祓い、護る者たち 11話
━━青山通り
さくら:はぁ...はぁ...はぁ....
あやめ:やっぱり強いね、さくちゃん
さくら:あやちゃんこそ
あやめ:フフッ、まだやれる?
さくら:もちろん!
あやめ:続きやろうか
ーーギュルルルルル!!
さくら:うっ.....!
独特な鳴き声が聞こえた直後、体に衝撃を受けて数メートル後方に吹っ飛んださくら。
あやめ:えっ、さくちゃん!?
突然のことに、戸惑いを見せるあやめ。
さくら:痛たた....
あやめ:さくちゃん! 大丈夫!?
焦った表情でさくらのもとに駆け寄りあやめ。
さくら:う、うん....なんとか
あやめ:何....あれ?
あやめの視線の先には、丸い体に足だけが生えた白い生物がいた。
さくら:あれって、霊魔なのかな?
あやめ:いや、ここに霊魔は入って来れないから、それは無いと思う
さくら:それじゃ......
あやめ:あれが何かは分からないけど、ヤバいかもね
さくら:えっ?
ーーギュルルルルルル.....
あやめ:あの白いの、私達が狙いみたいだよ
さくら:どうすれば.....
あやめ:さくちゃん、一緒にやろう
さくら:やろうって、あれと戦うってこと?
あやめ:今はそれしかないよ
さくら:で、でも....
あやめ:どっちみち逃げれないと思うし、このままだとやられると思うよ
さくら:そんな......
あやめの言葉を聞いて、不安な顔を見せるさくら。
あやめ:大丈夫! 私とさくちゃんならやれるよ!
さくら:う、うん。わかった....やってみる!
あやめの励ましで、戦う覚悟を決めるさくら。
あやめ:まずは、相手を把握しないと
さくら:....っ! あやちゃん!
あやめ:うわっ! 危なっ!!
さくらのおかげで、咄嗟に横に飛んで攻撃を避けるあやめ。
さくら:今のって、衝撃波?
あやめ:蹴りだけで、あれだけの衝撃波を飛ばせるって
衝撃波によって抉れた道路を見て、驚きを隠せない二人。
あやめ:さくちゃん、術式使う霊力残ってるよね?
さくら:大丈夫だよ
あやめ:じゃあ、いくよ!
道路に両手をつき、術式を唱えるあやめ。
あやめ:術式展開〝影之遊戯場〟!!!
『筒井 あやめ』
属性:影
東京支部の一級術師
あやめの影が広がり、辺り一帯が黒一面の世界へと変わる。
さくら:私も負けない...!
あやめに続いてさくらも術式を発動させる。
さくら:術式展開〝舞ノ桜神楽〟!!!
『遠藤 さくら』
属性:植物
東京支部の準一級術師で齋藤隊所属
無数の桜の花びらが現れ、さくらの周りを舞っている。
ーーギュルルルル!
あやめ:来るよ、さくちゃん!
さくら:任せて! ーー〝桜刃〟!!!
無数の桜の花びらが濁流のように、一斉に謎の生物に向かっていく。
ーーギュル!
謎の生物は、遠藤の攻撃を余裕で回避して、すぐさま反撃に転ずる。
さくら:あやちゃん!
謎の生物は、右足を振りかざしてあやめへと襲いかかる。
あやめ:ーー〝黒遊戯・影繭〟!!
辺り一帯に広がっていた影が繭のようにあやめを包み込む。
ーーギュルル!?
あやめを包み込んだ影が、謎の生物の強力な蹴りを防ぐ。
あやめ:そう簡単には、破れないよ
ーーギュルルル....
さくら:今だ! ーー〝桜嵐刃〟ッ!!
無数の桜の花びらが謎の生物を包み込む。
その直後、桜の花びらが嵐のように一斉に襲いかかった。
ーーギュルルル....!!
間一髪のところで、桜の花びらの包囲から謎の生物。
さくら:ダメだ! 動きが早すぎるっ!!
あやめ:なら、止めるまでだよ
さくら:でも、どうやって?
あやめ:私の術式で動きを止めるから、さくちゃんは渾身の一撃を決めてね
さくら:分かった!
ーーギュルルルル!!
狙いをさくらに定めて、謎の生物は遠藤に襲いかかる。
あやめ:さくちゃん、来るよ!
さくら:うん!
道路を蹴ることで一気に距離を詰める謎の生物。
あやめ:今だ!
そう言って、片膝をついて、道路に両手を置くあやめ。
あやめ:ーー〝黒遊戯・影縛り〟!!
広範囲に広がった影から無数の黒い手が現れる。
無数の黒い手は、まるで生きてるかのように動き、謎の生物の足を掴んで動きを止める。
あやめ:さくちゃん!
さくら:ーー〝百花千桜刃〟!!!
さくらの周りを舞っていた桜の花びらが集まり、薄ピンク色の千本の剣へと変化する。
千本の剣が、空中で動きを止められている謎の生物へと一斉に降りかかる。
さくら:はぁ...はぁ...やったかな
あやめ:さくちゃん、それフラグだからやめて
ちゃっかりとフラグを立てるさくらに、あやめは冷静にツッコむ。
ーーギュルルルルル.....
さくら:えっ、嘘.....
あやめ:ほら、やっぱり....
