自然のこと93 | 大寒。雲海。300°

2025年2月22日 13:17

Nature Good Modeとは
ある地球の定点から、その瞬間の刻々と移りゆく自然の風景を、額縁のように切り取った時空間映像。めぐる時とともに第三惑星地球の時空間を美しい映像で綴っていきたいと思います。二十四節気に身を寄せ、季節の移り変わりを感じ入りながら地球の目覚めを撮影しています。

大寒の早朝、地の底まで冷え切った空気を纏う高野山。弘法大師空海がこの地に真言密教の聖地を開いてから千年以上。冬の厳しさは、巡る時を越えても変わることなく今この瞬間も極まった冬の冷気が肌を刺す。山の端が微かに明るみ始めると、夜明けの空は群青に染まり、やがて南東から金色の太陽が顔を覗かせ始める。眼下に広がるのは、雲の海。白銀の波が山々を包み込み、浮かぶ峰々がまるで別世界の島々のようだ。白銀の波が山々の稜線を覆い尽くし、まるでこの聖地が天と地の狭間に浮かんでいるかのようだった。雲海の彼方に朝日が差し始めると、冷え切った身体を温めるように、胸の内は静かに敬虔な心持ちで満ちていく。自分が天地の営みの中に溶けていくような、言葉にならぬ安らぎを感じる瞬間だ。高野山は、開山から1200年経った今も祈りと修行の炎を絶やさぬ地であり、生と死、現世と彼岸が交わる静謐な空気で満ちているのを雲海が肌身で伝えてくれているようだった。