ウサギとカメ

必ずソフトウェアが先行する。概念が提示されて、PoC (Proof of Concept : 概念の検証のために行われる実験) をするステップでは、既存のハードウェアを寄せ集めてそこへ「新しい概念を実装したソフトウェア」を組み込んで動かしてみるからだ。
それで、系全体を眺めてみてどこが弱いのか、どこを速くすればいいのか、なんかをつかんで、そして、優先順をつけてハードウェア化していく。

だから、最初のうちは「ハードウェアメーカー」のひとたちは開発者からセールス担当の方までほぼ素人だ。
ソフトウェア屋が、標準策定の最前線にいて仕様書草稿と首っ引きになってソフトウェアを書きPoCを繰り返しやって、ものすごくやった気になっているが、「世の中に出る = 市場が形成される」際に「できあいの機材にオープンソースが載っている」わけはないのだ。

ハードウェアメーカーが製品を出し始めると、今度は「先駆者」としてソフトウェア屋は頼られる。開発者として、応用提案の作成者として、そして購入者先での現場作業者として。
が、それもほどなく不要になる。メーカーの、全セクションの方々にノウハウが行き渡り習熟するからだ。そうなると立場は逆転する。使用事例はメーカーの側にはるかに多く集まり、技術的なフィードバックがかかり、ソフトウェア屋は「技術の最前線」から置いていかれる。

「ウサギとカメ」みたいなものだが、GAFAと呼ばれる支配的なプラットフォーマーたちはハードウェアメーカーの逆転先行を許していないし、テスラのようにハードウェアメーカーへの転換もしていない。普遍的に先行するソフトウェア屋が設備事業体やハードウェアメーカーと共存共栄して高度化し相互作用で業界全体が大きく進化する道筋のデザインの手掛かりはこのあたりにありそうだ。

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