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お能はとってもダイバーシティ?能の五番立についてのお話

こんにちは。観世流シテ方能楽師•渡邉瑞子です。
春めいて来ましたが、まだまだ寒い日が続きますね。
さて、今日は能楽に見えるダイバーシティ=多様性 と寛容さについて思うところを書いていこうと思います。

私が子供の頃とは異なり、こんにちの日本は様々なルーツの方がおられ、価値観も多様化してきている様です。
では、お能の題材にはどの様な人たちが登場•活躍しているのでしょうか?今日は能の五番立のお話を中心に、お能の表現の多様性、寛容さについて見ていきたいと思います!

お能の曲の現行曲は、流儀により多少の違いはありますが、約200前後あります。

「翁おきな」という特殊な曲を除き、他の曲は全て五番立といい、5つのジャンルに振り分けることができます。
すなわち、
①神
②男
③女
④狂女
⑤鬼
です。
①は神様を主人公にしており、住吉明神や蔵王権現など、様々な神様が登場します。
②は、男、とりわけ武士を主人公としており、源平の武将、平清経、源義経なと、皆様よくご存知の平家物語に登場する武士達が活躍します。
二番目は修羅物とも呼ばれます。これは、武士は殺戮が仕事ですから、勝っても負けても死後は修羅道という地獄に堕ちるという死生観に基づいているそうです。
③は、その名の通り三番目物、または鬘物とも呼ばれますが、美しい女性、またそれに扮した草木の精が主人公となることが多いです。あるいは高貴な男性も主人公となり得ます。
また、特に女性が主人公の場合、若く美しい女性だけでなく、中年の女性や老年の女性をも大切に扱っているのは興味深いところです。
④四番目は狂女物とも言い、愛する者との別離に苦しんだり、その最中に刹那、自然の美しさに心を奪われたりする、生きている人間の心の機微が描かれています。
また、ほかのカテゴリに入らないものが全てこの四番目に分類される、いわば何でもボックス的な側面も持っています。
⑤五番目は切り能とも呼ばれ、鬼や天狗が活躍します。
以上極めてざっくり簡単に五番立についてお話しましたが、このように、お能には様々な人、人のみならず、人ならざる神や鬼、天狗、草木の精、外国の方、私自身もそうですが障害をお持ちの方、男性同士の恋愛、過去に密猟や強盗など犯罪をしてしまった人など、今のご時世だとコンプラ的にアウト?かもしれない登場人物までも、実に生き生きと活躍し、自身の心情を表現しています。

このことはやはり日本が和を以て貴しとなす、和の国だからなのではないか?と思います。

それでは、また。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。

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