予想通りにしっかりとフラグを回収して、2人に再び相対する謎の生物。
見たところ、所々にダメージらしきものを負っているが、倒れる気配がしない。
さくら:そんな....結構な一撃だったのに.....
あやめ:高いスピードと耐久性か
謎の生物の予想以上に高いスペックに、驚きを隠せない2人。
さくら:どうする、あやちゃん?
あやめ:さくちゃん、次で決めよう
さくら:えっ? でも、さっきの攻撃じゃ倒せなかったし
あやめ:二人で同時に攻撃するの
さくら:二人で?
あやめ:うん。見た感じ、あまり効いてないようだけど、それでもノーダメージってわけじゃない
さくら:なるほど....二人同時の攻撃なら倒せるかもしれないね
あやめ:アレのもう一回止めるから、確実に攻撃を当ててね?
さくら:分かった!
ーーギュルルルルル....!!
謎の生物は、三度あやめたちに襲いかかる。
あやめ:ーー〝黒遊戯・影縛り〟!!
ーーギュルルルル!
あやめ:嘘っ!?
謎の生物が、空中を蹴って、自身を捕まえようとする無数の影の手を避ける。
あやめ:さくちゃん!
あやめの攻撃を避けた謎の生物は、空中を蹴りながらさくらへと襲いかかる。
さくら:....っ! ーー〝桜刃〟!!
無数の桜の花びらで迎え撃つ遠藤。
ーーギュルルル!!
さくら:きゃっ....!!
蹴りから発生した衝撃波とさくらの攻撃が衝突でお互いが軽く吹き飛ぶ。
さくら:痛たたた....
痛みのある腰を擦りながら、何とか立つさくら。
ーーギュルル!!
さくら:....っ!!
すぐさま、こちらへと向かって来ている謎の生物。
それに気づいて身構える遠藤の前に見知った人影が。
さくら:えっ、あやちゃん!?
突然、現れた人影の名前を呼ぶさくら。
その直後、謎の生物の蹴りによって消し飛んだ。
さくら:そ、そんな.....あやちゃん!
「ここだ!!」
目の前で起きたことにショックを受けるさくらの耳に、聞き馴染みにある声が聞こえる。
あやめ:ーー〝黒遊戯・影縛り〟!!
消し飛んだ人影と辺りに広がっている影から無数の黒い手が現れ、一気に謎の生物を拘束する。
さくら:あやちゃん!?
あやめ:さくちゃん、今だよ!!
さくら:う、うん!
あやめの言葉で、咄嗟に戦闘態勢をとる。
さくら:ーー〝一刀桜刹花《いっとうおうせつか》〟ッ!!!
すべての桜の花びらが一つに集まり、ひと振りの巨大な刀となって、謎の生物に向かって放たれる。
あやめ:ーー〝黒遊戯・影纏〟
影があやめのもとへと集まり、あやめを包み込む。
すると、あやめを包み込んだ影が漆黒の鎧になる。
あやめ:ーー〝深淵の腕〟ッ!!!
影が集約した巨大な漆黒な拳が放たれる。
ーーギュルルルルル....!?
二人の攻撃が直撃して、辺りが土煙に包まれる。
さくら:はぁ...はぁ....
あやめ:さくちゃん、大丈夫?
さくら:うん。でも、今ので霊力ほとんど使っちゃった
あやめ:ほら、立てる?
ヘトヘトなのが見て分かるほど疲れているさくらに、あやめは手を貸す。
遠藤:ありがとう、あやちゃん
あやめ:よいしょっと....
さくらがあやめの手を握ると、引っ張ってさくらを立たせるあやめ。
さくら:あの白いのは....?
あやめ:今、襲ってこないってことは、逃げたか倒したんじゃないかな?
さくら:あれだけやったんだから、倒れててほしいな
あやめ:たしかめてみようか
あやめはさくらに肩を貸しながら、2人で土煙が立ち上っている場所へと向かう。
あやめ:ここら辺だと思うけど.....
土煙で視界が遮られている中、辺りを見回すあやめ。
さくら:あっ、あやちゃん! あれ!
何かを見つけたさくらは叫びながら、あやめに知らせる。
あやめ:どうしたーーって、これ....
さくらが指さす方向を見ると、先程まで2人と戦っていた謎の生物だったものが転がっていた。
さくら:あやめん、これって.....
あやめ:機械だね
ショートしているのか、所々から火花を散らしながら動かないでいる。
壊れているのは、誰が見ても明らかだった。
さくら:誰がこんなものを.....
あやめ:まあ、無事に終わってよかった〜!
両手両足を伸ばしながら、その場に寝転がるあやめ。
さくら:あやちゃん、さっきの何?
あやめ:さっきのって?
さくら:あやちゃんが、私を庇ったやつだよ
あやめ:あー、あれは〝影法師〟っていう私の術式の一つだよ。まあ、身代わりみたいなやつかな
さくら:あれ、ホントに焦ったんだよ!? あやめんがやらちゃったって思って!
あやめ:フフッ、敵を騙すならまずは味方からって言うじゃん
さくら:それとこれとは違うよ!
「あーあ、壊れちゃったか」
目の前の画面に映し出されている"ERROR"の文字を見て、そう呟く一人の少女。
「ま、性能テストだからしょうがないっか」
そう言って、ゴーグルを外したのは、山崎怜奈だった。
……To be continued