さく、メイドになるってよ 12話
さくら:ただいま帰りました〜
王宮に帰ってきた私は、○○様達と一緒にお部屋に戻ると、
「「「○○(様)!!!」」」
さくら:うわっ! ビックリした....
くじ引きに負けて留守番していた美月さん達に迎えられた。
○○:みんな、どうしたの?
美月:どうしたのじゃないよ! 襲われたって聞いて心配してたんだよ!?
○○:あー、それね。大丈夫だったよ。美波と祐希、蓮加のおかけでね
○○様がそう言うと、三人ともお手本のようなドヤ顔になる。
美月:むぅ....
さくら:どうしたんですか? 美月さん
美月:なんか、あの三人の顔腹立つ
さくら:アハハハハ....笑
遥香:あれ? ねぇ、さくちゃん。まゆたんと璃果ちゃんは?
まゆたん達を探してキョロキョロしながら尋ねてきたかっきー。
さくら:あの二人なら、浩介様達と一緒に今回のことを王様に報告しに行ったよ
遥香:あ〜、なるほどね。帰ってきて早々、まゆたんと璃果ちゃんも大変だね...笑
その頃、遥香が心配している真佑と璃果は、王宮の中で最も神聖で高貴な場所と言われている〝玉座の間〟にいた。
左右の壁際には、王国騎士団の団員がそれぞれ十五人ほど立っていて、その中にはさくらを案内した騎士団長ーーゴランの姿もあった。
そんな中、緊張の面持ちの璃果と、璃果とは対照的にのほほんとしている真佑。その隣には、浩介とメイドの七瀬、聖来が立っている。
彼らの目の前には、玉座に座っている権威と威厳が溢れ出ている男が。
この男こそがノギー王国の現国王であり、○○や浩介の父親ーー筒井王聖(御歳64歳)
浩介:以上が、今回、セイデン王国で起こった出来事の全てです
話す内容を全て話した浩介は、一礼と共に報告を終える。
王聖:うむ。よくやったな、浩介
浩介:いえ、今回の件は○○のおかけです。私は何もしていません
王聖:そうかそうか。ならば、○○にも褒美を取らせないとな
口元を緩ませながら言う現国王の王聖。
普段は威厳たっぷりの素晴らしい王様なのだが、子供ーー特に、○○とその妹の二人に対して異常なほどの溺愛っぷりである。親バカもいいところなのだ。
それで、王聖への報告は終わったと思った真佑はパァと明るい顔になる。
このまま戻れるはず、と思った真佑だったが、
「お待ちください、父上っ!」
一人の青年の声によってそれは叶わなかった。
王聖:どうした? 宗介
王聖は声の主の名前を呼び、その場にいる全員が一斉に視線を向ける。
報告の終わりに待ったをかけたのは、筒井家の長男であり、第一王子の筒井宗介(26歳)。
宗介:どうしたではありません! 今日こそは、あの事について考え直して頂きたい!
王聖:あの事とはなんだ?
宗介:とぼけないで頂きたい! ○○のもとにいる〝メイディ・ナイツ〟なる組織のことです!
その言葉を聞いた瞬間、浩介や七瀬が「あぁ〜」といった表情になる。
真佑と璃果は遠い目に。
宗介:あのような組織が野放しである状態なのは、危険過ぎます!
浩介:お言葉ですが、兄上。そこまで危険視する必要は無いと思いますが
宗介:直接その目で見たお前なら分かっているだろ? 奴らの危険性を。一万の大軍とアークリッチを倒す程の力を持った組織が野放しになっているのだぞ!?
浩介:野放しではありませんよ。彼女達は全員、○○の下にいます
宗介:それが問題だと言うのだ! あの出来損ないに何ができるというのだ!?
真佑:ちょっと! ○○様を侮辱しないで!!
璃果:ま、まゆたん、ストップ!
宗介の発言を聞いて、怒った真佑の腕を掴んで制する璃果。
宗介:メイドの分際で....口を慎めっ!!!
語気を強めて、宗介は真佑を怒鳴りつける。
宗介:父上。あの出来損ないの○○ではなく、我々の管轄下にすべきです!
真佑:アンタねぇ!
七瀬:どうどう! 落ち着きぃや、真佑ちゃん
宗介に掴みかかりそうになった真佑を七瀬が止める。
真佑:七瀬さん.....
七瀬:ここは、ななに任せとき
真佑にウインクをすると、宗介に視線を向ける七瀬。
七瀬:宗介。アンタ、大層なこと言っとるけど、自分の手下にしたいだけやろ? 見え見えやで
宗介:な、なんだと!?
七瀬:おっ、もしかして図星なんか...笑
宗介:貴様っ....!!
七瀬の煽りに、宗介は拳を振り上げて声を荒らげる。
七瀬:なんや、殴るんか?
