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緑陽社さん見学会(2回目)

ご縁がありまして、緑陽社さんの工場見学会に行ってきました(2回目)。再訪となると、さすがにこの工場の機材と間取りをだいたい覚えました。
前回がコロナ前滑り込みで、それ自体が第一回に相当するらしいです。そのあとこういう企画どんどんやってこう、となったところでコロナ感染拡大で工場見学会どころではなくなり、ようやく今再開できた、という感じのようです。コロナ自粛期間、印刷所さんほんと大変だったんですよね。

第1回目のようすはこちら↓。このときはデス子さんつながりだったかな。

今回は本フェチ大賞絡みのメンバーだったので、参加者全員かなりの印刷オタクだったんじゃないかと思います。同行者ひとり連れてきてOKだったので、わたしより印刷所にくわしい編集を連れてきました。
(できるだけ正確に記録しておこうと思ったのですが、記憶が曖昧になってるところもあって、間違ったこと言ってたらすみません。聞き間違いもあるかも。)


入稿から印刷まで

今回は入稿から製版、印刷まで、がテーマのようで、スタートは製版機小屋からでした。とにかくでかい箱みたいな機材から、アルミの板がぺろーんと出てきます。この板をオフセット機にセットして、水と油の反発作用を利用して図柄を紙にスタンプします。アルミの板を紙に直接、ではなく、間にブランケットというローラーに転写してそれを紙に転写するので、「オフセット」と呼ぶそうです。めんどくさそうに見えますが、こうすると版が傷みにくいメリットがあるというのをどこかで聞いたような。

いまの製版は「CTP」という方法で、図柄をコンピューターから直接刷版に焼き付けます。CTPは「Computer To Plate」の略です。「いまもうCTPだからー」、みたいなそれっぽいこと言ってても、元の言葉を聞いたらそのまんまやんけ、ってなります。
以前はコンピューターと刷版のあいだにフィルムという工程があって、フィルムを版に焼き付けていたそうです。印刷博物館に行ったら見れるかもしれない。訂正する部分を10円玉で削るとかそういう伝説は耳にしていたんですが、どの工程にフィルムがあるんだろう…と思ってました。
CTPはフィルムを介さないので、元のデザインをあまり損なわずにそのまま刷版に焼き付けることが可能になったわけですが、それを逆手に取ると、ちょっとぼやけたような加工をしたら、フィルム時代の印刷みたいな感じにもできるわけだなあと。最近の流行りで80年代の印刷物風のデザインもよく見るんですが、なんか違うな…というときは、鮮明すぎるのかも。

工場のほうには各種印刷機や紙折機、丁合機、製本機、断裁機などがひととおりあります。すべて超高速です。製本機、何度見ても表紙がつくタイミングがよくわからずじまい…。
今回ちょうどわたしが折り本のネットプリントを配布中だったこともあり、紙折機で折った紙のサンプルを渡されて、あ、同じ、って思いました(もうやり込みすぎて手が覚えてるんですよね)。このネットプリントのネタを思いついたの、以前は入稿後に、でかい色校を折った状態のもので最終チェックしていたからなんです。いまはもうプリントアウトみたいなものしか見れないけど。

機械では、折り目のところに大きめのミシン目みたいなもの(網代)を入れるんですが、無線綴じの場合、背に糊が染み込みやすくなるだけじゃなく、(穴があいていることで)折ったときに間に挟まった空気が抜けるメリットもあります。
網代カッター(刃)を見せていただいたら、ピザカッターみたいな感じだったので、ネットプリントもミシン目カッターで折り目をつけたら、複数の折を重ねて無線綴じにできるのでは…?という考えが浮かびました。今度試してみようと思います。いままで背はノコギリで傷を入れていたのですが、ミシン目を入れちゃえば開きもよさそうです。

使い込まれたオフセット機。1回に印刷する紙のサイズは意外と小さい(とはいえ一般人からみたら大きいかも)ので、オフセットといえども手がかかっているんだなあとあらためて思いました。前回はなんか大きい、くらいにしか見えてなかった。

