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メンタル分霊箱は作るべきか
作るべきだ。
「ぶ、分霊箱...?」となっている方の為に、分霊箱の第一人者であるヴォルデモー..."名前を言ってはいけないあの人"を紹介する。
"名前を言ってはいけないあの人"は、ハリーポッターという作中で、不死身になりたいと思った。
雑に言うと自分の魂を7つに分割して「器」に入れることで肉体が滅びても魂は現世に残り、いつでも復活可能なスキームを開発し、それを分霊箱と名付けた。
仮に事故って魔法が反射して死ぬような事があっても、分割している魂は現世に残っているので、肉体を再生成するなり憑依するなりで、7つの分霊箱を全て破壊されない限り、不死身になれるというわけだ。
さて、こういう経験をしたことはあるだろうか?
「会社では本当の自分が出せないなぁ」
「初めましての人と話す時に偽りの自分作っちゃってるなぁ」
「本当の自分はこんな感じじゃないんだよなぁ」
といった具合で、「本当の自分」問題がある。
では、そもそも「本当の自分」ってなんだろう?
家族と話すときの自分
友達と話すときの自分
会社にいるときの自分
趣味している時の自分
恋人といるときの自分...
ここで、分人主義という考え方を紹介したい。
分人主義とは、小説家の平野啓一郎さんが提唱する考え方で、対人関係や環境によって変化する複数の自分(分人)を、全て「本当の自分」として捉える考え方。
・1人の人間に「本当の自分」は1つではなく、対人関係や環境によって変化する複数の「分人」がある
・複数の「分人」すべてが「本当の自分」である
・「分人」の構成比率を調整することで、生きやすい自分で居られるようになる
つまり、人の人格なんてものは一枚岩のような絶対的な存在ではなく、むしろ流動的で、場面ごとに異なる「分人」の集合体だと言える。
この考え方を知った時に、僕はこう思った。
「っっって、これ分霊箱じゃん!!!」
ここでヴォルデ...例のあの人の分霊箱に話を戻す。
先に説明した通り、分霊箱の目的は不死だ。
角度を少し変える。メンタルの不死も分霊箱で実現出来るのではないか?
僕らもそれぞれの環境や人間関係に合わせて、"自分の心の一部を分割"して分霊箱を作っておけば良い。
例えば、会社という「分霊箱」には、仕事用の自分を。
友人と過ごす「分霊箱」はもっと分割してもいい。Aくんと話す時、Bさんと話す時、先輩後輩...etcと、細分化して分霊箱を作りまくろう。
細分化させればさせるほど、メンタルの依存先の分散になる。メンタルはリスクだ。リスクに対する鉄則は、「分散させておくこと」だ。
例えば仕事でミスをして上司に叱責されたり、自分が否定されるようなことがあった場合、そこに全人格を預けていると「自分そのものが否定された」と感じてしまうかもしれない。
しかし、分霊箱を作っておくとこう考えることが出来る。
「別に会社用の分霊箱が否定されただけで、自分そのものが否定されたわけではない」
ダメージは真正面から食らってはいけない。
柔道でも受け身をして衝撃を分散させて流す。五点着地とかも多分そうだ。
特定の人間との関係で問題が発生しても、
「この人用の分霊箱が問題になったにすぎない」
と割り切ることで、必要以上に落ち込んだりするのを防げる。
メンタル分霊箱のおかげで、人生のどのシーンでも「そこに全人格を預けない」という生き方が可能になる。
僕らはつい、仕事や人間関係に全力BETしすぎてしまい、何か否定されたりすると、自分そのもの全てが否定されたように感じてしまう。
しかし、メンタル分霊箱を活用すれば、「ここでの否定は自分全体を揺るがすものではない」と前向きに考えることが出来る。
そもそも、人間は本質的には光学異性体のようなもので、誰かにとって薬でも誰かにとっては毒な存在かもしれないし、色んな角度から見ると全然違う人になったりするものだ。
ちなみに、作中では分霊箱を作る際のコストが唯一存在した。
それは、殺人である。殺人を犯すことで引き裂かれた自分の魂を分霊箱に収めているのだ。