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【読書メモ】『赤毛のアン』再読中⑤アンの好きな花

 『赤毛のアン』シリーズにはたびたび「メイフラワー」という花が出てきます。アンはこの花がとても好きなようです(古い村岡花子訳では「さんざし」。2022年に講談社から単行本で出た村岡訳の『赤毛のアン』改訂版では「メイフラワー」となっています)。

「メイフラワーのない土地に暮らす人は、かわいそうね」アンは言った。「そういう人たちは、それはそれで、もっといいものがあるわよって、ダイアナは言うけど、メイフラワーよりすてきなものはないわ、マリラ」

『赤毛のアン』第20章より

 ギルバートは大学在学中、一度アンにプロポーズして断られているのですが、その時にアンに贈ったのはメイフラワーの花束。

ギルバートは、アンと並んで腰をおろし、メイフラワーをさし出した。
「この花を見ると、ふるさとのことや、学校の懐かしいピクニックを思い出さないかい」
アンは受けとり、花束に顔をうずめた。

『アンの愛情』第20章より

訳註によると、メイフラワーの花言葉は「君だけを愛す」なんだそうです。

 アンとギルバートは結局結婚するんですけどね。
 長男のジェムは母親に喜んでもらいたくて、毎年春に

ぼくは四つの時からずっと
何年も、何年も、何年も、母さんにメイフラワーを持ってってあげた

『炉辺荘のアン』第5章より

とのこと。なんてカワイイ息子でしょうか。しかし、ジェムがメイフラワーを取りに行けなくなる時が来ます。青年となったジェムは戦争に行くのです。

メイフラワーの花が、虹の谷のひっそりした一角に咲いた。リラは花が咲くのを待ちもうけていた。かつてはジェムが早咲きのメイフラワーを母さんに持っていった。ジェムが出征すると、ウォルターが母さんに贈った。そして去年の春は、シャーリーが、母さんのために花を探した。そして今、リラは自分が兄さんたちの代わりをしなければならないと思った。

『アンの娘リラ』第25章より

 こんなふうに、毎年子供から母アンにささげられてきたメイフラワー。
 どんな花なのでしょう?



 こんな花です。

メイフラワー
さんざしとは別の植物らしいです

 この写真は、アンのシリーズ8巻を翻訳した松本侑子がプリンスエドワード島で撮影した写真です。ご本人がX(旧Twitter)に投稿した画像(2021年9月7日のもの)を拾いました。
 早春に白やピンクの星形の花が咲き、甘く爽やかな香りを放つそうです。

 余談ですが、「メイフラワー」で検索した時、候補に「メイフラワー号」が上がったのを見てふと思ったんですが、アメリカ白人も最初は移民だったのですよね。この間就任した大統領は移民を強制送還する方針のようですけれど。
 ついでに言うと、カナダも移民の国。
作者のモンゴメリはスコットランド系のカナダ人。アンも同じくスコットランド系という設定です。
 プリンスエドワード島は、最初は先住民が住んでいましたが、まずフランス領になり次に英国領に。その後カナダは独立しました。アメリカの新大統領は「カナダはアメリカの51番目の州に」なんて言ってましたが…。

※文中の引用には、松本侑子訳の文春文庫版を使用しました。
 ヘッダーは、『アンの愛情』カバーイラストから。メイフラワーの絵が描かれています。

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