「なぁちゃん、そこまでにしなよ」
凛として落ち着いた声が2人を制する。
七瀬:もう〜、そんな怖い顔せんといてや、まいやん。ちょっと、揶揄ってるだけやん
ケロッとした顔で答える七瀬。
しかし、まいやんと呼ばれたメイドーー白石麻衣は、真面目な顔のまま口を開く。
白石:メイドが第一王子を揶揄うのなんて、有り得ない。それに、○○様が出来損ないと言われるのは、仕方の無いことでしょ? それが嫌なのなら、まずは振る舞いから変えなさい
七瀬:相変わらず、まいやんは○○のこと嫌いやな〜
白石:もちろん、嫌いよ
遠慮なくズバッと言う白石に、七瀬は思わず吹き出してしまう。
王聖:やめないか、2人とも
白石:はっ、申し訳ございません
七瀬:は〜い
王聖に制されてお互いに言い合うのをやめる七瀬と白石。
宗介:父上、メイディ・ナイツという組織の件。何卒、この私にーー
「それは、お断りさせてもらうよ」
宗介の言葉をわざと遮るように一つの声が玉座の間に木霊する。
全員が声のした方向に目を向けると、どこから侵入したのか? 黒い外套を纏い、フードを被った一人の人間がいた。
宗介:誰だ、貴様! どうやってここに入ってきた!?
「うるさいなぁ。これが第一王子とか、この国の程度が知れるね」
宗介:な、なんだと!?
やれやれとわざとらしく、呆れたように言う相手に、またもや声を荒らげる宗介。
白石:あなた、いい加減正体を明かしなさい!
「いいよ」
そう言って、フードを脱いで顔を見せる。
聖来:あっ、理々杏さんや〜!
そう、突如、玉座の間に現れた不審者は理々杏だった。
事の張本人の一人が自分からやってきた。それに気づいた真佑と璃果が再び遠い目になって天を仰ぐ。
理々杏:ボクは、まあ、知ってる人もいると思うけど、メイディ・ナイツ序列六位、伊藤理々杏
理々杏の自己紹介で周りがザワザワと騒がしくなる。
宗介:事の張本人が何の用だ!?
理々杏:ボクが来たのは、忠告をするためだよ
その理々杏の言葉で、静けさを取り戻す玉座の間。
理々杏:ボク達を取り込もうとしても無駄。ボク達は、君達の命令には従わない
"貴様! メイドの分際で生意気だぞ!"
宗介の後ろに控えていた人達のうちの一人である初老の男が我慢ならず、声を上げる。長年、王族に仕えている家老の一人である。
理々杏:君達は、三つ勘違いしてるみたいだね
"勘違いだと?"
理々杏:一つ、ボク達はメイドじゃない。二つ、ボク達が仕えているのは王族じゃなく、あくまで○○一人だけということ
凛とした声でハッキリと言い切る理々杏。
後ろの方では、「あ〜、言っちゃったよ。あの人」と声を漏らすメイドが二人。
理々杏:そして、三つ目。ボク達を無理やり従わせたいみたいだけど、君達じゃ、ボク達には勝てない
その言葉と同時に、数人の騎士が呻き声を上げてその場に倒れ込んでいく。
"貴様、何をした!?"
一人の騎士が倒れた仲間を介抱しながら怒鳴りつける。
理々杏:ボクを殺す隙を伺ってたでしょ? バレバレだよ
涼しい顔で言う理々杏。
理々杏:それと今後、ボク達や○○に手を出そうとしたら......
「ボク達が」
「君達を」
「殺すから」
「覚悟してね?」
と、様々な方向から聞こえる理々杏の声。
それもそのはず、なんと理々杏が玉座の間のあちらこちらにいるから。
"な、なんだ....これは"
騎士の1人が当然の疑問を口にする。
理々杏:ただのボクの分身体だよ
かつて、暗殺者時代に身につけた技能。その能力は、実体を持った自分の分身体を好きなだけ創り出すことができる。
その技能で生み出された分身体が短剣を逆手に持ち、騎士達の首筋に刃を当てている。
理々杏:これは脅しじゃない。警告だからね
そう言い残すと、背を向けて玉座の間から出ていく理々杏。
その場にいるのがいたたまれなくなった真佑と璃果も、その後を追って玉座の間を後にした。
宗介:クソっ....!
自室に戻った宗介は、悪態をつきながら近くにあった花瓶を床に投げつける。
白石:宗介様、落ち着いてください
宗介:あァ? あっ、いや、すまない
白石に止められて冷静さを取り戻す宗介。
白石:これからどうするのですか?
宗介:決まってるだろ。まずは、王位継承だ
一方その頃、さくら達は......
蓮加:頑張れー! 与田ぁ!!!
遥香:美月さん! 応援してま〜す!
祐希:美月! 今日こそ祐希が勝つけん!
美月:い〜や! 勝つのは私だね!
なんか戦いが始まろうとしていた。
……To be continued
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