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【ショートショート】「boyfriend」/ウチの彼ピはインプレゾンビ

こちらの曲をイメージしてお話を作ってみました!よろしくお願いします🙇‍♀️



「ねぇ小春こはる、大丈夫なの?その男」
 会社の昼休憩でウチの話を聞いた小夜子さよこが眉をひそめた。
「だって急に告られたら、気になっちゃうじゃん?」
 『boyfriend』というアプリで知り合った、濃い眉毛で端正な髭をした画像の男性。日本語を勉強中らしく、ちょっと変な表現をする時はあるけれど好みのタイプだった。

「だってさぁその人、人気あるツイートに鬼リプしたりしてんでしょ?インプレゾンビじゃん」
「日本語うまく話せないとなかなか雇ってもらえないから小遣い稼ぎしてるって言ってた。ウチがバズれば他の人にリプしなくてもいいんだけどね」
「ホントかなぁ?それにさぁ、一般人が万バズとか、まずムリ!ちょっと付き合い方考えた方が良いと思うよー」

『私はあなたのそれが好きです』
『それは私に幸福を得ます』

 カタコトの日本語でこんなメッセージ送られてきたんだよね。
 ドキドキしちゃった。
 ちょっと怪しいのは知っているけど、それくらいの方が魅力を感じる。ウチって変かなぁ?

「ねぇ、ウチのどこが好きなの?」
 彼に聞いてみた。
「あなたには優しさが存在します」
「そんなことないよ。でもありがとう」
「はい。そうです」
 その返答にちょっと笑ってしまった。
「そこは『どういたしまして』とか…も変か。うーん……まぁいっか!面白いから」
「それはあなたに面白いです」
「うんうん。面白いよ」
 他愛もないやりとりが一日の疲れを癒してくれた。

 そんなある日。

「ちょっと、小春の彼氏ってこれ?」
 小夜子のスマホに映る暴露系ツイートにリプしている名前とサムネ。まさにそれだった。
「そう!それ!良く分かったね」
「だってこの人、ほら、これ見て」

α¿ιΜф∂Π∮τчυЮ日向小春(26)

ねぇ、ウチのどこが好きなの?

あなたには優しさが存在します

そんなことないよ。でもありがとう

はい。そうです

そこはどういたしましてとか…も変か。うーん……まぁいっか。面白いから

それはあなたに面白いです

うんうん。面白いよ

「え!ちょっと!何?これ?」
 暴露系ツイートのリプの中で、ウチらのやりとりが暴露されている〜〜!!しかも実名と年齢入りで!

 ……それに最初の文字は何?暗号?

 ……なに人やねん!Σ(-᷅_-᷄๑)

「だから言ったじゃん。やめときなって」

 彼に聞いてみよう。
 そう思ったが、その日から『boyfriend』はメンテナンスという名目で起動しなくなった。

 そのうちにも、ウチらのやりとりは実名と共に多くの人の目に止まっている。

 どうしたらいいの?

「開示請求しよう!知り合いに弁護士やってる人いるから紹介するよ」
 小夜子と弁護士事務所へ行くことにした。

「あー、『botfriend』ね。最近相談が何件かあるんですよねぇ」
「ボットフレンド?」
「そうそう。よく『ボーイフレンド』と間違えられるんですけどね、AIが受け答えしているらしいんですよ。女性に甘い言葉を囁くように設定された『bot』がね」

 え……ボット?嘘でしょ?

「ロゴを良く見て下さい」

「ほら、『』でしょ?」

 あ!『y』からちょっとだけ線がはみ出てる!
 ……やられたぁ!
 でもこの角度、絶対意図的だよね?

 ウチはずっとボットと会話してたの?それで癒されてたの?
 メッチャ恥ずいじゃん!

「でも、金銭の要求をされていない分、まだ良かったですよ。中にはそういう人もいますからね」

 話によると、その闇グループ内でシステムエラーが起き、会話が流出したりしたらしい。
 他にも被害者がいたことで、流出した会話は早期に削除される方向で動くとのことだった。

「今度こそA5ランクの彼氏見つけてやる!」
 小夜子を連れて、焼肉屋でお得カルビとチョレギを食べながら、ビールにハイボールに焼け酒をした。

「小春、これに懲りて怪しげな人はやめとくんだね」

 小夜子の言う通りだ。
 ウチにインプレッションを残した、この世にいない彼氏。
 まさに『インプレゾンビ』。

 あームカつく!飲もう!

「すいません!ビール、ピ…ピ…ピッチャーで!」


こちらの企画に参加させて頂きました。
素敵な楽曲をありがとうございます😊
今日ジョギングしながら考えたお話です。
私なりにイメージして作らせていただきました。よろしくお願い致します🙇‍♀️

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