ずかしいから言えないんだけどその恥は音楽においても人間関係においても捨てなきゃいけねえなと。

いくつになってもわからないことだらけで、それを解明できなくても「わかりたい」と思って動けるのが良いなと思うんですよね。今自分が好きなものや知ってるものをもっと奥深く理解するヒントは“わからない”にあるのかもしれない。そんな探究心を忘れなければ35歳はまだ若く楽しめるかもしれないですね。 

毎年多分言ってるけど生きれば生きるほど音楽を聴くのは楽しいんですよね。来年もまだまだやっていきます。今年は沢山フェスやライブも開催されて制限もほぼなくなったから楽しかったね。チケ代は高いけど…頑張って働いて稼ぐしかない。、そして来年はもっともっと愛しくて仕方ない音楽といいお付き合いができるように努力する所存です。

そんなわけで最後のは完全に駄文長文でしたが全部読んでくれた方いたなら感謝しかないです。

ありがとう。良いお年を!








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