気軽に楽しめる文豪の夢歩き(夢十夜感想)
夏目漱石の代表作『夢十夜』、朝日新聞で連載されていたこの物語は十個の短編からなっており、全て悪夢を描いた話だとされている。しかし実際に読んでみると陰鬱な雰囲気は少なく、(もちろんちゃんと読めば深い意味があるのだが)気軽に楽しめる作品だった。
一番有名なのはやはり最初の第一夜だろう。いくつかの教科書にも載っているこの文は、夢ならではの唐突さと淡々と進む時間、文学的で綺麗な終わりと文庫本5Pにも満たない内容ながら読者の心を打つ。
個人的に好きなのは三、四、六で、三はホラーチックな王道の悪夢といった感じで、こういう話はどこかで読んだことがあっても文豪の文章力ですごいと思わされてしまう。四は逆に奇妙な話とか読者投稿の怖い話っぽさがあって楽しい。そして六、オチまで含めてすごく好きな話で物知り顔で全然関係ない若い男が真髄を語るのも面白いし、それを信じて手当たり次第に試してみる主人公も行動力の化身すぎて面白い。
本当は第六夜のテーマは、明治となった今運慶のように仁王を見つけ出すことができる人間はいなくなり、過去の運慶にすがるしかない。日本文化の変化や伝統の薄れなどの近代批判的な内容らしい。しかし単純に話のオチとしてすごく面白いのでそんなこと関係なく好きな話だ。
普通に全部読んでも一時間かからない、ゆっくり味わって読むなら当時の人と同じく一日一夜なんて読み方もできる『夢十夜』。青空文庫で無料で読める他、朗読動画なんかもyoutubeには多く上がっているのでぜひ一度読んでみてほしい。
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今回読んだ本 夏目漱石作 『夢十夜 他二篇』 岩波文庫
青空文庫『夢十夜』のurl https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html
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