クズとクズの罵り合いが巧妙で面白い(『月と六ペンス』感想)
まずはじめにフランス人作家モームの代表作『月と六ペンス』の登場人物に対してはっきりクズと言ってしまっているが、これは少し過激な表現だと謝罪したい。実際は本作の主役であるストリックランドというクズとしか呼べないような人物がいかにして美に向き合い、それを手にしていったかを第三者である「僕」から読み解く小説だからだ。
語り手である「僕」は小説家の職業柄、たしかに積極的に事態の解決に動かなかったり興味本位で行動したりする皮肉屋ではあるが、ストリックランドには劣る。何しろ彼は周り