あにの ライブの話
どうも。先週、昔好きだったアイドルについて色々思い出したり調べたりしながら色々書いていたら、青春時代のなにかが再燃しはじめ、通勤時間中にyoutubeで國府田マリ子の昔の曲を聞きまくっているあにです。昔好きだった物に、歳をとってから改めて触れてみると「あれ?」っと思うことがママありますが、良いものは年月を経ても良いですね。
さて。ライブの話です。
おとおとは昔からプレゼンが下手でした。
中学生の頃から事あるごとにあにに好きなものをプレゼン(というなの共同出資の募集)をかけてきたのですが……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おいーちゃん! ○○ってバンド、めっちゃかっこいいんだよ!」
「えー、そうなん?(疑)」
「そうなのそうなの! こんな感じで!」
ホゲー!
「おにいちゃんはちょっといいかな……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
毎度こんな感じ。なぜ自分で歌う。
あにはこのシステムのせいでhideに出会うのが10年遅れ、Dope HEADzを知らずに大人になってしまいました。
そんなある日、おとおとがまたあにの部屋にノックもせずに入ってきました。
「おいーちゃん ! お願いだからこれを聞いて……!」
で、持ってきたのが当時すでに解散して数年経っていたOBLIVION DUSTでした。
しぶしぶプレイヤーにCDを入れるあに。
なんやこれ……めっちゃかっこええ……!
あにの心をがっちり掴んだところで
「おにーさん、実はこのバンドが、再結成ライブをやるんです!」
「いくしかないね!」
おとおとめ。プレゼンの腕をあげやがって。
実家ぐらしでバイトもしていてそこそこ羽振りの良かった頃の兄弟。即断即決早速ぴあでチケットゲットです。
とはいえ、あに。
と、おとおとが心配するように、そこそこライブを見るという経験は積んではおりましたが、内訳はというと、國府田マリ子、エリック・クラプトン、橘家圓太郎、カルロス・サンタナ、三遊亭楽太郎、スタニスラフ・ブーニンなど、メジャーアティストのホールライブばかり。
大学生になってからはメタルを嗜むようになり、アングラ、ブラインド・ガーディアン、ラプソディーなどの、小さな箱のライブにも足繁く通ったり、メタルフェスのラウドパークに(友達がいないから)一人で参加したりもしていますが、ヘビィメタルのファンって、みんな礼儀正しいというか、お行儀がいいんですよね。
なんとなく日本のロックバンドのファンって不良っぽいと言うかヤンキーっぽいというイメージがあるので、体は大きくても気が小さいおとおとと二人での参加には、一抹も二抹も不安がありました。しかしメタラーの端くれとして舐められるわけにはいきません(謎マウント理論)
そこであに、当日は小橋健太のバーニングTシャツを着込み、完全臨戦体制です。大事な試合(小橋健太の試合であったり、自分の試合であったり)の時にのみ着ている勝負服。これを着たからには、あにはメタラーではなくプロレスラー。どんな相手が来ようと恐るるに足りません。
おとおとは「なぜ?」という顔をしていますが、気にもなりません。
ライブはとても素晴らしいものでした。
今はなき渋谷AXのそこそこ広いホールに、詰め込まれた何百人という人間が一気にステージ側におしよせます。
おとおととはホール入り口で別れ(恥ずかしいから)、あには集団のやや後方に位置どり演奏にあわせて飛んだり跳ね……
ゴツン
いたい。
なんでしょう。靴です。
やたら硬い靴をはいたお兄さんが、集団の上でもっちょんもっちょんしています。
あには以前梅澤春人先生のBØYで読んだことがあるので知っています。ダイブというやつです。正確にはクラウドサーフ。ステージやどこか高いところから密集した観客の上に飛び乗り転がる行為。もちろんその危険性から殆どのライブハウスで禁止されている行為ですし、今回のライブも公演前に禁止のアナウンスが流れていました。そもそもあちこちに
「ダイブ禁止!」
と張り紙がされています。
それなのに。ああ、それなのに。
これが日本のロックファンの民度の低さですよ。
しかし今日のあにはメタラーではなくプロレスラー。多少の不条理には動じない心と体を持っています。
なんといってもライブの楽しみ方は人それぞれ。中にはこういう楽しみ方をする人がいてもしょうがな……
ゴチン
いたい。
また靴です。
やたら硬い靴をはいたお兄さん。まだ兄の頭上付近をうろちょろしています。とっとと端っこに流されて降ろされてしまえばいいのに。そもそも足をそんなに伸ばすなと。ダイブするにしてももっとマナーというものをだね。
しかしコンビニおでんの餅巾着くらい寛容で丈夫な堪忍袋を持つあに。これくらいのことにはどうじません。それよりもアーティストのパフォーマンスにもっと集中を……
ガツン
……引きずり下ろす💢
コンビニのおでん鍋でくたくたになった餅巾着の干瓢くらい丈夫な堪忍袋の緒を持つあにをして、がまんの限界です。
ルールもマナーも守れないクソオーディエンスは人にあらず。人は自分の中の正義が成立した時、とても残酷になることができるのです。
さっきからあにの頭にぶつかり続けている足の裾を掴みます。このまま下に引きずり下ろして説教の一つもかまして……
ゴッ ゴッ ゴッ
今までの、偶然足がぶつかったのとは違う、明確にこちらに攻撃の意思を持って狙った足が、あにの顔を捉えます。
あには激怒した。あににはライブの作法がわからぬ。けれども邪悪に対しては、人一倍敏感であった。
プロレスラーの顔を狙ったキック。これはもう抗争の始まりでしょう。
自分に向かってくる蹴り足をキャッチするあに。すかさず足首に両腕を絡みつけます。
もちろん反対側の足があにを狙って何度も蹴りつけてきます。
しかし覚悟をきめたプロレスラーに、素人の蹴りなど効きはしません。
「ああああああああああああああ!」
曲は盛り上がり、ステージで上げられるケン・ロイドの叫び声
「うおおおおおおおおおおおお」
それに呼応して上がるオーディエンスの歓声
「いやあああああああああああ」
両腕に渾身の力を込めたあにの雄叫び
「ぎゃあああああああああああ」
それら全てにかき消される、一人だけテンションの違う硬い靴のお兄さんの叫び声。
今宵、ライブの盛り上がりは最高潮です。
あにの、傷害罪の時効は10年だよねの話でした。