「選択と集中」はいかに正義であるか
「たとえば、便利な技術が生まれたとき、これはどんな産業にも応用できるからと、みんながその罠にハマるんだ」
起業は苦しく、経営は厳しい。
これまでに経験してきたどのフェーズでも変わらない。2020年も例外なく、絶え間ないプレッシャーに抗い続ける年だった。
2013年にメンズスキンケアブランドBULK HOMMEを立ち上げたときから成し遂げたい想いは変わらない。世界No.1シェアのメンズスキンケアブランドをつくる。これが至上命題だが、誘惑はたくさんある。
「別のブランドを展開しないのか?」
「女性用の化粧品ブランドはつくらないのか?」
たとえば、こうした悪気のない質問だ。
ぼくはいま、15社ほどのD2Cスタートアップに出資している。一番の目的は、BULK HOMMEとは別の領域を追体験し、デジタルマーケティングの本質をよりはっきりと掴むためだ。ただし、不遜な言い方になるけど、ぼくがいままでの経験に基づいてアドバイスすることである程度のバリューを発揮し、投資先の成長に貢献できる自信はあった。
つまり、ひいては株式会社バルクオムの優秀なチームをもってして、再現性の高いナレッジを活用することでいくつもブランド展開できるポテンシャルはあると思っている。あえて言ってしまうと、ARR10億円のブランドを同時に複数並行して生み出すのはそんなに難しくないとも感じる。
一方で、ぼくらがメンズスキンケアというヴァーティカルに固執しているのはなぜか? 率直に、最初は意地だけだった。ワンプロダクトで日本を変えたメルカリのようになりたい、ほとんど1つのSKUで世界中を熱狂させたレッドブルを超えたい、そんな個人的なパッションだけがすべてだった。
つい最近、熱意ある若い起業家と、尊敬してやまない先輩起業家を引き合わせた。ふたりとも才気に満ち溢れていて、テクノロジーの力を100%信じて人生を懸け、事業としてはtoBのソリューションを展開している。そんな共通点があった。
若手が聞いた。企業のある部分を変革しうる強力なプロダクトを開発しているが、これを幅広くセールスしていくのか、まずはある産業に特化するのがいいのか悩んでいる。
先輩はその相談に切り返す。それが冒頭のセリフだ。
「特化する以外にない。たとえば、便利な技術が生まれたとき、これはどんな産業にも応用できるからと、みんながその罠にハマるんだ。自分も同じ罠にかかった。普遍的な技術自体に水平展開できるポテンシャルがあることは間違いない。でも、ある業界については誰よりも詳しい。もしかしたらクライアント以上に。それくらい深く入り込んでパートナーシップを築かないと、真に問題解決することなんかできない。同じプログラムを提供してどの会社の課題も同様に解決できるなんて、そんなに甘く見てはいけないと思う」
単刀直入に言ってしびれた。
ぼくは、この会話自体はまったく畑違いなこともあって、話を抽象化することで自分の事業に置き換えた。
バルクオムの根本的な強みがあるとしたら、それはなにか?
デジタルに特化しているだとか、マーケティングの差であるとか、そういった戦略の一部分を示すことは簡単だ。しかし、本当の意味で大事なことは、まさに
ある業界については誰よりも詳しい
この言葉と同義であることに気づく。
ぼくは、世界中のすべての会社のなかでもっとも「どうやったら世界中の男性に支持されるスキンケアブランドをつくれるか?」というテーマを深く、数多く、時間をかけて考え抜いてきた自負がある。アイデアに対してバイアスでふたをせず、実際にチャレンジしてきた数も圧倒的にNo.1だと確信している。その結果、まだ日本が中心ではあるものの、この数年はやっている自分でさえ奇跡的だと感じるほどシェアを拡大してこられた。
最初は本当にしんどかった。あまりの売れなさに、やめてしまいたいと頭をよぎることも何度もあった。それも数年にわたって。まさに鳴かず飛ばずのスタートだった。
ただ、先輩の言葉もあり、いまとなっては「選択と集中」の意味がよくわかる。ヴァーティカルのまま攻めることも怖くない。ぼくにとって、ほかの事業をやることは、BULK HOMME事業の敗北であると思うくらい、ビジョンが冴えわたってきた。
もちろんいずれは世界ナンバーワンに。
そういうわけで、今年も一心不乱にがんばります。
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