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にんじんとおねえちゃん

「いただきます!」

たんにんの山口先生は、楽しそうなこえでいった
いつもにこにこしていて、やさしい先生

「小学校はね、給食があってね、おいしいんだよぉ〜」
っておしえてくれたのはおねえちゃん
楽しみにしてたんだ、はじめてのきゅう食
おうちでもよくママが作ってくれるカレーライス💕

みんながカレーをたべはじめると
ちょっといたずらっ子みたいなかんじに、山口先生はスプーンににんじんをのせて、みんなにみえるように少し上に上げた

「にんじん…オレンジ色のやさいだね
みんなのにも入ってるかな?」
「はいってるぅ〜!」
「どう?おいしい?」

「おいしい!」
「おいしい!」

口ぐちにみんながいう
にんじんキライな子はいないのかな
にんじんおいしいとおもわない子はいないのかな
だまっているだけなのかな
わたしはにんじんがキライ

わたしたちのきゅう食、
おねえちゃんたち高学年の人たちが、おせわしてくれたんだ
カレーの係が、おねえちゃんだったのは、びっくりした
きゅう食マスクの下でいたずらっぽくわらってた
じょうずに、にんじんをよけてよそってくれた
さいごに一つだけ、小さいにんじんをのっけた
なので、わたしのカレーライスには、にんじんは一つだけ

みんながにんじん、おいしいっていうのをきいていたら、なんだか、かなしくなってきた
だってわたしはそういえない
いったら、うそつきになっちゃう
山口先生も、おいしいっておもってるだろうな
カレーライスを見つめたまま、うつむいていたら、
なんだか、なみだが出てきた

山口先生がびっくりしたみたいなかおで、わたしのところへやって来た
「どうしたの?」

「あれ、にんじん一つだけだね、たくさんほしかったかな?」
ちがう…くびをぶんぶんよこにふった

「気持ち悪い??」
先生はいいながら、わたしのおでこに手のひらをあてる、ママみたいだな…っておもいながら、やっぱりくびをよこにふった

「食べられそう?」
こんどは、くびをたてにふった

「無理して食べなくてもいいんだよ、残してもいいからね」
もういっかい、くびをたてにふった

山口先生は少しわたしを気にしていたけれども、せきへ戻っていった
気もちわるくないし、だいじょうぶ
なんで…なみだなんか出ちゃったんだろう
よくわからないし、はずかしい

となりのせきの、ようちえんからいっしょのもえちゃんが、心ぱいそうにわたしを見てたので、なんでもないよ、のつもりでカレーを食べはじめた
きゅう食のカレーは、おうちのよりも少し甘いような気がした
一つだけ入っているにんじん、やっぱりさいごにのこっちゃった
なんだかおねえちゃんのかおみたいだ、ちゃんとキライなんだ、っていえば良かったのかな?おねえちゃんなら、どうしたのかな?

先生がいったようにのこしてしまったら、なんだかおねえちゃんがかわいそうな気がした
だけど…おねえちゃんのかおみたいなにんじんを食べちゃうのもなんだかかわいそうだ



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