【掛け合い台本】夕暮と朝霧
夕暮(ゆうぐれ):木の神様
朝霧(あさぎり):水の神様
性別は問いません。ご自由にどうぞ。
夕暮「おはよう朝霧。今日も良い天気になったね」
朝霧「おはようございます。夕暮様」
夕暮「何を見ているんだい?」
朝霧「お山の木々を。今日も夕暮様の育む者達はお美しいと」
夕暮「嬉しい言葉だけれど、嘘はいけないよ朝霧」
朝霧「はて、何のことでしょう」
夕暮「分かっているさ、子ども達だろう」
朝霧「わたくし、子どもは嫌いです」
夕暮「あの子たちは今日も来てくれるだろうか」
朝霧「うるさいだけです。それに、あの者達は夕暮様が育てた木々の小枝を折ってしまいます」
夕暮「それぐらい構わないさ。また育てれば良い。さて、早くひるやすみにならないだろうか。楽しみだな、朝霧」
朝霧「夕暮様が楽しいのであれば、わたくしも待ちましょう」
夕暮「そうだね。共に待とうか」
夕暮「朝霧、お山の主から聞いたよ。君、あの子どもに姿を見せたんだって?」
朝霧「はて、何のことでしょう」
夕暮「いつも我々に会いに来てくれるあの子だよ。思えば、君はこの場所だってあの子どもにしか教えていないね。そんなに気に入ったのかい?」
朝霧「花をいただいたお礼です。何もせぬは恥かと」
夕暮「よほど気に入ったと見える」
朝霧「一度だけです。二度はありません」
夕暮「勿体ない。お山に来る他の子にも見せてあげれば良い。君はこんなに美しいのだから」
朝霧「夕暮様。わたくしにはそれほどの力はございません。故に、一度だけ」
夕暮「そうか。やはりそうなのか。いやはや、こればかりは憎いな。あのだむとやらに、君の滝を隠してしまった人間が」
朝霧「この石碑を立ててもらえただけで良いのです。たとえ滝から離されてしまったとしても。ここならば、夕暮様とも近いのですし。良いのです。私はここで」
夕暮「朝霧、これからも共にあろう。私と君で、このお山を育てよう。これからも、ずっと」
朝霧「はい、夕暮様」
朝霧「夕暮様、今日は嫌な音がしますね」
夕暮「そうだね。私もこの音は苦手だよ」
朝霧「あぁ、また。夕暮様のお育てになった木が」
夕暮「仕方がないよ。このお山の木は、ほとんどが人に与えるための木なのだから。大切に使ってもらえるのなら、それだけで良いのだ」
朝霧「夕暮様、泣いておられる」
夕暮「やれやれ、やはり寂しいものは寂しいな」
朝霧「早くこの音がやまないかしら」
夕暮「そうだね。やんだら、皆を慰めに行こう。小さな宴を開こう」
朝霧「はい」
朝霧「夕暮様?夕暮様?どちらに?」
朝霧「夕暮様、あの音がやみましたよ。皆を慰めに参りましょう。小さな宴を開きましょう」
朝霧「夕暮様。わたくしはここにおります。今日も、貴方様の木々にお水をわけております。強く強くお育てしますよ。夕暮様」
朝霧「夕暮様。貴方様はもう、いらっしゃらないのですね。あの日、貴方様の木は、伐られてしまったのですね」
朝霧「夕暮様。わたくし、水を止めました。このまま、わたくしも消えてしまいとうございます」
朝霧「夕暮様。あの子が来ました。とてもとても久しぶりに。大きくなっておりました。もう、忘れてしまったのかと思っていたのに、あの子、わたくしを探しておりました。あぁ、もう一度、わたくしの姿をみてもらいとうございました。せめてせめて、わたくしの水をわけてあげたかった。ですが、もうだめですね。あぁ、最後にあの子に会えて嬉しゅうございました」
夕暮「おや、こんなところに水の神が。私の名は夕暮、木の神だ。のんびりしていてな、日も傾く夕暮れ時に芽吹いてしまったのだ。聞いておるかい?……ふむ、ここにはもうおらぬのか。せっかく生まれたというのに、これでは寂しいな」
夕暮「お水の子や、早く目覚めておくれ。私の木々を育てておくれ」
夕暮「やぁ、空っぽの水の神よ。今日はだむとやらを見に行ったぞ。大きくて立派だが、大切なものを隠しておるな。勿体ない勿体ない」
夕暮「空っぽの水の神。今日は小川を見に行ったよ。酷いじゃないか。あれでは生き物は育たないぞ。早く目覚めよ。カニもカエルも待っているぞ。勿論、この私もだ」
夕暮「やや、人の子だ。おい、君に花だぞ。良いではないか。君は愛されているな」
夕暮「今日は美しい朝霧の日だな。お山も喜んでいるよ。なぁ、君が生まれたら、朝霧と名を付けよう。君はあのだむに美しいものを隠しているな?私も君が見たいよ、朝霧」
朝霧「おはようございます。夕暮様」
夕暮「おはよう朝霧。今日も良い天気になったね」
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