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あにの 飛行機の話”臨時便”

 どうも。珍しく2週続けてあにです。
 前回の話に久しぶりに沢山のスキをいただけて、嬉しくって2週続けてのあにです。モチベーション大事。

 前回もご案内のとおり、飛行機が大好きなあに。今でも飛行機に乗る時は、窓際キープで地図を広げて、いま自分たちがどこにいるのか、あそこに見える建物はどこか、あの山はなにか……なんてやっているうちに目的地に到着しています。
 運悪く海側の席であったとしても

 海……広い………

 雲………おおきい………

 それに比べて我々人類はなんとちっぽけ………

 なんてやっているうちに目的地。ほぼワープです。

 
 そんなあにですが、幼少期は乗り物に弱く、すぐ酔ってしまい、刑事ドラマの冒頭に逮捕されるチンピラくらい簡単に、足に五寸釘刺された古高俊太郎くらい簡単に、ゲロってしまう子でした。
 十中八九父の岡山県民特有の運転の荒さが原因だったと思うのですが、バスや船はもちろん、体調如何では電車や飛行機でも酔ってしまうことがありました。そう、飛行機でも……。

 それはたしか岡山から東京へ帰る国内線。放任主義というかそういう時代だったというか、度々二人だけで新幹線や飛行機に乗って東京と岡山を行ったり来たりしていた我々兄弟。二人だけとは言っても祖父母が岡山空港で我々兄弟をリリースし、羽田空港で両親がキャッチ。二人だけなのは機内だけではありましたが、小学生の兄弟にはそこそこの冒険。その日もそんな感じの二人旅でした。
 飛行時間が短く通常は軽食やおやつ程度しか出ない国内線。しかし今回は祖父母がいる岡山からの帰りの飛行機。かわいい孫が帰ってしまうその前に、空港ラウンジなんて小洒落たところには入れませんが、売店や喫茶店で、両親がいないのをいいことに、あれが食べたいこれが食べたいと最後のわがままを散々聞いてもらった後の飛行機。
 おまけに暇つぶしにと買ってもらった、当月号のコミックボンボン(あにはボンボン派でした)を機内で熟読。
 するとどうでしょう。

 きもち……

 悪い……

 てきめん飛行機酔いです。
 しかし生まれてこの方ずっと乗り物に酔ってきたあに少年。いわば乗り物酔いのエキスパート。
 これはもう、ダメだな……というタイミングを完璧に見切り、前座席のホルダーにしまわれたエチケット袋をスマートに取り出し、嫌な顔をするおとおとは気にもとめず、サラっとゲロってその場を収めます。
 ひとゲロ履いてしまえばもうスッキリ。飛行機は無事に羽田空港に着陸いたします。
 さあそこで困ったのが、このエチケット袋(使用済)です。
 常の車やバスでの粗相の後なら父か母に任せてしまうところですが、今日は兄弟ふたりだけの飛行機旅。

 元あった前座席のホルダーに戻す?
 いやいや、ホルダーの圧力でぶち撒かれてしまうこと請け合いです。

 椅子の上に置いておく?
 これも心もとない。倒れてしまったら席を汚してしまうことに。流石にそれは忍びない。

 やむを得ない……持って降りるか。

 しかしそのまま持って降りるのでは、周りの人から
「お、あいつゲロったな」
というのがバレてしまいますが、そこは賢いあに少年。空港で祖父母に持たされた紙袋に入ったお土産をリュックに入れ、空いた紙袋にエチケット袋(使用済 )を入れることで事なきを得ます。
 荷物をまとめたリュックを背負い、左手はおとおとの手をつなぎ、右手は紙袋inエチケット袋(使用済)を持って降機の列に並びます。
 んで、出口が近づくと、スチュワーデスさんが並んで
「ありがとうございましたー」
とか
「またのご利用をー」
とか言ってるじゃないですか。
 賢いあに少年はそこで気が付きました。

 そうだ、スチュワーデスさんに渡せばいいんだ。

 そういえば飛行機に乗る前に、じいちゃんが「なにか困ったことがあったらスチュワーデスさんにいうんじゃぞ」とか言っていました。これでゲロ袋問題も解決。スッキリした気持ちで帰ることができます。
 列は徐々に進んでいき、スチュワーデスさんたちが近づいてきます。一番手前のスチュワーデスさんが、子供だけで搭乗していた我々に気が付き、声をかけてくれます。

「ありがとうございました。二人だけで大丈夫だった?」

 今でこそコミュ障こじらせて外では他人と会話をしたがらない、居酒屋で店員さん呼ぶのすら苦手なあにですが、小学生のころはまだ幼い社交性を身に着けていたあに少年。おとおとしかいないこういうシチュエーションではきちんとやり取りをしないといけません。

「はい!大丈夫です!ありがとうございました!」

 小学生らしい元気な受け答え。完璧です。100点満点です。さて、それではこのゲロ袋をなんと言って渡すべきか。人に物を渡す時は……迷惑かけるからお礼も言わなきゃいけない……となると

「これ、どうぞ! ありがとうございました!」

 お礼を言って老舗お菓子屋さんの紙袋をスチュワーデスさんに渡すあに。スチュワーデスさんもニコニコ笑顔です。

「えー! いいの!? ありがとー!」

 なぜか喜ぶスチュワーデスさんに、掛ける言葉を誤ったと気づくあに少年。もちろん手遅れです。
 ニコニコ笑顔で紙袋を覗き込むスチュワーデスさん。
 中には見慣れているであろう航空会社のロゴ入りエチケット袋。もちろん使用感マシマシ。
 ああ、あんなに眩しかったスチュワーデスさんの笑顔が、こんなにも一瞬で消えてしまうものなのか……
 しかし向こうもプロ。一瞬で消えた笑顔が、また一瞬で戻ってきます。

「あー、もどしちゃったのね。大丈夫だった?」

 そしてあに少年の体調を気遣ってくれるスチュワーデスさん。サービス業の鑑ここにありです。
 30年たった今、改めてあのスチュワーデスさんに伝えたい。
 ありがとう。そしてごめんなさい。
 そんなこんなで無事に東京に帰り着くきょうだいなのでした。

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