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ごはん杖【毎週ショートショートnote】

私の母は、昔から料理が上手かった。

片親で忙しいはずなのに、毎朝お弁当を作ってくれる。そのあまりの綺麗さは、クラスでちょっとした噂になるほどだった。家に帰れば、毎晩のように豪勢な食事が待っていた。

そんなある日、とある企業が『ごはん杖』という機械を開発した。一振りするだけで、どんな料理も一瞬で現れる。この魔法じみた道具は、その破格の値段も相まって販売と同時に話題となり、全国の主婦たちを助けた。

今まで頑張ってくれた母を楽にしてあげよう。その一心で、私は母への誕プレとして『ごはん杖』を購入した。

「はいこれ。いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとう」

誕生日当日、綺麗にラッピングされた包み紙の中を見た母は、複雑な顔をしながら「ありがとう」と言った。

その日の晩ごはんで早速ごはん杖を使って、私は驚いた。出てくる料理はどれも、紛れもなくおふくろの味だったのだ。

そういえば、母の勤めてる会社って……

顔を上げると、顔を真っ赤にした母が俯いていた。


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