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ハイスペックな兄、転生したら妹の子供だった件 6話


幕張メッセでの握手会から数日後

俺は今、目の前の光景を見て目を疑ってる。

何故かって?

それは......


「真夏さん。ここのデザインってこれでいいですか?」

真夏:あー、そこはもうちょっと抑え気味の方がいいかな

「わかりました!」

○○:は?

めちゃくちゃ見覚えのあるやつがいたから。





いつも通り幼稚園に来て、そのまま真夏さんのところに行くと、真夏さんが見たことある人と真剣に話をしていた。

○○:ま、真夏さん

真夏:あっ、○ーーじゃなくて、れん君。どうしたの?

○○:いや、今なにしてんですか?

真夏:新しい幼稚園の制服のデザインを考えてるの

「ほら」と言いながら、手書きのデザイン画を見せてくる。

そこには、幼稚園の制服という根幹は保ちつつ、お洒落さを実現させた手書きの制服デザインが載っていた。

○○:それはわかりましたよ。俺が言いたいのは何でこいつがここにいるのか? ってことですよ

真夏:だって、今回依頼したデザイナーさんだもん。ね、桃ちゃん?

桃子:はいっ!


大園桃子。

高二で乃木高にやってきた鹿児島から転校生。最初は人見知りを爆発させていたが、美波を中心に仲良くなっていった。


真夏:桃ちゃんね、今じゃ社長さんなんだよ

あとから聞いた話だと、桃子は高校卒業後、服飾系の専門学校に進学。そして、周りのサポートを受けながら自分のファッションブランドを設立したらしい。

○○:えっ、桃子が社長? こいつ経営とか大丈夫なんですか?

真夏:本人もそこが心配だったみたいだから、時々ななみんにアドバイスもらってるみたい

奈々未か。あいつを頼んのは確実だな。

桃子:あの〜、真夏さん。さっきから話してるその子、誰ですか?

桃子の視線が俺へと向けられる。

真夏:ここの園児だよ

桃子:そうなんですか! あれ? どっかで見たことあるような?

満面の笑みを浮かべる桃子。次の瞬間には、頬を両手で挟み込みこまれていた。

○○:にゃにしゅりゅんだよ!

桃子:頬っぺ、お餅みたいで柔らか〜い

○○:おいっ、はにゃしぇ!

桃子:えぇ〜、もうちょっとだけ〜

俺の頬をムニムニしながら、笑顔になる桃子。

桃子:ぼく、お名前は?

○○:まーーいや、蓮

俺が答えると、桃子は何かを思い出した表情を浮かべる。

桃子:れん? あっ、もしかしてれんたんの子?

答えを求めるように真夏さんへ視線を向けると、真夏さんは「コクッ」と首を縦に振った。

桃子:あ〜、やっぱり〜!

俺の頬から手を離したと思ったら、今度は抱きしめられた。

桃子:ん〜! れんたんに似て可愛いね!

○○:おい、こらっ! やめろって!

真夏:ふふっ...笑

真夏さん、笑ってないで助けてくれよ.....

「社長っ、そろそろお時間です」

部屋のドアが開いたかと思うと、カジュアルな服装の女性が桃子に声をかける。

桃子:えっ、もうそんな時間? まだれん君と遊びたいのに〜

「ダメですよ。再来週のPOP-UPの打ち合わせがあるんですから!」

桃子:ぶぅ....は〜い

部下からの説得に、桃子は不満そうに返事を返す。

桃子:ということなので、桃子は帰りますね。最終的なデザインができたらメールで送ります!

真夏:うん。ありがとね!

桃子:はい! あっ、れん君またね〜!

○○:バイバ〜イ

真夏:それじゃあ、真夏さん! 今度の同窓会でまた会いましょう〜!

そんな別れの一言を残し、桃子は手を振りながら部屋を出て行った。

○○:あー、なんかすげぇ疲れた......

真夏:そういえば、桃ちゃんに教えなくてよかったの?

○○:あっ、やべっ....すっかり忘れてた

突然の出来事だったから、その事はすっかり忘れてた。

真夏:まあ、次会った時にでも教えてあげなよ

○○:そうですね






そんなこんなで幼稚園での一日が終わり、自宅へ。

蓮加:ねぇ、れん。今日幼稚園に桃子来たんでしょ?

○○:うん。そうだよ

魁人:えっ、桃子って大園さんのこと?

