昭和奇譚 「夜鳴きそば屋の”客”」
ちょっとコワい、あ、いや大分コワい話し・・・・・
80年代、東京某所、仕事場マンション周辺の町内には、夜中になるとほぼ毎日のように夜鳴きそば屋のチャルメラが聞こえてきた。2時過ぎくらいからは、駅横に屋台を止めて営業するので、月のうち何度かはスタッフと食べにいっていた。
「2つね」と、すっかり顔馴染みになったオヤジに声をかけイスに座ろうとしたその時、真っ赤なフェアレディがギャギャンッと屋台の前に・・・。中から、私よりはるかに若いあんちゃんが出てきて「最近はガキばっかりだなッ」と、終電をのがして駅前ロータリーにタムロしている、同世代であろう連中をひと睨みし屋台のイスに背を向けてドッカリ座った。
30も年上であろう屋台のオヤジは精一杯のお愛想を言いながら、我々に作っていたそばのひとつをそのあんちゃんに・・、(おいおいそりゃない・・)と文句を言おうとしたが、すぐに状況を察し、止めた・・。二口三口、ソバをすすって、割りばしをポイ捨て・・、代金を払うのかと思いきや、その白いジャージ上下にやまぶき色のロレックスをしたあんちゃんは、逆にオヤジから2万円を受け取るとスッと立ち上がり、今度はわたㇲをひと睨みして悠然とフェアレディに乗り込み、一通を逆走して帰っていった・・・。
悪霊よりも生霊よりもある意味コワいんじゃね!?という30代半ば頃の実話。