心のコンパスを取り戻す:心理学で見つける自分らしい生き方 第1章
第1章: 心の仕組みを知る
1-1 心理学的な基礎理論
欲求段階説(マズローの欲求5段階)を40代男性の視点で解説
心理学者マズローが提唱した「欲求5段階説」を覚えていますか?
ピラミッド型の図でおなじみのアレです。この理論では、人間の欲求は次の5つの段階に分かれると言われています:
1. 生理的欲求(食事、睡眠などの基本的欲求)
2. 安全欲求(安定した生活環境を求める欲求)
3. 社会的欲求(人とのつながりや愛情を求める欲求)
4. 承認欲求(自分を認めてもらいたいという欲求)
5. 自己実現欲求(自分の可能性を最大限に発揮したい欲求)
40代男性の多くは、上位の欲求に挑む段階に差し掛かっています。
家族を養うという「安全欲求」や「社会的欲求」を満たした一方で、「自己実現欲求」が手つかずの状態。
つまり、「自分の人生はこれでいいのか?」と感じるのは自然なことです。
たとえば、毎日仕事に追われ、家庭を守るために頑張っているAさん。
彼の頭の中には、「家族は幸せだ。でも、俺は何をしているんだろう?」という思いがぐるぐる。
マズローの理論で言えば、Aさんの心は「自己実現」に向かおうとしているのです。
内的動機と外的動機の違い
次に大事なポイントは「内的動機」と「外的動機」の違いです。
・内的動機:自分が好きだから、やりたいから行動する(例:趣味でギターを練習する)
・外的動機:誰かの期待や報酬を目的に行動する(例:昇進のために上司にゴマをする)
多くの40代男性は、外的動機に駆られる生活を送りがちです。
たとえば、「家族のために休日も仕事」「会社のために夜遅くまで残業」など。
もちろんこれらは尊敬すべき行動ですが、内的動機が置き去りになっていると、心のエネルギーが枯渇してしまいます。
1-2 なぜ「やりたいこと」が分からないのか
子ども時代の影響と社会的期待
振り返ってみてください。子どもの頃、「将来何になりたい?」と聞かれたときの答えを覚えていますか?
あなたが夢見ていた職業や目標は、いつの間にか「現実的な選択」にすり替わりませんでしたか?
たとえば、絵が得意だったBさんは子どもの頃、漫画家になりたいと思っていました。
でも親から「安定した仕事がいい」と言われ、大学卒業後はサラリーマンの道へ。
その後は家族を養うために、夢のことは考える暇もなくなりました。
社会的期待に応えようとするうちに、本当にやりたいことを見失ってしまうケースは珍しくありません。
認知の歪みと自己制限的な信念
心理学には「認知の歪み」という概念があります。これは、現実を歪んで解釈してしまう心のクセのようなものです。たとえば:
・全か無か思考:「成功するか、意味がないかのどちらかだ」
・否定的予測:「どうせ自分には無理だ」
・自己関連付け:「自分が悪いからこうなった」
これらの歪みが、やりたいことを見つける妨げになっています。
また、「自分は家庭を優先しなければならない」という自己制限的な信念も、自由な発想を縛る要因です。
ワーク: 自分の欲求を見つけるための質問
次の質問に答えることで、心の奥底に隠れている欲求を掘り起こしてみましょう。
1. あなたが過去に「夢中になってやったこと」は何ですか?
例:スポーツ、音楽、旅行など
2. 最近、「やってみたい」と心の中で思ったけど行動に移さなかったことはありますか?
例:読書、料理教室、資格取得
3. 「これだけは譲れない」と感じる、自分の価値観やこだわりは何ですか?
例:自由な時間、挑戦する機会、家族との時間
これを書き出すだけで、自分の中の内的動機に気づきやすくなります。
メッセージ
「やりたいことが分からない」のは、単に忙しいからだけではありません。心の奥に埋もれている本音に気づいていないだけかもしれません。
この章では、心理学を通じて「なぜ満たされないのか」を解き明かし、次章以降で具体的な方法を探っていきます。
心の仕組みを知ることは、第一歩です。一緒にその扉を開けていきましょう。