深海 【短歌7首】
深度10メートル、酸素量はなく、潜望鏡に島影もない
紛うことない大海にさとされてひとり寂しいレッドアラート
気休めの止水区画で思い知る
船酔いに似た生きるメソッド
残響を拾い集めて横になる
青い珊瑚を抱きしめている
気まぐれに耳をすませば聞こえ来るザトウクジラの明日を呼ぶ声
羨望の視線の先で水底のマリンスノーは死んでしまった
海溝のアンモナイトよ激動のカンブリア紀の海は青いか
先日、手帳にインクの染みをつくってしまった。ブルーブラックの寂しげなそれは、私を見ているような気がしてならなかった。