オフセット機の刷り順についても詳しく説明してくださって(これ気になりますよね)、緑陽社さんではK→C→M→(UVランプ)→Yでした。KCMはインキの粘度が高いので先に刷り、途中にあるUVランプで固めてから(ネイルと同じですね)、Yを刷る、という順番なんだそうです。そうするとYが濁らない。

端の色玉をセンサーで読み取って、色がちゃんとでてるか計測します。正確な色が見えるこの照明が欲しいです。

今回、入稿データを受け付けたり製版作業をするオフィスフロアのほうも見せてくださいました。土曜日なのに、冬コミ当落&12/1合わせの最初の締め切りということもあってか、みなさん平日のように出勤されてる感じでした。年末までもうずっとお忙しいですよね。おつかれさまです…。


2色機に再会する

わたしがいちばんお世話になっているであろう2色機に再会できました。1回で2色まで印刷できる機械です。今回は稼働していなかったんですが、前回は、これでトレーシングペーパーを刷っている状態を見せてくださいました。
今回、この機械用の刷版と製版機のほうも見せてくださったんですが、刷版、アルミではなく紙でした。位置合わせもかなりアナログで、「2色刷りは、ずれますよ」っていつも言われてた意味がより深く理解できました。これ、リソグラフよりずれる可能性高いです。長方形だから対角線の方向にずれることもあるよね、くらいの感じでいたんですが、この状況で高確率で合わせてくれてたの、ほんとに感謝です。
(ちなみに、特色刷りが常にずれるかというとそういうわけではなく、印刷所で使う機材によります)

よくよく見ると、用紙のサイズもそんなに大きくなく、1回の印刷で2Pかできて4Pぶんくらいしか刷れないでしょ、という感じだったので、あの2色刷りの本、手間かかっていたんだなあと(2回目なので細かいとこに目がいくので、ひしひしと感じます)。

1回で2色まで刷れる機材で、そういう意味ではリソグラフと同じ感覚。つまり手前の色見本(36色)は、18回機械に通したということになります。

わたしが緑陽社さんにお願いした本、だいたい2色刷りです。いちばん大変だったのが『Gothic and Baroque』だったんじゃないかなあ。金インキは他のインキを弾くので、微妙にトラップをつけたヌキでデータをつくっています。これがあの機械でここまで位置が揃っているの、本当にお世話かけました。

『Gothic and Baroque』は金と黒の2色刷りです。
黒をノセにできたらみんな楽だったんですが、ヌキにしないといけないということで、金のほうに極細のトラップをつくっています。ちなみに、金にノセはできないというのは他の印刷でも同じようで、『つくるデザインIllustrator』の帯も金と黒ですが、ヌキです。金以外の、たとえば黄と黒の場合は黒をノセにできます。

金や銀のインキを気軽に本文に使えるので、特色刷りは楽しいです(インキ替え加算はあります)。金銀は対象にならないみたいですけど、緑陽社さんではたまに本文特色フェア(インキ替え無料)もやっているので、試してみるといいですよ。本文色を紺とか燕脂とか茶にできます。

『可愛日本』は、金と赤の2色刷りです。これはB5本を断裁してつくったもので、この手を使うと横長本にもできます。単に横長がやりたかった。
このときは金インキの特性は学習済みだったので、ちょっとずれてもいいようにつくってあります。でもそんなにずれてない。


『BOOKBINDING at HOME』はべにとスカイブルーの2色刷り。この組み合わせはノセが使えるので、赤文字のほうをノセにしてます。
『diablogue.』もべにとスカイブルー。写真もきれいにでます。フルカラーはコスト的に無理だけど、色が欲しい、というとき、この組み合わせおすすめです。どちらの色も本文に使える濃度があるし、不思議なことにあるはずのない緑が見えます。

