気になる匂いの、原因って気になる?またアイツらだよ。

※本記事は『潔癖症の自覚がある方』および、似た感覚を持つ方はスルー推奨です。人体と細菌(微生物)の関係性を扱います。

ということですので、プレビューに載りうる冒頭部分はマイルドにいかねば。もともと微生物研究が専門でして、人間と微生物の関係性についてはちょっと深い知識を持っていたりします。

彼らとの共生は長い歴史があり、その関係もまた、古くから研究され続けています。さぁもういいかな。NHKかと思ったわ。


いやー微生物って独特の匂いがあるんですよ!
培養したシャーレ(研究者はシャーレって言いませんが)の脇から匂いをかぐだけで、メジャーな菌はだいたい何を培養しているか分かります。

大腸菌は雑巾みたいな匂いだし、酵母はパンの匂い。僕の専門だった枯草菌(納豆菌の仲間)は、、、えーっと、独特な臭さです。言い表せんw


それはそうと、夏が始まりましたね、ようやく。
ワクワクする一方で気になることもあります。

ということで、今回の記事はこちら!

"原因となる酵素"とタイトルにはありますが、これは皮膚常在菌に由来しています。つまり、ワキガ臭の原因に菌が関与しているってことですね。絶対そうだと思ってたわ。

ワキガ臭の原因はアポクリン腺という汗腺が原因になっていることは恐ろしく有名ですね。この汗腺から分泌される成分が、どうにかこうにかされて、原因物質のチオール化合物になると独特の刺激臭になる、と。

この"どうにかこうにか"しているのが、Staphylococcus hominisという菌です。そう、名前から分かる通り、ブドウ球菌の仲間ですね。普通の皮膚常在菌です。

この発見によって新しいデオドラント製品の開発が進むかもしれないワケで、お悩みの方には朗報というところでしょうか。詳しくはリンク先をどうぞ。


より身近な「加齢臭」においても、菌が関わっています。

長く"オジサン臭"の原因物質とされた"ノネナール(nonenal)"は、ω-7脂肪酸の9-ヘキサデセン酸という聞き慣れない物質が酸化されることで生成されます。こう呼ぶと聞き慣れませんが、なんてことはない。パルミトレイン酸です。なーんだ。

男性の加齢とともに分泌量が増えることから、加齢臭に繋がるワケですが、どうもキチンと研究すると、もはやこれは"おじいさん臭"であることが分かってきました。

お察しのことと思いますが、酸化プロセスに菌が関わっています。ただ、ほっといても酸化は進みますので、どちらかというと分泌される脂肪酸の影響の方が大きいですね。


近年発見された"真のオジサン臭"とも言えるミドル脂臭においては、ジアセチル(IUPACだと2,3-ブタジオン)が原因物質とされています。
これは汗に含まれる、乳酸の代謝物質です。

ここに関わっているのが、先程と同じくブドウ球菌です。
ブドウ球菌界の『修二と彰』こと、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)とStaphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)のコンビだそう。

やめてほしいですね、オジサン化をプロデュースしないでほしい。いつまでだって青春をアミーゴさせてほしいんだけどな!

詳しくはこちらをどうぞ。『男のにおい総研』ってすごいサイト名だな!



この他にも、足の匂いで有名なイソ吉草酸も菌の代謝物ですし、寝起きの口臭も菌由来です。あーやだやだ。

ついでに言うと、雨上がりの土っぽい匂い。どこかノスタルジーを掻き立てられる懐かしい匂いも。。。放線菌の代謝物ゲオスミンの匂いです。


いけないいけない、ついアツくなってしまいました。

冒頭の記事の末尾に、本研究に携わったギャビン・トーマス教授からのメッセージがありますので、それを引用して終わります。

「私たちが言えるのは、ワキガは新しいプロセスではないということです。人間が進化する過程で、ワキガは間違いなく存在していました」

真面目な顔して何を言うとるんや。


まぁ世の中、変なことがあったら妖怪のせい。変な匂いがしたら菌のせい。と相場は決まっているのです。

とはいえ、匂いの一部は健康のバロメーターです。身近な方の匂いの変化には、思いもよらぬ疾病が隠れていたりしますので、"歳をとったから"といたずらに流してしまうのも問題です。気をつけなはれや!


ということで、
お付き合いいただき ありがとうございました。

お相手は わたくし
納木 まもる でした。

次回も楽しんでもらえますように。

末尾ハンコ

<編集後記>
今回の研究では皮膚常在菌のバランスによって、体臭の改善ができるかもしれないという点が面白いですね。
遺伝的背景と常在菌バランスが重なることで疾病リスクが上がることも、一部の病気ではすでに知られていることですので、僕らが思うよりもずっと人体は複雑にできているんですね。

ヒトゲノム計画によるゲノム完全解読からもう15年以上経っています。それでも人体の全てが明らかにならないのは、こうした共生細菌たちも含めて人体メカニズムが構成されていることが一因だったりするのです。

いや真面目か。
個人的には、ちょっと体臭があるくらいの方を好きになってきた気がしている今日このごろですが、ほとんど無かった体臭がほんの少しずつ生まれ始めている自分に加齢の影を感じる今日このごろでもあります。
まだ枕から犬の匂いはしません。


読んでいただいてありがとうございます。貴重な時間をいただいていることは自覚しつつ、窮屈にならない程度にやっていきます。