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「早起き党」と「健康第一党」

早朝に両党は激しいつばぜり合いを繰り広げます。

「早起き党」は
「今のままの生き方を繰り返していてはダメになってしまう! いますぐ目をさませ! そうすればまだ間に合う!」
と主張します。

「私どもといたしましても、現状をよしとしているわけではございません。みなさまのご意見を厳粛に受けとめ、反省すべきは反省し、前向き、かつ不退転の決意をもって、生活改善に取り組む所存でございます。」
と言いつつ「健康第一党」が政権を担っているわたしは布団から出ようとしません。

業を煮やしたように早起き党は叫びます。
「もっと危機感をもってください! 内外の情勢は厳しい! 早朝のランニングをサボりつづけたあなたのBMI値は、昨年のデータと比較しても目をおおわんばかりの惨状だ! 家計の収支報告を見ても、借入金は増える一方! このままいけば老後にツケが回って首が回らなくなるのは火を見るより明らかではないですか!」

健康第一党は眠そうな声で苦し紛れの言い逃れに終始します。「健康に責任を負うわれわれは職責を果たすことで……。」

とはいえ与党の健康第一党も、安定多数にはほど遠い状況です。政情不安のどこかの国のように、与野党がしばしば逆転してしまいます。

するとなにかに取り憑かれたようにわたしは「抜本的改革」をスタートさせ、早朝から長距離ランニング、読書をしながら野菜サラダばかり食べ、節約をし、11時台に眠りにつきます。

そうなると順調にお金が貯まり、お腹の脂肪も目に見えて減ってはいきます。

しかしそのような生活は長く続きません。

わたしが疲弊しかけた頃合いを見計らい、健康第一党は政権奪取をもくろみ「快楽党」と水面下で調整を図り……。


「先送り」とはわたしがわたしの決定に確信をもてない心理が生むものです。

どちらの言いぶんにも一理あります。

一理あるものの、両者とも相手の言いぶんに歩み寄れません。意見の隔たりが大きすぎるからです。

やってみるとわかりますが「早朝」を「ほどほどの早起き」に妥協するくらいならいっそのこと「二度寝」したくなるものなのです。早起きにもならないのに眠いまま起きたくないからです。

これは仕事でも食事でも同じような気持ちになります。

「1分着手」で何も成果を残せないくらいなら、いっそのことをまったく手をつけずに済ませてしまいたいと思うものなのです。