蓮加:そうそう。夕方あたりに連絡きたの

魁人:大園さんって、たしか服の会社の社長さんだったよね? 幼稚園なんかに何の用なんだろ?

蓮加:あー、なんか幼稚園の新しい制服のデザインを頼まれたんだって

魁人:へぇ、すごいな。人気もすごいみたいだし、さすが「最高の世代」だな

蓮加:もう、魁人くんも同じでしょ?

魁人:いやいや、俺はみんなと違って普通のサラリーマンだから...笑

蓮加:そんなこと言って...笑 あっ、そういえば、今年は同窓会行くの?

魁人:そうだな〜。れんも大きくなったし、久しぶりに行こっかな

蓮加:いいな〜。みんな有名人ばっかじゃん!

魁人:ふふっ、たしかにな...笑

そう言えば、桃子も真夏さんに言ってたな。「同窓会で会いましょう」って。

○○:ねぇ、同窓会ってなに?

魁人:パパの高校の時の友達が集まるだよ

蓮加:でも珍しいよね、毎年開催なんて。しかも、先輩とか後輩も来るんでしょ?

同窓会って何年かに一度とかじゃないのかよ

しかも、学年関係ないとか

あそこが絡むとか、カオスじゃねぇかよ

魁人:うん。あの頃は学年関係なく仲良かったからね。あっ、そうだ。蓮加も一緒に行かないか?

蓮加:えっ、私も? 無理だよ。れんとあやめんがいるし

魁人:あやめちゃんは中学生だし、れんも大きくなったから大丈夫だよ

蓮加:でも、わたし関係ないよ?

魁人:○○の妹が関係ないわけないだろ。むしろ、みんな大歓迎だと思うよ

○○:おーー僕も行きたい!

魁人:おっ、珍しいな。れんがそういうこと言うの

話したい人もいるからな

行けるなら行きたい

魁人:あやめちゃんはどうする?

あやめ:私はどっちでもいい......

蓮加:じゃあ、みんなで行こうよ!

魁人:よしっ。それじゃあ、後で連絡しとくよ

○○:その同窓会って、いつやるの?

魁人:えぇ〜と、今年は来月の第二土曜日だったはず

まだ、それなりに時間あるんだな

魁人:そういえば、蓮加は実家に帰んなくていいのか?

そう言われた蓮加の顔色が少し暗くなったのを俺は見逃さなかった。

蓮加:同窓会に間に合うように帰って来るよ

魁人:そっか。わかった




晩飯を食い終わった俺は、自分の部屋へと向かう。

○○:あー腹いっぱーーって、お前何してんの?

さくら:あっ、○○! 見て見て!

そう言ってさくらが見せてきたのは2枚の写真。

それに写っていたのは、キメ顔をしている美月と美波。

他にも飛鳥さんやみなみさんの写真まであった。

○○:おい、それって.....

さくら:そう! 美月ちゃん達の生写真だよ!

そう、さくらが持っているのはアイドルの生写真。

○○:お前、そんなの何処で手に入れたんだよ?

さくら:○○くんよ。死神を舐めちゃいけないよ?

顔の前で、チッチッチッと人差し指を左右に振る。

俺はそんなさくらの言動で何となく察した。

○○:お前...マジか.....

さくら:ぐへへへ.....可愛いな〜

ダメだ...あの握手会以来、完全にオタクになってやがる

○○:朝からいないと思ってたら、そんなことしてたのか

さくら:いいでしょ〜!

○○:そんな事より、早く片付けろよ

さくら:え〜、今帰ってきたばっかなのに!

○○:あやめとか蓮加に見られたらマズイだろ

さくら:.....はーい

さくらのオタクっぷりに多少引きながら一日が終わった。






翌日の幼稚園

○○:真夏さんって、高校の同窓会行ったことありますか?

真夏:うん。毎年行ってるよ。てか、急にどうしたの?

○○:実はーー

「あら、蓮くん今日も来てるの?」

真夏さんと話していると50過ぎの優しそうなおばさんが入ってきた。

真夏:あっ、園長先生! すみません!

園長:いいのよいいのよ。それよりも蓮くんは真夏先生が大好きなんだね?

○○:はい! 真夏先生大好きです!

