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BJ改変騒ぎで考える「キャラクターの性別変更」は果たして改変かどうか?

『ブラック・ジャック』のドラマで、改変騒ぎが起きている。

最近、「セクシー田中さん」の痛ましいことがあったので、騒ぎたくなる気持ちもわからなくはない。原作は尊重しなくてはいけない。

ただ、作品が連載されていた当時と、今では世界の状況、社会の状況がまるで違う。今、当時の作品をそのまま見ると、当時作品を読んで見ていた人にとっては違和感を感じないことでも、今を生きる人が見ると、すごく違和感があることもあるだろう。

最近、とても違和感があったのは、「プロジェクトX」の新シリーズが始まったタイミングで、前シリーズを見なおしていた時、プロジェクトに男性しか出てない話がほとんどだったことだ。昭和の高度成長期、日本では女性は働いてなかったのか? とさえ思ってしまう。令和の現在、社会で働いている身からすると、すごく違和感があった。

違和感があると、そこが気になって、作品に没入できない。あるいは現実世界との乖離を見つけてしまうと、作品自体のリアリティが失われてしまう。あぁ、これは架空の話なのね… と感じてしまうから。

医師の男女割合

医師の男女の比率を見てみよう。現在、女性の医師の割合は、男女半々くらいの国が多い。

一番、女性の割合が低い日本でも2割は女性医師だ。

次に『ブラック・ジャック』に登場する医師を見てみよう。

さすがに原作を全部見直すといつまでもnoteが書き終わらないので、今日は、「ブラックジャックの登場人物」 | Wikipedia(2024/6/24時点)を参考にする。

なんと、印象に残る回の医師は、ほとんどが男性医師だ。Wikipediaでは、女性は「BJをめぐる女性たち」という枠で紹介されていて、うち5名が医師だが、名前がない人、医師というより後輩ポジションが主な役割の方もいる。それでも、先進的な手塚治虫さんだから、これだけ女医を登場させたのだろう。最近、NHKの『虎に翼』でも話題だが、(数の少ない)女性だから信用できないと思われる時代も確かにあったのだろう。

「セミレギュラー」
〇本間丈太郎(ほんま じょうたろう):医師。BJの命の恩人。
〇ドクター・キリコ:長い銀髪(軍医時代は丸刈り)に眼帯をした長身痩躯の男。
〇手塚(てづか):BJの医大時代からの友人。
〇山田野(やまだの):BJの医大時代の恩師。口を覆う大きな白ひげが特徴。
〇辰巳(たつみ):BJの医大時代の友人。配役されているキャラクターは、『どろんこ先生』の主人公「どろんこ」
〇白拍子泰彦(しらびょうしやすひこ):東西大学の教授であり外科部長。配役されているのは、『バンパイヤ』第1部の主人公「トッペイ」。

「ゲストレギュラー」
〇椎竹(しいたけ):真中病院に20年以上勤務しているベテラン医師。見た目は小柄な初老男性。
〇徳川、柴田(とくがわ、しばた):真中病院に20年以上勤務している2人の悪徳ベテラン医師。徳川が禿頭で、柴田がたらこ唇と短髪オールバックが特徴。
〇黒松(くろまつ):「B・Jそっくり」に登場。吸血鬼医師と言われる内科医。
〇ハリ・アドラ:心霊医師。配役されているのは、『海のトリトン』に登場したポセイドンの息子「イボリロ」。
〇古和:「古和医院」に登場。
〇草井(くさい):山田野が勤める医大の助教授。配役されているのは、スカンク草井。
〇伊東:BJの高校時代の友人・太腹が経営する病院で勤務する優秀な美男医師
〇ゴ・ウィン:ベトナム出身のハワイに住む医者。
〇チン・キ博士:「音楽のある風景」に登場。
〇浅草 上乃(あさくさ うえの):「20年目の暗示」に登場。配役はヒゲダルマ。
〇山裏(やまうら):Q市中央病院外科医長。
〇関根(せきね):「雪の訪問者」に登場。
〇百鬼(ひゃっき):「灰とダイヤモンド」に登場。配役されているのは、『どろろ』の主人公、「百鬼丸」。
〇王仁川(わにがわ):辰巳がかつて勤めていた中立病院の医長。配役されているのは「バンパイヤ」に登場する「アリゲーター氏」。
〇板台(ばんだい):「はるかなる国から」に登場。A大病院の教授。配役されているキャラクターは、『海のトリトン』の敵役、ポセイドン。
〇戸隠(とがくし):「ちぢむ!!」に登場。BJのかつての恩師 配役されているキャラクターは、『どろろ』の百鬼丸の育ての親、寿海。
〇日本医師連盟会長:「報復」に登場

「ブラックジャックの登場人物」 | Wikipedia

「BJをめぐる女性たち」
〇如月 めぐみ:BJの大学の後輩
〇桑田 このみ:外科医
〇綿引 十枝子:「きたるべきチャンス」に登場。女医
〇新宿南外科の女医
〇清水 きよみ(しみず きよみ):「土砂降り」に登場。瀬戸内海の小島で診療所を営む女医。

「ブラックジャックの登場人物」 | Wikipedia

医師は男性であるべきか?

原作が届けたかったメッセージは、手塚治虫さんの意図した通り、正しく伝えないといけない。しかし手塚治虫さんが亡くなってしまった今、それはドラマの作り手が考えるしかない。

男性だから言えること、女性だから言えることも当然ある。身体の仕組みも違うし、社会から求められてきた役割も違う。令和の今でも女性だからさせてもらえないこともまだ多い。男性と女性が見る世界は違う。

では、キリコの語った内容は、男性医師だったから、伝えられたメッセージだったのだろうか?

手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)


キリコ以外の主要人物のセリフは、男性が言わないと響かないのだろうか?

手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

セリフはね。女性がしゃべってるような口調にするとして…

手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
手塚治虫 ブラック・ジャック展(2023年)東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

手塚治虫さんは、人間としてのメッセージを伝えてくれたはずだ。だから、時代が違う今でも時々、読み返したいと思うのだ。

ドラマ『ブラック・ジャック』について思うこと

今、手塚治虫先生が、『ブラック・ジャック』の連載を再開したら、もっと女性医師はたくさん登場するだろう。メインのキャラクターに女性医師も登場するはずだ。今から『ブラック・ジャック』を見る人の作品への違和感を少なくするには、主要なキャラが女性である必要もあるかもしれない。

だから、このタイミングでは、改変騒ぎに乗じたくはないと思う。

心配なのは、キリコが患者を苦しませたくないために、安楽死を選択する医者ということだ。その主張を、女性の慈愛で~、みたいなおかしな解釈が生れないようにしてほしい。

そして実際には、ドラマが作られる時、テレビ局の都合、芸能事務所の要望で、キャスティングが優先されるという話もよく噂される。だから、これからも、原作との違いにファンは敏感になり、時に怒っていいだろう。

でも、いい作品に仕上がったら、ちゃんと拍手を送りたいとも思う。主要キャラが女性に変わることで、もしかすると、作品の寿命が10年20年延びるかもしれない。孫世代の人たちと『ブラック・ジャック』の話をできるとすごく嬉しい。

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のーどみたかひろ
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。