さく、メイドになるってよ 9話
時は少し過ぎて、戦いが終わった後....
とある騎士Aの証言
「あの日、防衛線が突破されて、敵が流れ込んできた時、あぁ....終わったなって思ったんだよ。でもその時、突然女が二人、目の前に現れたんだよ。メイド服を着た美女が。それからは、一瞬だったよ」
とある騎士Bの感動
「剣を持ってた方のメイドが、敵を次々に斬っていったんだよ。そりゃあ、もう一瞬で。鎧を着てる奴らも関係なく、まるで、何も無いかのように。ありゃあ、正しく剣の極地って感じだな。思わず見惚れちまったよ」
とある騎士Cの独白
「ちっちゃいメイドの方は、なんというか、野蛮だったな。武器とかは何も使わないで、拳一つで敵と戦ってたよ。殴って蹴って、それだけであの数の敵を倒してたよ」
とある冒険者のやけくそ
「あの光景を見た時、俺は冒険者を辞めようかと思ったね。だって考えてみろよ。一応、これでも俺はBランクで、そこそこ名の知れた冒険者なんだぜ? なのに、そんな俺が敵わなかった相手をメイドが倒してくんだぞ? やってらんねぇよ! くそがっ!!!」
とあるギルド長の驚愕
「私は、この目を疑ったよ。何故かって? あの伝説の女がメイドなんかやってたんだぞ? しかも、腕が衰えてるどころか、さらに磨きがかかってたんだ。もう一人の方も別次元だった」
そして、時間は元に戻る
さくら:あわわわわわ.....
七瀬:真佑ちゃん、この子ショートしたで
真佑:さくちゃんはこれが初めてなので、仕方ないですよ
七瀬:真佑ちゃんは、初めての時チビってたもんね
真佑:ちょっと、七瀬さん! やめてくださいよ!
キャッキャしているまゆたんと七瀬さん。
璃果:はい、さくちゃん。ハーブティーでも飲んで落ち着いて
さくら:ありがとう、璃果ちゃん
璃果ちゃんからもらったカップからいい匂いがする。
一口飲んで、落ち着きを取り戻してもう一回まだの外を見る。
そこには、やっぱり信じられない光景が広がっていた。
大勢の敵を相手に、たったの二人で戦っている梅澤さんと与田さん。
それも一方的な戦いになってる。
「たぁあ!」とか「やぁあ!」とか可愛いく元気な声とは裏腹に物凄い速さとパワーで敵を次々とパンチやキックで倒していく与田さん。
攻撃が当たった敵さんは、もれなく全員吹き飛ばされて地面や壁にめり込んでいる。
与田さんから少し離れた所では、近くにいる敵を流れるように次々と剣で斬っていく梅澤さん。
その姿は、まるでダンスを踊っているかのように綺麗だった。
思わず、見惚れてしまうほど.....
そんな私を余所に、敵さんがまるで紙のようにスパスパと斬れていく。
縦に斬られてる人もいれば、横や斜めに斬られてる人も。
それに伴って頭やら腕やら足やらがヒュゥと宙を舞って、断面からは血飛沫が......うっ、グロい
あっ....ヤバい......吐き気が......
真佑:あぁああ! さくちゃんが吐きそうになってる! 璃果ちゃんお水お水! あと、バケツも!!!
まゆたんが声を上げるとササッとお水とバケツを持って来た璃果ちゃん。
璃果ちゃんの優しい介抱のおかげで何とか落ち着きを取り戻す。
さくら:うっ....ありがとう、璃果ちゃん
璃果:大丈夫?
さくら:うん、何とかね
真佑:さくちゃんにあれは早かったかな〜
さくら:まゆたん! 梅澤さん達は何者!?
真佑:えぇ...知りたいの? どうしようかな〜
さくら:そういうのいいから! 早く!! 説明プリーズ!!
真佑:アイマム!!