チノ語録も緑陽社さんです。カバーつき文庫本にすると、商業誌みたいな本もつくれます。

小説本セットの特殊紙表紙+スミ刷り本文に、カラーカバーを追加するとできます。
トーンにグレーを重ねる、というすごくモアレそうな原稿も、FMスクリーンできれいに出してくださったような。記憶違いじゃなければ、きれいに出すために、ひとつの刷版にFMとAMを同居させることもやってるらしいです。


デジタル印刷機

最近導入したデジタル印刷機もお見せしますよ、ということでこれも楽しみにしていました。取り扱いのある印刷所もだいぶ増えてきましたよね。
印刷機自体はこれもまたでかい箱みたいな感じで、中で何が起こっているのかはまったくわからないですが、仕上がりはめちゃくちゃきれいです。サンプルをいろいろいただきました。
トナーだから色の沈みがあるかな、と思っていたのですが、緑陽社さんのはかなり明るくでます。

色、かなり明るめです。へたするとオフセットより明るいかも。緑陽社さんは基本的に明るく出す、という方向で調整してるみたいです。前きいたときは、オフセットもMのインキ自体がそもそも明るい、みたいなことをおっしゃってました。RGB→CMYK変換を依頼した場合、Yの濁りなどもとってくれてるそうです。よくわかんない場合はおまかせしたほうがきれいにでそう。
白インキはコントラストが強い紙(黒とか)だとはっきり出ます。
スターリーカラーのサンプルはイベントで配布されているのをもらってたりしたんですが、これデジタル機だったかーと。グロスPPだとさらにきらきら、マットPPだとしっとりした感じ(絵の具を厚く塗ったような状態)になります。現物見ると、いいなあと思いますよ。

これでオールカラー本がつくれるかなーと思ってたんですが、まだちょっと手が出せないので、まずは紙ものか、モノクロ本文でいけそうなものあたりから考えようかなと。

モノクロ本文はレーザープリンターの感じに近いかも。オフセットのスミより濃いめにでるので、デフォルトでリッチブラックみたいな濃さ。


見学会のおみやげ

おみやげに端紙ノートをいただきました。端紙や廃盤になった特殊紙などを無線綴じしたノートです。いくらでも持ってっていいですよー、と言われましたが、すごくよくわかる。端紙でノートつくるの楽しくてつくりすぎちゃうんですよね。わたしも端紙たくさんとってあります。

表紙から最初のページをチラ見せ加工になっています。この加工も緑陽社さんでできます。わたしはここから「玉しき」が見えたのでまず最初にゲットしました。

なんとノド側にミシン目が入っていて、切り取れるようになっています。角丸加工もされているし。断裁機で斜め小口の実演見せてくださいました。

折れているところがミシン目です。手がかかっています。


緑陽社さんは、イベントなどで原稿作成マニュアルを配布していて、これもお土産にいただきました。WebにはPDF版もあります。
(クッションページが見当たらないので、PDFを直リンクします)

https://www.ryokuyou.co.jp/doujin/downloads/genkousakuseinokihon_ryokuyousha202410.pdf

その他、紙見本などもたくさんいただきました。ありがとうございます。

データのつくりかただけでなく、本の仕様を決めたり、スケジュールをたてたりと、その前の段階から面倒を見てくれているのがありがたいです。台割表のサンプルなどもあるので、編集者も見たらいいんじゃないのかなあと。

内容的には緑陽社さんのサイトに以前から書いてあったことなんですけど、印刷するために1ページにおさまるように情報がまとめられていると、PDFでもやはり見やすいです。紙の本にする、というの、令和のいまからするとなんか前時代的なことに見えるかもしれないですが、情報を一定量で区切る、というのは人間がものごとを理解する効率を上げるんですよね。ぜひ、イベントなどで緑陽社さんのブースに立ち寄ってみてください。紙の質感もとてもいいです。

全体的に手作りイベントみたいな感じの見学会だったんですが、テーマと構成もよく練られていて、説明も丁寧でした。たぶんこのあとこういうイベントも随時開催されていくんじゃないかと思いますので、募集があったら応募してみるといいと思います。
今回こういう機会を用意してくださり、ほんとうにありがとうございました。

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