今や日常となっている職員室での真夏さんとの会話。

最初の頃は、他の先生たちに注意された。

だけど、今になっては俺が真夏先生の事が大好きだから、という理由で容認されている。

しかも、園長先生公認にまでなっている。

それにしても、

真夏:....///

真夏さんよ、なぜ顔がそんなに赤いんだ

園長:うん。園児に好かれる、さすが真夏先生だよ!私の目に狂いはなかった!

そう言いながら、園長先生は職員室を出て行った。

○○:真夏さん、大丈夫ですか?

真夏:あっ、うん。大丈夫だよ! それよりも同窓会の事だっけ?

○○:はい。どういうのかな〜って思って

真夏:そんな特別なことはしないよ。みんなで集まって楽しもうってだけ。まあでも、みんな色々と忙しいから全員は集まんないんだけどね

○○:なるほど.....

真夏:急にそんなこと聞いて、どうしたの?

○○:あっ、いや、今年の同窓会は俺も行くから気になって

真夏:えっ、そうなの? あれ? でも、蓮加ちゃんって○○君の二つ下でしょ? 同窓会に呼ばれてるのって、私達の代からかっきー達までの代だよ?

○○:いまの俺の父親が参加対象なんですよ

真夏:いまの○○君。つまり、れん君のお父さんってことは蓮加ちゃんの旦那さんだよね?

○○:そうっすね

真夏:あっ、そういえば見たことないよ。送り迎えとか行事とかも全部蓮加ちゃんだけだったから

○○:その蓮加の旦那が、俺の元クラスメイトなんですよ

真夏:えっ、そうなの!?

俺の正体を話した時と同じ位の驚きを見せる真夏さん。

真夏:そういえば、○○君から色々聞いた時はその事は聞いてなかったね

○○:俺も言い忘れてました

真夏:○○君と同級生ってことは、最高の世代ど真ん中じゃん!

○○:その名前、まだ覚えてたんですね...笑

真夏:当たり前じゃん! 今じゃ他の人達も知ってるよ

○○:みたいっすね。謎ですけど.....

真夏:いつだったかな? まいやんが雑誌のインタビューで言ったことがきっかけだね

○○:あー、あいつが原因か〜。てか、いま聞くと恥ずかしっすね

真夏:○○君が名付け親だもんね

○○:その場のノリで付けただけなのに...笑

俺が巫山戯て付けた名前がこんな事になるなんて.....

真夏:それよりも、本当に○○君来るの?

○○:ダメなんですか?

真夏:そんなわけないじゃん! むしろ大歓迎だよ! そうだっ、みんなに連絡しないと!

○○:連絡って、何言うんですか?

真夏:今年は何がなんでも来てって!

○○:全員集合って、あの人達が今何してるか知らないけど大丈夫ですか?

真夏:知らないなら教えてあげるよ

そう言って、最高の世代と呼ばれる今のあの人達について教えられる。





○○:やばっ...笑

予想を遥かに超える事実に、言葉が出ない。

真夏:本当なら○○君が筆頭になってよね

○○:やめてくださいよ...笑 俺はそんな大したもんじゃないですって

悲しそうな顔を見せる真夏さんに明るい声で返す。

○○:あっ、真夏さん。来週の土日って予定ありますか?

真夏:来週の土日.....? あー、ごめん。予定入ってる。何かあった?

○○:いや、実家に帰って父さんと母さんに会っておこうと思って

真夏:そういうことね。それなら蓮加ちゃんに頼んでみたら?

○○:それも考えたんですけど、万が一バレたって思うと....

真夏:そっか〜。なら他の人に頼んでみたら?

○○:他の人って?

真夏:ちょっと待ってて!

そう言うと、真夏さんはスマホを出して誰かに電話かけ始めた。


真夏:オッケーだって、○○君!

○○:何がですか?

真夏:美月と梅ちゃんが一緒に行ってくれるって!

○○:はぁ!? あいつら仕事は?

真夏:その日はちょうど2人ともお休みなんだって

○○:それならいいですけど。まあ、正直なところ、事情知ってるやつがいるといくらか気持ちが楽ですね

真夏:当日、二人が家まで迎えに来てくれるって

○○:わかりました






そうして、時は経ち.....

美月:久しぶり、○○〜!

○○:ぐへっ.....

美波:ちょっと美月っ、○○が苦しそうでしょ!

美月:いいじゃん少しぐらい!

○○: :く、苦しい.....

美波:もう! 早く車に乗って!



……To be continued

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