七瀬:おぉ、さくらちゃん怖っ...笑
ビクビクしながら口を開き始めるまゆたん。
真佑:んとねぇ....梅さんは、メイディ・ナイツの序列一位で元冒険者なの
めいでぃないつ....?
真佑:あっ、冒険者っていうのはね、魔物と戦いながらお金を稼ぐ人達だよ。しかも、梅さんは、世界に10人しかいないSランクだったんだよ
さくら:そこじゃない!! いや、それも十分凄いけど! 私が知りたいのはそこじゃないよっ!!!
真佑:???
さくら:私が知りたいのは〝めいでぃないつ〟とか言うものだよ! 何その「ご存知でしょ?」みたいにサラッと言う感じ! 一ミリも知らないよ! ていうか、最初に来た時から思ってたけど、さも知ってるかのように話を進めるのやめてくれない!?
璃果:さくちゃん、落ち着いて。キャラが崩壊してるよ
さくら:あっ、ごめん、璃果ちゃん
璃果ちゃんから渡されたハーブティーを一口。
あ〜、落ち着く....
さくら:いや! じゃなくて!
璃果:大丈夫、さくちゃん。しっかり説明するから
さくら:えっ、あ、分かった
璃果:まず、梅澤さんと与田さんのことだけど
さくら:うん
璃果:さっき、まゆたんが言ったように梅澤さんは元冒険者。しかも、トップレベルの実力者
真佑:それに、その前は名の知れた傭兵だったんだって
さくら:えぇえええええ!?
それなら、梅澤さんがあそこまで強い理由が分かるよ
さくら:じゃあ、与田さんは?
真佑:与田さんは、えっと....なんだっけ?
璃果:大和っていう鎖国国家出身の人だよ。たしか、武功? だったかな? その使い手なんだって
やまと? ぶこう? どっちも聞いたことないなぁ
真佑:まあ、とにかく! 2人とも凄く強いってことだよ!
ざっくりとまとめるまゆたん。
さくら:あっ、もしかして.....美月さん達も冒険者とか?
真佑:それはまた後でね?
なんかはぐらかされた
璃果:次にメイディ・ナイツのことだけど....
さくら:うん....
璃果:実は私達にもよく分かんないんだよね
......えっ?
さくら:分かんないって、どういうこと?
真佑:なんか、気づいてたらできてた? みたいな感じなんだよね...笑
な、何それ......
一方その頃、王宮前では.....
美波:ふぅ....だいぶ片付いたね
剣についた血を拭き取りながら言う美波。
美波の周りには、すでに事切れている敵で溢れていた。
「梅ぇ〜〜!!」
その死体の山をピョコピョコと綺麗に避けながら美波のもとに駆け寄る祐希。
美波:遅かったじゃん、与田。そんなんじゃ、序列一位の座はまだまだだね
祐希:ムキィー! そんなこと言って......スキありっ!
「とぉっ!」という掛け声と共に美波に向かって右ストレートを放つ祐希。
美波:無いから。そんな事くらい想定済み
顔色一つ変えずに、涼しい顔で祐希のパンチを剣で受け止めた美波。
美波:奇襲をするなら、もっと頭使ったら? そんなだから、山下や久保に策を使ってハメ倒されるのよ
祐希:ムカつくっちゃ!
「おいおい、なんだよ。何奴も此奴もやられちまってんじゃねぇかよ。情けねぇ奴らだな」
「仕方ないでしょう。寄せ集めの軍隊なのですから」
ワチャワチャしていた美波と祐希の前に現れた、二人の男。
1人は、筋肉ムキムキの巨体にニタニタした顔。いかにも、戦闘狂って感じだった。
もう1人は、杖を持ち、スーツのような姿にメガネをかけた男。こちらはいかにも、インテリって感じ。
美波:あなた達、誰?
「貴女方の敵、と言ったところでしょうか」
美波:そう。なら、斬る
……To be continued
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