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おとおとの あるプロレスラーの悲劇の話

時は遡ることちょうど20年前くらいだろうか。
兄弟はプロレスにそれはそれはハマっていた。
あには毎日大学に小橋建太Tシャツと秋山Tシャツを着回して通い、
おとおとは商魂たくましい武藤敬司のシャツやら短パンやらアクセサリーやらを身につけ専門学校に通っていた。
とても痛い兄弟だった僕らは自分たちの事をプロレスラーと名乗り、現在WWEのスター選手に仲間入りした当時新日本プロレスでデビューしたばかりの中邑真輔選手を勝手に『同期』と言っていた。(それは今でも思っている笑)

そんな兄弟は家で顔を合わせると昼間だろうが夜中だろうがプロレスのスパーリングが始まる。
これが楽しくてしょうがないのだがついつい熱くなってしまい、夜中に本気でやりすぎてうるさいと2階で寝ている母が山本小鉄のような顔で降りてきてめちゃくちゃ怒られる。それでも懲りずにプロレスをした。
だって僕達プロレスラーだもん。
同期(中邑選手)も頑張ってたしね。

そんなある日、僕は家で携帯をポチポチしていると兄が帰ってきていつものようにスパーリングが始まった。
 あにが僕を思い切りボディスラムで地面に叩きつける

ボキッ!
え.…あ.…折れたな。

だが背骨ではない。
だって痛くないもん。
折れたのは背骨の下に開きっぱにして置いていた携帯電話。
当時一番流行ってた2つ折りのSHARPのいわゆるSHシリーズ。
バイトして買ったけど高かったのよねー。
画面は綺麗だし、着メロは16和音だし。
カメラの画質も綺麗で、動画なんかも撮れちゃう。
ついつい気になるあの投げ技を兄に食らわす動画なんか撮っちゃったりして。
そんな買って2週間の最新携帯が僕の背中の下で2こになっているんだ。

ポケットを叩けばビスケットはふたつなのだろうが
ボディスラムで叩き落とせば最新携帯がふたつなんて聞いたことがない。

僕は泣いた。
あには腹を抱えて笑い転げていた。

電源も死んでたらデータは死ぬのかな。
そっとボタンを押すと
なんと灯りがつくではありませんか!!
これは首の皮一枚というか白と赤のコード1本救われた。
あにに直せないかと尋ねると
よっしゃ任せろと工具箱を持ってきてそこから30分。
なんと折れる前と全く見た目変わらない状態に。
そして電源も全く問題なくつく。

ありがとう。お兄ちゃん。
僕はお兄ちゃんのおとおとに生まれたことを心から誇りに思うよ。
まあボディスラムをしてきたのはお兄ちゃんだけどね。

あ…あれ?
あれ?
これ2つ折りに
できない。

お兄ちゃんが治してくれた携帯は
アロンアルファでガッチリ固定したのでもう二度と2つ折りはできない携帯になってしまいましたとさ。

以上。おとおとがまた泣き、そしてあにはまた笑いころげた話でした。

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